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農畜産品などの輸出拡大に期待−韓国とのFTA交渉が妥結−

(韓国、ニュージーランド)

オークランド事務所

2014年11月20日

韓国との間で交渉が妥結した自由貿易協定(FTA)。ニュージーランドでは、韓国側の関税引き下げ・撤廃による、農畜産品などの輸出拡大に期待する声が高まっている。

<「NZ企業に対等の競争条件を取り戻す」>
ニュージーランド外務貿易省によると、ニュージーランド・韓国FTAは11月7日に両国貿易相間で交渉がまとまり、15日に両国首脳が共同で交渉妥結を発表した。また、ジョン・キー首相とティム・グローサー貿易相は11月15日付で報道発表文を公開した。

キー首相は「ニュージーランドの輸出事業者はこの協定によって、米国、チリ、EUなど韓国とのFTA締結国・地域と競争の上で対等の条件を取り戻すことになる」と成果を強調した。また「両国は朝鮮戦争にさかのぼってともに協力し合ってきた長い歴史を持つ」と、2国間関係の重要性・緊密性に触れた。グローサー貿易相も「両国に経済利益がもたらされる」とし、特に輸出を意識してニュージーランドに利益がもたらされる分野として「農畜産物輸出、林業、水産業、工業製品輸出」を例示した。政府調達、サービス貿易、投資についても、高度な協定内容となっている点を指摘した。

発表文では、協定の成果はニュージーランドの物品(特に農畜産物)の対韓国輸出拡大が最も強調されている印象だが、この点は当地報道でも同様だ。当地最大の日刊紙「ニュージーランド・ヘラルド」紙(11月17日)で、リアム・ダン記者は「ニュージーランド企業は、年間で2億2,900万ニュージーランド・ドル(約212億9,700万円、NZドル、1NZドル=約93円)もの関税を支払っている。例えば、キウイフルーツの関税率は45%、牛肉で40%、ラム肉22.5%、バターは89%だ」として、関税が引き下げ・撤廃されていくことにより「向こう10年間にかけて得られるものは大きい」と期待感を示している。また、当地最大の経済紙「ナショナル・ビジネス・レビュー」紙でティナ・モリソン記者は同様の農畜産品を取り上げて関税低減に伴う利益などに触れ、キー首相の「ここに至るまで長く困難な道のりだった。ニュージーランドの産業界の多くはこの成果について喜んでいる」との発言を紹介している。

<乳業・食肉・キウイフルーツ業界などが歓迎のコメント>
今回の合意を受け、業界団体などもさまざまなコメントを発表した。産業界は交渉妥結に歓迎の意を表している例が多い。ニュージーランド国際ビジネス・フォーラム(NZIBF)のグレーム・ハリソン会長は「ニュージーランドが望んだことが全て達成できているとは思えないが、基本的に政府当事者は自国の関心を認識し最善の対応をした」と歓迎する意向を示した。

業界団体の賛意は主に物品輸出に当たっての韓国側関税の削減が根拠となっているようだ。例えば、ニュージーランド農業者連合は17日付の報道発表文の中で、FTAの意義を「農業貿易における貿易障壁、関税、輸入割当の除去」と位置付け今回のFTA交渉妥結を評価した。なお同協会は、「韓国では農業者が農業分野の自由化に強く反対している」とした上で、「(妥結に向けた)努力に敬意を表する」(ウィリアム・ロールストン理事長)と評価している。

また乳製品については、ニュージーランド乳業協会(DCANZ)が16日の報道発表の中で、「乳製品のうち大多数が関税除去の対象となっている」などと歓迎の意を示した。輸出といえば乳製品の比重がかなり大きく、今回のFTAで最も成果が期待されている品目の1つだった。このため、一般的な報道でも、現状89%に上るバターの関税引き下げなどが高く評価されている。一方で、粉乳は原則として関税撤廃の対象から外された品目として紹介される例が目立ったが、DCANZはニュージーランド産粉乳に対する割当設定について触れ、「当初1,500トン、その後10年間にわたって割当枠が毎年3%ずつ拡充される」として、むしろ成果があったとしている。当該割当は協定発効後10年が経過した後も、ニュージーランド産品に永続的に適用され続けるという。同協会は、関税引き下げが完了するまでの移行期間中、同様の割当がチーズやバターなどにも設定されることにも言及し、同協会のマルコム・ベイリー会長は「大臣および交渉官の努力に深く感謝する」と強調した。

