対中デモの影響、日系企業の被害は軽微
ホーチミン事務所・ハノイ事務所
2014年05月20日
南シナ海で石油掘削作業を進める中国への抗議デモを発端として、5月13日以来、国内各地で続いた中国系企業に対するデモ活動は16日までにほぼ沈静化した。19日現在、進出日系企業の被害は軽微にとどまっている。
<北部・中部で日系企業の被害は確認されず>
北部のハノイ市と中部ダナン市にあるベトナム日本商工会およびハイフォン市の同会支部によると、5月19日現在、それぞれの会員企業から一連のデモに関連した被害などの情報は寄せられていないという。また、ジェトロが複数の日系の工業団地管理会社に確認したところ、デモの発生は確認されていない。
14日夜には中部ハティン省で、デモ参加者が暴徒化し中国人1人の死者が出たが、同省に進出している日系企業にはデモの被害はなかった。一方、デモ被害に遭わないために、日本の国旗を掲揚するなどしている日系企業もあった。
<南部では窓ガラスの損壊も>
ホーチミン日本商工会によると、13日と14日に反中国デモが南部のビンズオン省の3つの工業団地とドンナイ省の3つの工業団地で発生したが、いずれも人的被害はなく、デモ隊は企業の国籍を聞いて回り、日系企業だと説明すると素通りするのがほとんどだったが、デモ隊の一部がバイクで工場敷地内に入ったり、窓ガラスや防犯カメラが壊れたり、門の一部が破損したりしたケースが約20件あった。こうした被害は、日系企業の工場をターゲットにしたというより、工場から出てデモに参加するようワーカーに呼び掛ける際に発生したもので、騒ぎは14日までに収まり、15日以降はデモは発生していない。
日系企業は13日のデモ発生直後から、国旗を掲げて日系企業であることを示すとともに、上記のようなデモ参加の呼び掛けを避けるため、ワーカーを帰宅させて工場の操業を停止した企業も多くあった。15日は安全確保のためにあらかじめ操業停止を決めていた一部の企業もあったが、通常どおりの操業に戻った企業がほとんどだった。
<ベトナム人は日系企業に親しみ>
デモが暴徒化する中で、中国系企業はもちろん台湾系や韓国系企業が人的被害や建屋・生産設備への破壊行為を受けた一方で、日系企業はその対象とならず、軽微な被害にとどまった。このことは、日頃から日系企業がベトナム人社員を大切に扱うことで、いかに好かれているかを物語っているのではないだろうか。甚大な被害を受けた台湾系企業は、単に中国系企業と間違われただけでなく、日常的にストライキが起きており、従業員の不満のはけ口となった可能性もある。また、ベトナム国民は日本からのODAによる生活環境の改善、良好な外交関係、国民レベルの交流などとも併せて、日本人と日系企業に親しみの感情を抱いており、あらためて日系企業がこの国で果たしている役割の大きさを示したものと理解できるだろう。
<政府は外資系企業の活動の保障を緊急指示>
ブイ・クアン・ビン計画投資相は5月15日付で「ベトナムの投資環境に影響を及ぼす労働者の反中デモについて」という表題の公式文書を発表した。同文書では、今回のデモに関し、「外資系企業の資産に甚大な被害を与え、ベトナムの投資環境イメージにも悪影響を及ぼした。政府としても大変遺憾であり、事態の拡大を防止するべく断固とした措置を取る」としている。併せて政府は、各省の人民委員会、工業団地管理委員会、輸出加工区などに対して、在ベトナム外資系企業の活動や資産を保障する緊急指示を出した。
また、デモ発生による治安の悪化がベトナムへの外国企業投資減少につながることを懸念し、グエン・タン・ズン首相は17日までに、暴力的なデモを自制するよう呼び掛けるメッセージを全国民の携帯電話向けに送信し、事態の沈静化を図っている。
(安栖宏隆、竹内直生)
(ベトナム)
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