支店形態では海外送金ができないなど特有のルールに注意を

(バングラデシュ)

ダッカ事務所

2014年04月15日

バングラデシュに法人を設立する際、ほかの国ではあまりみられない特有のルールがあることに注意が必要だ。日系企業の間でも、そうしたルールを認識せずに進出し、計画どおりに事業が実施できなくなることや、事業が停滞してしまうこともある。最近起きたトラブルを中心に、法人格ごとの主な留意点を報告する。

<駐在員事務所:設立費用は安くはない>
海外投資家がバングラデシュで活動を行うに当たっては、(1)駐在員事務所、(2)支店、(3)現地法人、の3つの法人形態が考えられるが、他国にはみられないルールや制約もある。かつては、輸出加工区内でのビジネスが主流だったバングラデシュでも近年、日本企業のビジネスが拡大するにつれ、内販、製造など日系ビジネスの形態も広がりをみせている。同時に、活動開始後に問題が判明するケースも増えているため、必要とされる現地拠点の機能を見越した上で、適切な法人格で進出することが望まれる。法人格ごとの主な留意点は以下のとおり(表参照)。

法人格ごとの機能・規制区分

駐在員事務所(連絡事務所)は、バングラデシュ投資庁(BOI)のガイドラインに従い、BOIとバングラデシュ銀行(中央銀行)の承認を得て設立する。他国と同様、外国企業のエージェントとして活動範囲は現地企業との連絡調整、情報収集業務などに限られ、利益を得るための事業活動の一切が認められていない。しかし、駐在員事務所ステータスながら、ビジネスに従事するケースも散見され、中には税務当局にみなし課税を課されたケースもあるので、活動内容は限定する必要がある。

開設許可を受けてから2ヵ月以内に、設立資金と6ヵ月分の運営費用として、最低でも5万ドルを事務所口座に送金しなければならず、設立費用は決して安いとはいえない。また、日本人駐在員の労働許可証(Work Permit)を申請するに当たっては、非公開ではあるが、BOIのガイドラインとして、年間給与が2万5,000ドル以上であることが求められ、それを下回る場合、許可を留保されるケースが相次いでいる。

<支店:活動範囲は限定的で、手続きは不透明>
支店の設立は、駐在員事務所と同様にBOIのガイドラインに従う。バングラデシュでは、支店として登記すると、一切の国外送金が認められない。BOIの支店許可証第7項には、「給与を含む全ての運営費、活動費の一切は、海外からの送金によって賄われなければならない」と規定されている。さらに同第8項には、「バングラデシュを原資とする一切の資金を海外へ送金してはならない」とも規定されている。利益送金やロイヤルティー送金はおろか、輸入決済も制限される。要するに、バングラデシュにおいては支店格では自立したビジネスを営むことができないということであり、駐在員事務所との機能的な差異は少ない。

一方で、第9項には「もし、バングラデシュで利益を上げ、その利益を必要経費に充てたい場合は別途、当該利益の正当性と証憑(しょうひょう)(財務諸表など)を添え、BOIへ上記第7項ならびに第8項の免除を申し出ること」との救済事項がある。つまり、支店格でのビジネスの自由度を高めたいのなら、別途、政府に伺いを立てなければならないということになる。そのための手続きや必要書類などは明らかにされておらず、同免除を受けるのに1年以上を要したケースも日本企業から報告されている。同規制は、外国企業の支店が不正収入やマネーロンダリングに関わることを厳しく監視するために設けられたものと考えられるが、他国ではあまりみられない規制のため、支店を選択する際には十分に注意が必要だ。

<現地法人:設立時のBOI登録が必須>
現地法人を設立する場合、会社法(1994年)に基づき、駐在員事務所や支店とは別に、商業登記局(RJSC)で手続きを行う。現地法人は、外資規制や、個別の事業法(銀行業法、保険業法など)による制限を除くと、事業活動の内容に特段の制限はない。RJSCへの登記が済めば、本来事業を開始することができるわけだが、もろもろの投資優遇、外国人の就労許可、工業登録もしくは商業登録、外為管理、工業輸入ライセンスなどを受けるために、BOIへの登録が必要となる。つまりBOI登録なしには、会社の登記と運営ができたとしても、駐在員の派遣や対外送金は行えない。

BOIへの登録に当たっては、BOIが公表する産業カテゴリーのうち、自社のビジネスがどれに該当するかという点が重要となる。BOIは、業種を大枠としてサービスセクター(31業種)と奨励セクター(32業種)の2つに分類している。前者には、旅行業、広告業、運送業など、現在一時的にバングラデシュが外資の登記を差し止めている業種が含まれる一方で、チェーン・スーパーマーケット/ショッピングモール以外の小売業は含まれていない点に留意が必要だ。実行上、BOIは小売業をサービス産業ではなく、BOI許認可の対象外であるトレーディング(商務省に登録)と見なしており、小売業に従事するためには、奨励セクターに記載された製造業として登録することを求めている。輸出入や売買のみを営む「商社」事業もトレーディングとみなされ、事実上、BOIに登録することはできない。

<資本金5億タカ以上は上場を義務付け>
現地法人を運営するに当たっては、資本金にも留意しなければならない。会社法には規定はないが、証券取引委員会法(1993年)には、(1)払込資本金が1億タカ(約1億3,000万円、1タカ=約1.3円)を超える場合は、証券取引委員会(BSEC)の承認が必要となる、(2)4億タカを超える場合は公開会社に格上げ、(3)5億タカを超える場合は証券取引所に上場しなければならない、と規定している。

もともと、証券取引所の上場企業数を増やすこと、ならびに企業の透明性を高めることを目的に導入された規則だが、現在は製造業なら4億タカ、5億タカの資本金は決して大きい額ではないため、むしろ投資手控えを招いているという指摘も出ている。外資系製造業の場合、特に借入金規制が厳しいため、資本金を多く積みながら運営していくパターンが多い中、同規制が事業拡大のボトルネックにもなっている。BSECは、個別に同規則を免除するケースもあるが、条件や手続きが不明であり、合理的な運用を求める声が高まっている。

(河野敬)

(バングラデシュ)

ビジネス短信 534b75f793b48