ライセンス契約など領域の明示ないとロシア全土が対象-ロシア・ユーラシア経済連合知的財産セミナー(4)-

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2015年11月18日

 ロシア・ユーラシア経済連合知的財産セミナー報告の最終回。ロシアの知財専門家が、ロシアにおけるライセンスやフランチャイズ契約などに関する制度や実務について解説した。ライセンス契約やフランチャイズ許諾においては、使用権の領域が明示されていなければ、ロシア全土が対象と見なされる。両者の関係に問題が生じた際を想定して、一方的解約の条項を設けた方がよいという。

<知財権取引契約は登録が必要>

 ロシアの弁護士事務所ゴロジスキー&パートナーズのセルゲイ・メドベージェフ上級弁護士による講演概要は以下のとおり。

 

 知財権の所有者は、その権利を第三者に許諾して利益を得る権利を持つ。対象となる権利は、著作権、意匠権、特許、ノウハウ、商標権、サービスマーク、ソフトウエア、データベースだ。取引形態は、譲渡、実施許諾(ライセンス)、フランチャイズ、担保権となる。

 

 取引に当たっては契約を締結し、締結した契約は連邦知的財産局(ロスパテント)に登録する必要がある。2014年の民法第4部の改正により、登録に当たっては原契約書でなくとも、取り扱いに関する記述や抜粋でもよくなった。商標ライセンスの登録の場合、記載内容は商標法に関するシンガポール条約に準拠している。抜粋には金銭的条項は載せなくてもよい。取引契約を日本語で結ぶことは可能だが、登録に際してはロシア語に翻訳したものを添付する必要がある。登録には2ヵ月かかる。

 

 権利の譲渡を営利企業間で行う場合は、有償でなければならない。無償だとその取引は無効となる。対価の支払い方法は、一括払い、定期払いなど交渉に基づいて決定する。権利の一部譲渡も可能で、例えば同じ商標であっても、一部の物品やサービスに対象を限定することができる。しかし類似品で混乱を招く恐れもあるため、常に認められるわけではない。譲渡の支払いにおいては、商標の譲渡の場合のみ付加価値税18%がかかる。

 

<期間の明示がないと5年間有効>

 ライセンスでは、一定の権利・期間を指定することができる。ライセンス契約に使用権の領域が明示されていない場合、ロシア全土でライセンスが有効となる。期間が明示されていないと、5年間有効と見なされる。契約には一方的に解約できる条項を入れておいた方がよいだろう。両者の関係が悪化したときに有効であり、ロスパテントに申請を出せば解約できる。

 

 フランチャイズは、商標やノウハウを使用する権利を許諾することだ。契約には商標など知財権の登録番号を明記するほか、許諾する権利の範囲、独占的権利か非独占的権利かを明示する。明示がなければ非独占的と見なされる。ライセンスと同様、使用できる領域の明示がなければロシア全土、期間の明示がないと5年間有効とされる。

 

 このほか、担保権として知財権の一部または全部を設定することが可能だ。債務不履行時の担保を処分する方法として、売却のほかライセンスとして賃貸借すると規定することもできる。

 

(浅元薫哉)

(ロシア)

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