欧州委、TTIP交渉に関するEU側提案文書を公表

(EU、米国)

ブリュッセル事務所

2015年01月21日

欧州委員会は1月7日、米国との包括的な貿易投資協定(TTIP)交渉に関するEU側のテキスト案などの文書を複数公開した。TTIP交渉の透明性を高めるための措置で、欧州委は今後もさらに交渉文書を可能なものから公表していく意向を示している。しかし欧州オンブズマンは、米国の抵抗により十分に公開されていない文書があると指摘しており、公開する文書としない文書の包括的なリストの作成を欧州委に求めている。

<透明性を高める初の取り組み>
欧州委は1月7日、TTIPの交渉に関するEU側の提案文書などを公表した。2国間貿易交渉において、欧州委がこのような提案文書を公表したのは初めてで、2014年11月に発足した欧州委が約束した交渉における透明性の確保を反映した対応となっている。

今回公表された文書は、TTIPの法的なテキストに向けたEU側の8つのテキスト案や13のポジション・ペーパー(見解を示す文書)、公表したそれぞれの文書を解説する読者ガイド、各交渉項目のポイントを簡潔にまとめたファクトシートなど。8つのテキスト案は、貿易の技術的障害(TBT)や衛生植物検疫措置(SPS)、関税・貿易円滑化、中小企業、独占禁止と合弁、国営企業、補助金の各項目について。

EU側は、TTIPの最終的なテキストを(1)市場アクセス、(2)規制協力、(3)ルール、の3つのパート、24章(チャプター)で構成することを想定していると明らかにした。

<欧州議会議員の交渉文書へのアクセスを容易に>
今回の発表は、TTIP交渉をより透明性あるものにするという欧州委の2014年11月の約束を実行に移すもの。欧州委の約束は次のとおり。

○欧州委が加盟国や欧州議会と共有するEU側のTTIP交渉テキストをさらに公開する。
○全ての欧州議会議員に対して、EU側のTTIP交渉テキストについて、選択した幾つかのテキストだけではなく、欧州議会議員が今までアクセスできなかった「閲覧室(reading room)」にある制限された文書にもアクセスできるようにする。
○TTIP交渉の制限文書への分類をより少なくし、「閲覧室」の外でも欧州議会議員がより簡単にTTIP交渉文書にアクセスできるようにする。
○(TTIP交渉に関し)政党幹部や政府高官が面談する人の情報を公開する。

欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)はテキスト案の発表と併せて、特に技術的な言語で書かれていない説明文書を発表していることを強調し、「TTIPで欧州委が何を交渉していて、何を交渉していないかを全ての人が見て、理解できることが重要だ」と述べている。欧州委は今回の発表で、多くの交渉文書をウェブサイト上に掲載したが、TTIPの交渉期間中、より多くのテキスト案や提案を可能なものから公表していく意向を示している。

他方、欧州議会が任命した欧州オンブズマンのエミリー・オライリー氏は同日、特定のTTIP交渉文書については米国の抵抗もあり、十分に公表されていないとするプレスリリースを発表しており、ロビイストらとの議題や議事録も含めて、公開する文書と公開しない文書の包括的なリストを作成するよう欧州委に求めている。

(田中晋)

(EU・米国)

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