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第9パッケージ合意・署名への道筋立つ−FTAのサービス貿易自由化に向けた取り組みの進捗(2)−

(ASEAN、フィリピン)

バンコク事務所・マニラ事務所

2014年12月09日

ASEAN域内の物品貿易協定、サービス枠組み協定をはじめとする2国間・多国間の通商交渉窓口を務める貿易産業省のアンへロ・サルバドール局長はジェトロのインタビュー(10月31日)に対し、ASEANサービス枠組み協定(AFAS)の第9パッケージの合意見通しについて、「開放対象業種の特定作業が難航しているものの、合意・署名への道筋は立った。合意に際し、現行の国内関連法への抵触はない」との政府見解を示した。また交渉の進捗を見据え、国会で憲法改正の議論が進展していることを明らかにした。連載の後編。

<法改正伴わず合意できる見通し>
問:フィリピンの合意が遅れているAFAS第9パッケージおよびASEAN・インド自由貿易協定(AIFTA)のサービス・投資協定への署名見通しは。

答:AFAS第9パッケージへの合意には、自由化約束の対象業種(サブセクター)を、第8パッケージで約束済みの80業種から104業種に拡大する必要がある。現在、新たに開放の対象とする業種の特定作業が難航している。特にサービス分野の一部業種では、自由化(外資上限の引き上げ)が憲法に抵触することが作業を制約している。

一部のASEAN加盟国では開放約束のみを行い、第9パッケージへの署名をしながら運用実態が伴っていないケースが見受けられる。しかし、フィリピンでは実態を伴う自由化を目指しており、そのための調整にも時間がかかっている。ただし、これらの作業はほぼ最終段階にある。11月のASEAN首脳会議に合わせた署名は難しいが、署名に至るまでそれほど多くの時間はかからないだろう。

一方、AIFTAのサービス・投資協定については、国内関係機関との調整が完了し、11月のASEAN・インド首脳会議の場で署名が可能な状況となっている(注)。

問:AFASの合意に向けて、具体的にどのような作業が進められているのか。

答:全業種の15%の範囲を上限に認められている柔軟措置(自由化対象の例外扱い)に従って、外資上限の引き上げが憲法や関連法に抵触する業種を、可能な限り15%の留保枠に入れ込む作業が進行している。これにより、法改正を伴わずに第9パッケージの合意ができるよう調整している。その結果、第9パッケージまでは当面、法改正を伴わずに自由化を約束できそうな見通しが立ったところだ。

問:国内の利害関係者との調整は進んでいるのか。

答:サービス分野の交渉における国内利害関係者との調整は、国家経済開発庁(NEDA)に一任されている。DTIは交渉への参加と署名を行うが、これらの署名はNEDAによる国内調整の結果として実現するもの。調整には産業界との意見調整のほか、政策当局との調整も含まれる。例えば金融分野において、金融庁や中央銀行との調整が必要となる。第9パッケージの実現に向けてはNEDAが調整を入念に進めており、特に懸念はしていない。

<上下両院巻き込む議論進行>
問:ASEAN経済共同体(AEC)に向け、サービス自由化の制約要因となる憲法や国内法そのものを見直す動きはあるのか。

答:政府が進める外資規制緩和の動きに国内法が抵触する場合、管轄省庁を巻き込んで法改正の必要性を検討する。2015年中の第10パッケージ合意に向けた作業では、必ずそのような作業が必要になると認識している。加えて、フィリピン国内においては現在、憲法による制約が国内経済に及ぼすマイナス面の影響を指摘する声が高まっており、その改正の必要性について上院、下院を巻き込んだ議論が進行している。

この議論は、AECを見据えた制度構築の必要性が圧力にはなっているものの、AECのみを見据えて議論が進んでいるわけではない。外資導入による国内経済活性化を図る観点から、憲法の規制がそれを阻害している一面があるという問題意識が国内に浸透し、必然的に議論されているものと認識している。この件については大統領も問題意識を持って取り組んでいる。

問:サービス以外の分野でのAECに向けた制度改善の取り組みは。

答:物品貿易については、ASEAN物品貿易による関税撤廃が完了しているため、議論は非関税措置(NTM)の撤廃・削減への取り組みに移行している。ASEAN全体では、ウェブサイトを通じた各国のNTMの特定、削減のための専門機関の設立、および仲裁プロセス(ASEAN事務局に申し立て、調整委員会での解決を図るスキーム)の3つのプロセスが進行している。今後はフィリピンを含め、各国で効果のあるNTM削減の取り組みをいかに進めるかが課題。他方、ASEAN加盟国間の結び付きはEUなどの経済共同体とは異なり、10ヵ国が緩やかな結び付きで経済ブロックを形成しているものと認識しており、NTMなどの課題に対する取り組みの実施は、原則として各国の自主性に任されている。

そのほか貿易円滑化の面では、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の原産地証明に係る自己証明制度の導入に向けた2つのパイロットプロジェクトが進行している。この中でフィリピンが、利用者が限定され、手続き面でも制約の大きい第2パイロットプロジェクトに参加したのは、税関がリスク管理上の問題を主張したことが背景にある。虚偽の申告や、規則自体を認識していないユーザーによる自己証明制度の利用を、第1パイロットプロジェクトでは防止しづらいという主張だ。政府内でも、ルールを緩和してしまうことでさまざまなリスクが起こり得るという慎重論が多かったことから、第1パイロットプロジェクトへの参加に踏み切れなかった事情がある。他方、貿易産業相をはじめとして、第1プロジェクトに参入すべきという意見があったことも事実だ。ATIGAのコンセプトに従えば、最終的には第1プロジェクトをベースとした制度に統一されることが望ましいと考えている。

(注)2014年11月12日に開催された、ASEAN・インド首脳会議の共同声明では、「サービス・投資協定の妥結を歓迎する」ことが明記された。8月のASEAN経済相会合の時点では、フィリピンを除く10ヵ国での署名が完了していたことが確認されている。

(伊藤博敏、石川雅啓)

(ASEAN・フィリピン)

外資上限定めた憲法や国内法との整合性確保に難しさ−FTAのサービス貿易自由化に向けた取り組みの進捗(1)−

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