右派・中道の第4次ネタニヤフ政権が発足-辛うじて過半数の議席を確保-
(イスラエル)
テルアビブ事務所
2015年05月28日
右派・中道連立による第4次ネタニヤフ政権が5月14日、国会(一院制、定数120)の承認を受けて発足した。連立与党は、3月17日の総選挙で第1党となった右派「リクード」をはじめ5党計61議席で、辛うじて議席の過半数を確保した。
<リクード以外の連立与党は少数政党>
3月17日の総選挙で国会の第1党となった右派「リクード」(30議席)のネタニヤフ党首は、約2ヵ月にわたる連立工作の末、5月14日、国会の承認を受け右派・中道連立政権を発足させた。連立与党は「リクード」と中道「クラヌ」(10議席)、右派「ユダヤの家」(8議席)、宗教政党「シャス」(7議席)、「統一トーラ・ユダヤ」(6議席)の5党61議席から成る(表1参照)。
イスラエルでは国会法に基づき、総選挙後に大統領より指名された組閣担当者に対し、組閣までに最大で42日間の猶予が与えられる。
大統領は総選挙で最大議席を確保したリクード党首のネタニヤフ氏に組閣を命じたものの、新内閣を構成するリクード以外の各政党は、野党の左派や中道政党の議席を下回る少数政党だ。
リクードに次ぐ「労働党」と「ハトゥヌア」の統一会派(24議席)、「ラアム」など「アラブ系統一会派」(13議席)との連立は難しく、第4党の中道「イェシュ・アティド」(11議席)は党首ラピッド元財務相がネタニヤフ首相と対立し、罷免された経緯から、ネタニヤフ氏が組閣指名を受けた時点で野党になることがほぼ確定していた。
組閣期限の前日には、右派「イスラエル・ベイテイヌ」(6議席)を率いる、前政権で外相を務めたリーベルマン党首が、野党になると表明したこともあり、与党の議席は61にとどまった。
<難航しそうな対パレスチナ関係>
新政権の閣僚名簿は表2のとおり。外相はネタニヤフ首相が兼務しており、外交の実質トップとなるのは副大臣のツィピ・ホトベリ氏となる。同氏はリクード内でも対パレスチナ強硬路線で知られる議員の1人で、パレスチナ西岸地区における入植地について「歴史上、われわれユダヤ人の土地だ」と断言している。
ネタニヤフ首相はかつてイスラエルとパレスチナの2国家共存について提言(2009年6月16日記事参照)したことがあったが、パレスチナ西岸地区におけるイスラエル軍の活動や入植地建設が続いており、イスラエルに対する国際社会からの非難が強まっている。
ホトベリ氏の指名は、そうしたネタニヤフ政権の対パレスチナ政策を国際社会に示すための人事ともいわれており、アメリカのオバマ大統領は報道取材に対し、「(ネタニヤフ新政権の顔ぶれおよびパレスチナの現況から)、今後1年間はパレスチナの和平交渉において大きな動きはないだろう」とコメントしている。
(高木啓)
(イスラエル)
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