WTOへの正式加盟は年内の見込みに

(カザフスタン)

タシケント事務所

2015年06月26日

 WTOのカザフスタン加盟作業部会は6月22日、カザフスタンのWTO加盟文書を採択し、同国の加盟を暫定承認した。年内に正式加盟が見込まれており、実現すると162番目の加盟国となる。ロシア、ベラルーシ、アルメニアとのユーラシア経済連合(EEU)の共通関税率との整合と、大量に流入する近隣国の安価な製品への国内メーカーの対応がこれからの課題となる。

<年内に正式加盟の見通し>

 WTOの発表(623日)によると、今後、WTO一般理事会で加盟を正式承認、さらに1031日までにカザフスタン議会で加盟議定書を批准した後、30日を経て、12月中には正式加盟が実現すると見込まれている。カザフスタンは1996年に加盟申請を行い、交渉を続けてきた。また、カザフスタンはロシア、ベラルーシと2010年に、対外的に共通関税を導入する関税同盟を創設、2015年からはアルメニアも参加し、統一内容を拡大させるかたちで、EEUが発足している(2015年1月16日記事参照)

 

 カザフスタンの加盟後の主な履行内容は次のとおり。

 

○平均関税率を6.1%(2013年時点で9.1%)、うち農産品は7.6%(12.3%)、非農産品は5.9%(8.6%)に引き下げる。

○情報技術協定(ITA)への参加を約束。同協定で対象とされる情報技術製品の関税を撤廃する。

○高品質牛肉を除く牛肉および鶏肉のみに関税割当を適用する。牛肉の割当枠内の税率は15%、枠外は40%、鶏肉の割当枠内の税率は15%、枠外は40%(ただし、1キロ当たり0.65ユーロを下回らない)とする。

370品目が対象とされる輸出関税のうち、55品目で撤廃することに合意。EEUの共通輸出関税が適用される場合、(WTOに既に加盟している)ロシアの輸出関税の履行内容を定めた表に準拠する。同内容では556品目に輸出関税が定められ、うち81.3%は無税とする約束となっている。

○通信業における外国資本比率の上限(49%)を、加盟後2年半以内に撤廃する(ただし、カザフテレコムを除く)。

○保険業では、加盟後5年以内に外国保険会社の支店開設を認める。

○銀行業では、加盟後5年以内に外国銀行による支店開設を認める。

○観光業では、加盟後2年以内に国境をまたぐ旅行代理店とツアー催行サービスを認める。

○流通業では、加盟後5年以内に医薬品、医薬部外品、医療製品の卸売業を認める。

 

<中国製品の大量流入に懸念>

 ナザルバエフ大統領は622日、作業部会での文書採択を受け、「貿易の9割がWTO加盟国とのものであり、国内外投資家にとって投資先としての魅力がさらに高まる」と、加盟の重要性を強調した。また、農家への補助金引き下げ要求をめぐる交渉については、「非常に難しい協議だったが、カザフスタンの立場を終始貫いた」と述べ、農家へ配慮したことを示唆した。

 

 一方、カザフスタン企業家会議所副会頭のラヒム・オシャクバエフ氏は、WTO加盟に伴う譲許税率とEEUの統一関税率に差が出る恐れがあることに懸念を示した(テングリ・ニュース622日)。また、加盟によりWTO紛争解決制度が活用できるのはメリットとしつつも、「(EEUに加盟見込みとされる)キルギス経由で、無税あるいは低関税で中国の廉価品が大量に流入すると、国内やEEU加盟国のメーカーには脅威となり得る」との見方を示している(レグTV619日)。

 

(下社学)

(カザフスタン)

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