コーヒー、花、イチゴの現場視察を通じた課題とチャンス-ラムドン省農業ワークショップ・ビジネス交流会(2)-
(ベトナム)
ホーチミン事務所・アジア大洋州課
2015年04月24日
ラムドン省農業ワークショップ・ビジネス交流会の初日午後のプログラムでは、2グループに分かれて同省の生産・加工現場の視察を実施した。グループ1は、(1)コーヒー製造・加工、(2)花卉(かき)の生産・加工、(3)イチゴの生産、の現場を訪問して、生産・加工の状況や日本側との協力ニーズなどについてヒアリングを行った。
<コーヒー生豆に品質向上の余地>
コーヒー生産・加工会社のロン・トリエウ(Long Trieu)を訪問して、グエン・ソン・トン社長から説明を受けた。同社は2005年1月に設立され、資本金30億ドン(約1,650万円、1ドン=約0.0055円)、年間売上高90億ドン、従業員12人だ。今まで日本企業とのビジネス経験はないが、生産・経営・製品販売の面で連携や協力に大きな期待を寄せている。
ロン・トリエウでは生産および加工を手掛けており、アラビカ種のコーヒー豆は25度下で管理を行い、工程の管理を分けて一貫生産をしている。コーヒーの焙煎(ばいせん)は190度以上で行い、冷却を含めて20分程度の工程となる。
視察の参加者(日系コーヒーメーカーの担当者)からは以下の評価・コメントが聞かれた。
○世界で流通するロブスタ種の4割はベトナム産で、日本では缶コーヒーだけでなく、アイスコーヒーにも使用されている。
○ラムドン省の北に隣接するダクラク省もコーヒー豆の産地として有名。ダクラク省はラムドン省に比べて標高が低いことから、ロブスタ種のコーヒー豆を生産している。
○コーヒー豆の乾燥工程も重要だ。約1週間、天日干しするのが最も良い。雨期などには機械乾燥も利用することになるが、早く乾燥しようとすると豆が傷み、品質を劣化させてしまう。
○コーヒー豆の価格はニューヨークやロンドンの国際相場と連動している。ベトナムのコーヒー豆は優良品が輸出向けとされ、2級品が国内に出回ることが多い。国内に流通するコーヒー豆はサイズの選定程度しか行われておらず、品質のグレードによる差別化がされていない。
○ベトナムコーヒーの大きな問題の1つに、10月途中から旧正月前にかけて豆を収穫するが、国際価格の変動を意識して、赤い実(完熟)になる前の青い実の状態で摘み取ってしまっている点が挙げられる。良質な豆になる前の段階のため味が落ちてしまう。
<花の対日輸出はハウス栽培が前提に>
2社目に訪問したダラット・フラワー・フォレスト・バイオテクノロジーでは、グエン・ディン・ソン社長から説明を受けた。同社は2003年に設立され、資本金200億ドン、年間売上高は国外850億ドン、国内250億ドン規模となる。従業員数は約500人。主に野菜、花の種、ドライフラワーの生産などを手掛けている。花の種については、オランダやデンマークなどに輸出している。また、新しい花の品種の種については、輸入販売も行っている。ドライフラワーについては、同社の製品をホテル、レストラン、スーパーマーケットに納品している。国内市場向けが中心だが、記念品やプレゼント用として日本にも輸出している。ドライフラワーの生産を拡大する予定で、600万ドル、30ヘクタール規模の投資を検討している。
生花については過去、日本の大田市場(東京都中央卸売市場)への輸出に挑戦したが、植物検疫を含め、求められる水準を満たすことができなかったという。サンプル上は問題なかったが、実際に栽培した花を輸出しようとしたところ、植物検疫を満たすことができなかったとのことだ。現在は品質水準も向上したため、再度、日本の市場に挑戦していきたいと考えている。同社では切り花(フレッシュカット)やビニールハウスの技術を求めており、日本企業と協力していきたいとのことだ。
視察の参加者(日本の花卉の卸売り、日系ビニールハウスの設計・施工関係者)からは以下の評価・コメントが聞かれた。
○ラムドン省の強みは熱帯だが気候が安定している点だ。年間を通じて安定供給を見込むことができる。しかし、バラを生産するには不利な点もある。マレーシアやエクアドルのより暖かい高原地帯が適している。暖かくないとバラのサイズが小さくなってしまう。
○日本向けに販売するためには、ハウス栽培が前提となる。露地栽培では虫が付着するため、日本の植物検疫をパスすることが困難だ。そして、時期の変動にも対応する必要がある。日本の記念日・イベント(例えば、母の日)にスポット的に大量供給できるかがカギとなる。ベトナムでは自然の季節咲きが一般的で、スポット需要に対応できなければ日本側のニーズを満たすことはできない。
○ビニールハウスの張り替え間隔は、日本では人件費が高いこともあり5年以上だが、ベトナムでは3~4年でシートを交換するのが一般的。
○ベトナムは東南アジア最大級のビニールハウス需要国。ラムドン省のビニールハウスはベトナム国内全体の70%を占めるといわれる。
<日本からのイチゴの種の輸出が急増>
3社目に訪問したバイオフレッシュ・ファーム・オーガニックではグエン・ビック・トゥイ副社長から説明を受けた。同社は2010年に設立され、イチゴ、メロン、ジャムを生産している。資本金10億万ドン、年間売上高は約100億ドン規模だ。従業員は30人。ベトナム国内ではファミリーマート、ホーチミン市内の5つ星ホテルなどにも納品している。イチゴについてはフランスのマリオネットから苗木を輸入して生産している。苗木は権利保護がされており、契約に基づき育てた株に対して費用を支払っている。敷地42ヘクタールのうち、イチゴは2ヘクタールで生産されており、今後、拡大していく方針とのことだ。
視察の参加者(日系種子メーカー、ビニールハウスの設計・施工関係者、)からは以下の評価・コメントが聞かれた。
○ベトナムはディストリビューターが少なく、大規模農家に対して直接売り込むことができる可能性を感じた。
○イチゴは害虫が付着しやすいため、農薬をたくさん使う。バイオフレッシュのイチゴは酸っぱいが、生食できることは本当にすごい。
○日本ではイチゴの品種などについての知的財産権は自治体など公的機関が所有するのが一般的。権利期間が切れたイチゴであっても、日本の水準は高いため、十分ベトナムに売り込めるだけの魅力がある。
○日本からベトナム向けには、イチゴやサツマイモの種の輸出がこの2~3年間で急増している
(石原啓嗣、大久保文博)
(ベトナム)
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