2018年までにATIGA97%、ACFTA90.3%の品目の関税を撤廃−財政省が関税率引き下げスケジュールを公表−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2015年01月20日

ベトナム財政省は2014年12月30日、同省ウェブサイトでASEAN物品貿易協定(ATIGA)をはじめとする5協定の2015〜2018年の輸入関税率の引き下げスケジュールを公表した。当地日系企業が特に高い関心を示しているのが、ATIGAとASEAN中国自由貿易地域(ACFTA)だ。ATIGAは2018年までに全品目の97%、ACFTAは90.3%の関税が撤廃される。

<政府は企業に対しMFN税率との「逆転現象」に注意促す>
関税率引き下げスケジュールが公表されたのは、ATIGA、ACFTAと、ASEAN韓国自由貿易地域(AKFTA)、ASEANオーストラリア・ニュージーランド自由貿易地域(AANZFTA)、ASEANインド自由貿易地域(AIFTA)の5協定。

上記5協定の関税率引き下げスケジュールは、財政省が2014年11月14日付で協定ごとに通達を公布したもので、2015年1月1日から施行されている。公表された引き下げスケジュールの期間は2015年から2018年までで、各年の引き下げは1月1日から12月31日にかけてとなる。各協定の具体的な通達名は表のとおり。

関税率引き下げスケジュールが公表された5協定の通達名

2014年12月31日付の政府ウェブサイトは、ベトナム輸入時の実行最恵国(MFN)税率が上記5協定税率より低い場合(いわゆる「逆転現象」)、MFN税率を適用すると明記している。また、このようなケースにおいて企業は上記に該当する協定の原産地証明書(C/O)を提出する必要がない、と注意を促している。

しかし、実際には当地日系企業が、輸入する商品で逆転現象があったのに気付かずに該当するC/Oを最寄りの税関に提出し、高い関税を支払った事例が幾つかある。このため、企業側は協定税率を利用する際、事前にMFN税率も確認することが必要だ。

<日系企業はATIGAとACFTAの関税率引き下げに高い関心>
上記5協定の関税率引き下げスケジュールの中で、日系企業の関心が特に高いのが、ATIGAとACFTAだ。ATIGAでは2015年において、1,715品目の輸入関税率が5%から0%に引き下げられる。これにより、全品目の90%の関税が撤廃されたことになる(2015年1月5日のベトナム税関総局ウェブサイト)。

また、全品目の7%に当たる669品目の関税が2018年までに撤廃される。具体的には、鉄鋼、紙、衣料用織布、自動車、自動車部品、設備機械、建設資材、インテリア品などとなっている。注目された自動車の輸入関税については、2015年50%、2016年40%、2017年30%、2018年0%と毎年徐々に引き下げられることになった。

全品目のうち3%が除外品目になり、主に5%の税率を維持する。具体的には、鶏肉、卵、コメ、玄米、加工肉、砂糖などの畜産・農産品が中心となる。

また、ACFTAは関税率引き下げにより、2015〜2017年の平均関税率は2.3%、2018年が1.7%となる。ノーマルトラック品目に関しては、2015年は3,691品目が0%となり、全品目(9,491品目)の84.1%の関税が撤廃される。センシティブ品目に関しては、2015年で税率が20%に引き下げられる。

2015年に関税が撤廃される具体的な品目は、動植物油、プラスチック、プラスチック原料、インテリア、木工製品、設備機械、パソコン、電子部品、衣料織布、縫製付属品、縫製品、靴製品に使用される皮革、一部鉄鋼製品。さらに2018年には588品目が0%となり、全体の90.3%が自由化される。2018年に撤廃される588品目は2015〜2017年は同じ税率となる。

<コスト削減の一方で輸入製品との競合も>
今回のベトナム側の5協定の輸入関税率引き下げスケジュール公表については、当地進出日系企業の関心も高い。ある電子機器メーカーは、タイから輸入する生産用原材料と中国から輸入している部材がそれぞれATIGAとACFTAの関税引き下げで0%となり、これに伴い生産コストの削減ができると喜びを隠さない。一方で、同社は生産した製品を国内販売しており、タイ、マレーシアなどのASEAN諸国や中国から輸入されるライバル企業の製品と競争しなければならない。生き残りのための激しい競争にさらされることなると予想している。

(佐藤進)

(ベトナム)

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