特定業種・地域への投資優遇措置を拡充-投資調整庁がタックスアローワンス改定の説明会-

(インドネシア)

ジャカルタ事務所

2015年06月26日

 投資調整庁(BKPM)は6月10日、特定業種・地域への投資に対するタックスアローワンス(法人税減税措置)の改定に関する説明会を開催した。対象業種を129業種から143業種に拡大するとともに、輸出事業や拡張投資の場合に欠損金繰り延べ期間の延長を認めるなど、投資家にメリットのある改定となった。申請手続きは簡素化され、申請受付から承認まで28営業日以内と定められた。

<対象を143業種へ拡大>

 説明会では、タックスアローワンスの改定に関する政令201518号(注1)と、その下位法令である財務大臣令201589号、工業大臣令201548号、BKPM長官規定20158号(注2)について、各省庁の担当者から説明があった。政令201518号は56日に施行されており、今回の説明会は国内外の企業に変更点を周知する目的で開かれた。

 

 財務省からは、政令201518号と財務大臣令201589号に関する説明が行われた。それによると、優遇措置の対象業種が従来の129業種から143業種(注3)に拡大された。恩典内容は従来と同様で、(1)投資額の30%を年5%ずつ6年間、課税所得から控除する、(2)固定資産の耐用年数を通常の2分の1に短縮する(減価償却の加速)、(3)外国への配当にかかる税率を10%に軽減する(注4)、(4)特定の要件を満たす場合に、欠損金繰り延べ期間を5年から最大10年まで延長する、の4点とされた。ただし、保税地域外に所在する企業が総売り上げの30%を輸出する場合と、投資拡張許可を得る前の1課税年度の税後利益を再投資する場合には、それぞれ2年間の欠損金繰り延べ期間が追加されるなど恩典が拡大した。また、政令201152号の「タックスアローワンスは投資計画の最低80%を実現した後に与えられる」という条文が削除された。

 

 他方、今回の政令改定により、タックスアローワンスを供与する条件として、(1)投資額が高いもしくは輸出案件であること、(2)多数の労働者を雇用すること、(3)現地調達をすること、の3点が付け加えられた。具体的な条件は、後述する工業大臣令201548号に示されている。

 

 なお、財務大臣令201589号で、タックスアローワンスの上位制度に当たるタックスホリデー(法人税免税措置)を却下された場合にも、タックスアローワンス申請の機会を与えられることが規定された。

 

<現地調達率などの条件を追加>

 工業省担当者からは、工業大臣令201548号に関する説明が行われた。それによると、タックスアローワンスの対象業種について、最低投資額と労働者の雇用人数を規定した。同令別表では業種ごとに規定されており、例えば、エンジン部品やブレーキシステムなどの自動車部品分野では、1,000億ルピア(約10億円、1ルピア=約0.01円)の投資額かつ100人の労働者雇用を最低条件としている。冷蔵庫・洗濯機〔300億ルピア、100人以上の雇用(拡張投資の場合は50人以上)〕、造船(500億ルピア、100人以上の雇用)は、投資額や雇用人数が比較的少ない業種だ。

 

 同令では現地調達率を、材料、補助材、機械などの20%以上としている。また、一部の業種については条件を追加し、「中小企業との連携(乳児用食品)」「高度技術の導入(繊維、有機化学、鉄鋼など)」「環境に優しい技術の導入(コピー機、冷蔵庫、乾電池、セメント)」「産業の統合(繊維、有機化学、食用油脂、アルコール飲料など)」とした。申請者が所定の要件を満たす場合、5営業日以内に工業省から証明書あるいは推薦書が発行される。

 

<認可までの日数を28営業日に短縮>

 BKPMのレスタリ・インダ副長官は、BKPM長官規定20158号に基づくタックスアローワンスの申請手続きについて説明した(表参照)。申請者は工業省発行の証明書または推薦書、BKPM発行の投資の原則許可(Izin Prinsip)または拡張投資許可(Izin Perluasan)、納税登録番号(NPWP)、定款(Akta Pendirian)のコピーなどの申請書類をそろえて、BKPMの投資ワンストップセンターに申請を行う。BKPMによる書類審査を経て、申請者はBKPM、財務省、業種ごとの担当省庁の担当官に対して申請内容を説明する。その後、BKPMは財務省および業種ごとの担当省庁による三者協議を開き、協議で承認を得た場合に財務省への提案書を発行する。同提案書を財務省が承認すれば、タックスアローワンスが認可される。

 

 申請受付から認可までの一連の手続きは、28営業日以内で完了すると定められた。レスタリ副長官は「財務省、担当省庁との三者協議はBKPM主導で開催し、速やかに協議結果が分かるようにする」と強調した。

(注12)政令およびBKPM長官規定については、BKPMジャパンデスクのウェブサイトで英訳を参照できる。

○政令201518号:原文仮訳(英語)

BKPM長官規定8号:原文仮訳(英語)

(注3)業種はインドネシアの業種分類(KBLI2009)に基づく。

(注4)ただし、租税条約が定める税率がこれより低い場合は、その率を適用する。

 

山城武伸

(インドネシア)

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