上海自由貿易試験区、検疫検査に24項目の改革措置-食品や越境電子商取引などの通関効率向上に期待-

(中国)

上海事務所

2015年07月02日

 中国(上海)自由貿易試験区での輸出入検疫検査手続きの改革措置を実施してきた上海出入境検験検疫局は、6月から食品や越境電子商取引などの検疫検査制度に対する新たな24項目の改革措置を制定、実施している。

<検疫検査に10種類の手続き>

 上海出入境検験検疫局(以下、上海国検局)は624日、上海自由貿易試験区(以下、自貿区)における検疫検査制度に対する24項目の新改革措置を公表した。これにより、検疫検査手続きはさらに簡素化され、通関効率が大幅に向上するものと期待されている。改革措置の概要は以下のとおり。

 

1.検疫検査制度の改革

1)輸出入貨物の分類管理を実施する。従来は輸出入貨物の検疫検査をした後で通関手続きを行っていたが、検疫検査の業務量を最大限に削減するために、自貿区での輸出入貨物の特徴に合わせ「快検快放」や「空検海放」などの10種類の手続きを設ける(注)。上海国検局は自貿区設立以来、「快検快放」など一連の新しい検疫検査手続きを模索しており、3月には「空検海放」を試験的に始めた。米医薬品大手アボット・ラボラトリーズは328日、粉ミルクのサンプルを自貿区内の外高橋保税区の検疫検査部門に届けて事前検疫検査を受けた後、61日に初の「空検海放」利用ケースとして外高橋保税区経由で粉ミルクを輸入した。通関所要時間は従来の1ヵ月から1週間に短縮された。

2)食品輸入管理の制度改革を進める。食品の特徴に合わせて異なる検査検疫手続きを設け、検査検疫を行わない保税展示などの新制度を模索する。

32012年から一部の企業を対象に試験的に実施してきた「快検快放」を普及させるために、明白な制度を制定する。

4)機械加工設備、医療機器や木材などの専門検査機関の利用を進める。

5)空コンテナに対する検査を簡素化する。

 

2.検疫検査関連の行政改革

1)検疫検査の申告資格認可制度など許認可制度の撤廃・簡素化を進める。

2)自貿区内の検疫検査部門の権限・責任を定めるリスト、検疫検査のネガティブリスト、検疫検査業務における企業の権利、検疫検査手続きなどを説明するガイドブックを作成する。

3)専門検査機関の発展を促進し、専門検査機関に対する資格認可制度を改革する。

4)積み替え貨物に対する検査検疫手続きを簡素化する。

 

3.貿易の利便性向上

1)検疫検査を終えた後で貨物を自貿区に運び入れるやり方を変え、自貿区に運び入れた後で検査検疫を受ける制度を実施する。

2)検疫検査関連書類のペーパーレス化を進める。

3)信頼性の高い企業に対して検疫検査を簡素化する制度をさらに完備する。

 

4.サービス業の発展促進

1)郵船・ヨット産業、(2)バイオ医薬産業、(3)コンベンション産業、(4)修理業、(5)越境電子商取引、(6)文化産業、(7)自動車の並行輸入、(8)グローバル企業の企業本部の設立、(9)研究開発(RD)センターの設立を促進するために、これら分野の特徴に合わせて、(10)特別な検疫検査制度を構築し、輸出商品の品質を高めるための輸出品質安全モデル区の建設を進める。

 

5.情報共有促進のための制度

1)各地の検疫検査部門間の情報共有を実現するために、コンピュータネットワークのシステムを完備する。

2)自貿区の管理委員会、工商局、税務局などとの情報共有と事業連携を進める。

 

<輸入食品の保税展示で検査免除も>

 上海国検局は63日、上記「1.検疫検査制度の改革の(2)食品輸入管理の制度改革措置を進める」ことについて、「上海国検局が自貿区における輸入食品保税展示業の発展を支持するための若干の意見」を公布した。同意見によると、その食品の特性の説明や、書類の提出など必要な手続きを踏み、保税展示食品として認定された食品が自貿区内で展示される場合は検査を免除される(検疫は免除されない)。また、化粧品に関しても同意見が適用される。上海国検局は81日から同意見を実施するとしている。

 

(注)「快検快放」とは、信頼性の高い輸入者と危険度の低い輸出入貨物に対しては輸入者の自主検疫検査を認めるなど、検疫検査を簡略化・免除する制度。「空検海放」とは、大量の海運貨物について、輸入者は貨物が到着する前に航空便で少量のサンプルを運んで事前検疫検査を済ませておき、海運貨物が到着する時には簡略化された検疫検査を受ける制度。

 

文涛

(中国)

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