食肉分野も歓迎一色だ。例えば、ビーフ・ラム・ニュージーランドのジェームズ・パーソンズ会長は、16日発表の報道発表文で「牧牛・牧羊農家と食肉輸出業者の双方にとって、すばらしい知らせだ」と述べた。食肉産業協会(MIA)のビル・ファルコナー会長も同日、「韓米FTAやそのほかの協定によって、ニュージーランドの業者は競争力を失う危険にさらされていた」と交渉妥結の意義を紹介している。

キウイフルーツについても同様だ。17日付の「ベイ・オブ・プレンティ・タイムズ」紙は、ニュージーランド・キウイフルーツ生産者協会ニール・トレビルコ理事長の「韓国の関税は世界中の主要市場の中で最も高かった。このため、生産者には高いコスト負担となっていた」という発言を取り上げた。キウイフルーツ輸出をほぼ一手に扱うゼスプリのチーフ・エグゼクティブ、レイン・ジャガー氏も「新品種サンゴールドの出荷は、2018年までに5,000万トレイにまで拡大するので、韓国市場に力強い地歩を築くことができる」としている

ニュージーランド・ワイン生産者協会も基本的に歓迎姿勢。17日の「ニュージーランド・ヘラルド」紙の記事の中で、フィリップ・グレガン最高経営責任者(CEO)は「対韓輸出は今の時点では2,000万ドルにすぎないが、関税低減が韓国市場での成長の基礎となる」と述べた。

<水産業界には不満も>
対照的なのが水産業界だ。業界団体のシーフード・ニュージーランドは17日付の報道発表で、「サケやムール貝などについては当初3年間で貿易上の条件が改善される」と歓迎しながらも、「冷凍のイカについては協定の措置対象から外れ、引き続き22%もの関税が課され続ける」と不満をにじませた。

やや特異な品目だが、鹿角(注)の関係者の評価も低い。業界団体のニュージーランド鹿角産業協会のアンディ・マクファレーン会長は16日、「鹿角冷凍品については、協定の対象から完全に除外されたことに当惑している」「加工(乾燥)品は辛うじて盛り込まれたが、関税撤廃までの期間が15年と長い」と失望感を表した。「今回の妥結は、従前までニュージーランドが交渉してきたような包括的な貿易協定を明らかに踏み外した。今後の交渉においては、これまで培ってきた前例に倣わなくてはならない」と表明した。

<具体的な協定内容は発表されず>
ニュージーランド外務貿易省は、今回のFTAに関するウェブサイトで協定の内容やこれによって期待できる成果などを説明した資料を公表している。ただし協定(案)文面は発表されず、また韓国側で発表されているような詳細な解説資料などは提供されていない(2014年11月20日記事参照)

このように歓迎の論調が多いとはいえ、必ずしも協定内容に対して手放しの評価がなされているわけでもない。例えば、NZIBFも「依然としてFTAの内容を分析する必要がある」と付言している。

オークランド大学のジェーン・ケルセイ教授は16日、「詳細説明(fine print)を見ることができないままに、協定が語られている」などと批判、また「この協定は、ニュージーランドの規制にも影響を与える」とも指摘した。同教授が特に問題視しているのが投資章に盛り込まれたといわれる投資家対国家の紛争解決手続き(ISDS)で、「このような条項は除くようあらためて交渉すべきだ」と主張した。

(注)原語では「deer velvet antler」。漢方薬の原料などに使用されるといわれる。またニュージーランド鹿角産業協会によると、鹿角は新たな健康食品の原材料として韓国で注目されているという。冷凍品の2,000万ドル相当の生産量のうち、およそ75%が韓国に輸出されているとの説明だ。

(林道郎)

(ニュージーランド・韓国)

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