豪中FTAが合意、中国からの投資規制など緩和

(中国、オーストラリア)

シドニー事務所

2014年11月18日

オーストラリアのトニー・アボット首相は11月17日、キャンベラで中国の習近平国家主席と会談し、オーストラリア・中国自由貿易協定(FTA)について大筋で合意したことを発表した。交渉の焦点となっていた中国からの投資の審査基準となる金額は、FTAが先に署名された韓国や日本と同様に2億4,800万オーストラリア・ドル(約253億円、豪ドル、1豪ドル=約102円)から10億7,800万豪ドルに緩和する一方で、中国側が要請していた国有企業への審査については引き続き全ての投資案件について審査対象とすることとした。

<豪州:国有企業の投資は引き続き全案件が審査対象>
アボット首相は11月17日、オーストラリアを訪問中の習近平国家主席と同日にキャンベラで会談し、豪中FTAに合意したと発表した。2005年に開始されたFTA交渉は約9年かけて合意に至った。

中国政府はオーストラリア政府に対して、(1)中国からの投資に対する外国投資委員会の審査基準の緩和および国有企業の取り扱い、(2)中国主導プロジェクトへの中国人労働者の受け入れ緩和、(3)衣類、履物、家庭用電化製品、自動車部品などの関税撤廃、を求めていた。

外国投資委員会の審査基準については、現行の2億4,800万豪ドルから米国、ニュージーランドやFTA署名済みの日本、韓国と同様の10億7,800万豪ドルまで引き上げることで合意した一方で、国有企業からの投資についてはこれまでどおり全ての案件について審査を実施することとした。なお、農地については1,500万豪ドル、農業ビジネスについては5,300万豪ドルを審査基準としている。中国企業の投資プロジェクトに対する中国人労働者の受け入れについては、規定給与などを含む申請要件を満たせばケース・バイ・ケースで認めるとした。物品関税については今後4年以内に95%の物品に対する関税を撤廃することとし、衣類、履物、家庭用電化製品、自動車部品などの関税は2019年までに撤廃することになった。

<中国:乳製品の関税撤廃やサービス分野の市場アクセス改善>
一方、オーストラリア政府は中国政府に対して、(1)2014年10月15日から再開した石炭の輸入関税の撤廃、(2)牛肉、乳製品、砂糖の市場アクセスの改善、(3)金融サービス、法務、医療などのサービス市場の開放、を求めていた。

石炭の輸入関税については、3%課されている原料炭についてはFTAの発効後即時撤廃、6%の一般炭については2年以内に撤廃とすることとなった。牛肉は現在の12〜25%の関税を9年間で撤廃するとした。乳製品については、4年から11年以内に撤廃することとした。一方で、砂糖、コメ、小麦、綿については3年以内に行われる両国間のFTA見直しの際にあらためて議論されることになり、今回の合意から除外された。なお、現在14〜20%の関税が課されているワインについては、4年間で撤廃することになった。

金融サービスについては、手続きの透明性向上や人民元の取り扱いに係る承認時間の短縮を含む手続きの簡素化が図られる。法務については、中国全土でのサービスの提供が許可される法律事務所を中国(上海)自由貿易試験区に設立することが可能となる。医療サービスについては今後、病院や高齢者介護施設をオーストラリア資本のみで設立することが認められる。

(平木忠義)

(オーストラリア・中国)

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