SAGIAが統合投資計画を日本企業向けに説明

(サウジアラビア)

リヤド事務所

2015年05月27日

 サウジアラビア総合投資院(SAGIA)が5月13日にリヤドで、統合投資計画(UIP)についての説明会を進出日系企業向けに開催した。SAGIAによると、UIPとは外資の投資誘致を拡大し、国内の主要産業分野の競争力を強化するための新政策だ。UIPではまず重点分野をヘルスケア、輸送機器、工業部品・設備の3つに絞り、将来的には17分野に拡大するとしている。

<日本への高い期待の表れ>
 外国企業の投資認可機関であるSAGIAは、投資ライセンスの発行を5営業日以内で行うファスト・トラック・サービスを2014年に導入する(2014年6月30日記事参照)など、外国企業がより投資しやすい環境づくりを進めている。また、SAGIAリヤド本部内に設置している各政府機関と連携したワンストップセンターの認知度を高めるため、機能の強化を図っている。

 こうした活動の一環として、SAGIAは5月13日にリヤド本部でUIPの説明会を進出日系企業へ向けて開催した。日本企業への説明会を各国に先駆けて開催したことは、日本企業の投資に対する政府の高い期待の表れといえる。冒頭のオスマン総裁のあいさつでも、日本企業の歓迎ムードが前面に押し出されていた。

<ヘルスケアなど3重点投資分野を設定>
 総裁あいさつに続く、担当者からの説明では、現在のサウジアラビアへの外国投資の90%は既進出企業による2次投資で、残りのわずか10%が新規の投資であることから、新規投資を呼び込むためのUIPが必要という(添付資料参照)。

 SAGIAによると、UIPとはUnified Investment Plan の略で、SAGIAと他の政府機関が連携することにより、同国の投資環境を再構築し、主要産業分野への投資競争力を付け、国内経済に一層の付加価値を生み出すものだ。サウード副総裁が2015年3月末にドバイで開催された投資年次会議で、またオスマン総裁が4月にリヤドで開催されたアラブ合同協議会で、それぞれ発表した新政策だ。

 UIPでは、政府が新規の外国投資拡大に向けて取り組む重点投資分野として、まずはヘルスケア、輸送機器、工業部品・設備の3つを対象としている。将来的には、建設資材、観光、農業、情報通信技術(ICT)、代替可能エネルギーを含む計17分野に対象を拡大するとしている。

 特に製造業誘致に力点を置く政府方針に基づき、ヘルスケア分野に関しては画像診断装置などの機器の製造業誘致を目標とし、国内での製造品に対しては5年間、政府からの優先調達権を与えるといった優遇措置が設けられる、との説明が担当者からあった。

 輸送機器分野には現在、リヤド、ジッダ、マッカなど大都市圏に5つのメトロバスのプロジェクトがあり、広大なサウジアラビアに公共交通を整備する計画だ。その市場規模は今後10年間で5,270億リヤル(約16兆8,640億円、1リヤル=約32円)に上るとされており、バスの組み立て、車体製造、タイヤ、窓ガラス、バッテリー、ブレーキ部品などの製造業の誘致を目指している。

<スマホ用アプリでの情報公開も>
 説明会では、現在構築中のプロジェクトや入札情報を産業分野ごとに検索できるスマートフォン用アプリの紹介もあり、政府が積極的に投資関連情報を公開し、外国企業に分かりやすい情報提供を心掛けている姿勢がうかがわれた。

 日本側の出席者は約40人で、日系企業に勤めるサウジアラビア人などの姿も見られた。出席者からは、UIPが今後どのように実施されていくのかはまだ不明瞭だが、今後の動きに注目していきたいとの声が聞かれた。外国投資を積極的に呼び込み、自国民の技術習得を目指すサウジアラビア政府の政策動向は要注目だ。

(星出純江)

(サウジアラビア)

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