首相、外国人事業法改正を当面見送る方針示す

(タイ)

バンコク事務所

2014年12月05日

プラユット首相は12月3日、タイ政府内で協議が進む外国人事業法の改正について、当面見送る方針を示した。10月末以降、改正案について公聴会などで産業界からの意見聴取を行ってきたが、外国人投資家などから強い反発を受け、改正案そのものを見直す方針に転換したものとみられる。しかし、改正案の見直しはあくまで首相の意思表示であり、正式決定ではないとの見方もあり、今後の動向に注視が必要だ。

<外国人商工会議所連合会は一貫して反対>
外国人事業法改正の議論は、商務省が10月末に説明会を開催して以降、複数回にわたる国内産業界・関連団体向けの公聴会などを通じて意見を聴取してきた。その中で、バンコク日本人商工会議所もメンバーとなっているタイ外国人商工会議所連合会(JFCCT)は「実質的な外資規制強化につながる改正を支持しない」との立場で、一貫して法改正に反対の姿勢を示してきた(2014年12月2日記事12月3日記事参照)。

そうした状況下、12月3日に行われたタイ政府とJFCCTとの昼食会(兼講演会)に出席したプラユット首相は「外国人事業法は当面改正しない。将来的な改正があるとすれば、それは規制緩和を目的とするものだ」と述べ、改正作業そのものを見直す方針を示した。商務省はこれまで、公聴会などを通じた産業界からの意見集約を経た上で、改正案を国会へ提出する見通しを示していた。しかし、今回の首相発言を受け、改正に向けた協議が中断される公算が大きくなった。

12月4日付の「バンコク・ポスト」紙は、ビジネス版の1面トップで「プラユット首相、外国人事業法改正を取り下げ」との見出しで、JFCCTとの会合における首相の発言を伝えた。一方、記事では「外国商工団体が懸念していた外国人事業法改正の問題に関する首相の発言は、800人の参加者から大いに歓迎された。他方、一部の参加者は、主要な関心事項について明確な回答が得られなかったとの印象を持った」として、今後の改正案の取り扱いなど、明らかにされていない点があると指摘した。また、当地日系企業も「少なくとも規制強化の方向性での法改正はしない旨の首相発言は大きな安心材料となる。ただし、これにより改正案が正式に取り下げられ、政府内での議論が収束するかについては、まだ不明な点もある。今後の動向を注視する必要がある」とコメントしている。

(伊藤博敏)

(タイ)

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