小売り分野になお不透明さも、商業省に確認の必要−外国投資法の新たな施行細則を公表(2)−

(ミャンマー)

アジア大洋州課・ヤンゴン事務所

2014年10月02日

連載の後編では、ミャンマー投資委員会(MIC)が公表した新施行細則内容を分析していく。特に、かねてから注目されていた小売業についてはリストから除外されたものの、投資企業管理局(DICA)によると商業省の個別見解を確認することが必要であるなど、依然不透明な箇所も残されている。

<ミャンマー企業との合弁を促進させたい政府の意向>
細則の1つ目「外国企業には投資が認められない経済活動」については、これまでの21から約半分の11に減少した。その中で、電力に関する規制はこれまでの3分野から2分野に減少しており、「電力の商業取引」という項目は今回のリストから削除されている。電力不足が大きな課題となっている同国で、日系企業を含む民間セクターによる火力発電所建設などの案件が一部進み始めている。こうした背景もあり今回の削除に至ったのではないかと考えられる。

2つ目の「外国企業がミャンマー企業との合弁によってのみ認められる経済活動」については、これまでの42から30に減少しているものの、昨今日本企業の関心が徐々に高まっている食品・飲料事業においては、依然として多くが前回のまま規制対象として残っている。食品加工分野は国内にも多くの中小零細企業を抱えており、外国企業による100%投資を認めるのは時期尚早だという判断が働いたものとみられる。

3つ目の「関係省庁の意見書が必要で外国企業がミャンマー企業との合弁によってのみ認められる経済活動」については、今回の通達で制限分野が115から43に大幅に削減されているものの、かつての細則では「ミャンマー企業との合弁によってのみ認められる」の部分は明記されていなかった。政府は外国企業の先進技術を導入することにより地場企業の底上げを図りたい意向が強く、これらの分野についても原則合弁形態を取るようあらためて規定したと思われる。同分野には畜水産、食品、医療、病院など、昨今ジェトロにも日本企業からの相談が多く寄せられている業種も複数含まれていることから、注意が必要だ。

<小売りなどの分野は商業省の見解確認を>
4つ目の「その他制限分野で特定の条件の下、外国企業がミャンマー企業との合弁によってのみ認められる経済活動」については、これまでの27分野から21分野に減少した。家畜飼育、動物飼料、酪農関連、食肉処理・食肉加工、養鶏などの分野が削除された一方、石油、天然ガス分野での規制が一部新たに加わっている。またこれら4つ目の規制も3つ目と同じく、「ミャンマー企業との合弁によってのみ認められる」の部分はこれまで明記されていなかったため、こちらも注意が必要だ。

また、日本企業からの関心が高い分野で、2013年1月31日公表の通達第1号で明記されていた以下の規制項目については、今回の通達では削除されている。

○旧通達で記載されていた規制分野
・小売り(小規模小売りの形態には参入できない。スーパーマーケット、百貨店、ショッピングセンターの形態は認められる。ただし、ミャンマー企業による既存店舗から近接した場所では開店できない。国産の商品を優先的に購入し販売すること。合弁(JV)の場合はミャンマー企業側が最低40%を出資すること)
・自動車、オートバイを除く小売り(2015年以降のみ認める。最低300万ドル以上の投資とすること。免税措置なし)
・フランチャイズ(外国企業はフランチャイザーとしてのみ認められる)
・倉庫(中小規模の倉庫業は認められない。JVの場合はミャンマー企業側が最低40%を出資すること)
・卸売り(商業省の見解に従う)
・専門店以外の小売り〔百貨店とハイパーマートは5万平方フィート(1平方フィート=約0.09平方メートル)〕以上、スーパーマーケットは1万2,000平方フィートから2万平方フィートの店舗面積を有すること〕
・専門店以外での食品、飲料(アルコールを含む)、ミャンマーたばこなどの小売り(店舗面積:2,000平方フィートから4,000平方フィートまで)

特に小売り、卸売りを含む貿易業に関する制限については、かねてから日本企業の関心が高い分野だが、ジェトロがDICAに確認したところ、商業省の個別見解を確認する必要がある、とのことだった。今回の通達第49号第2項には「当該指令通告(135分野を指す)に記載のない経済活動分野については、100%による外国投資を認めるものとする」と明記されているものの、長年続いた縦割り行政の中で、関連省庁の推薦を抜かして一足飛びに外資が100%出資を認められると判断するのは早計のようだ。

今後の投資申請においては、今回の新細則が1つの指標になることは間違いないが、個別具体的な申請においては、関連省庁の意向も聞きつつ進めることが肝要だろう。

(水谷俊博、クントゥーレイン、浜口聡)

(ミャンマー)

外資規制の104分野を削減、投資加速図る−外国投資法の新たな施行細則を公表(1)−

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