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旅行用外貨や海外送金などの為替レートを実質的に切り下げ−マドゥロ大統領による経済対策(5)−

(ベネズエラ)

カラカス事務所

2014年03月19日

これまで固定為替レート(1ドル=6.3ボリバル)で取得できていた旅行用外貨、ロイヤルティーや配当金の海外送金、航空会社による取引などに対し、外貨管理補完システム(SICAD)の為替レートが適用されることになった。また、個人が旅行用などに利用する外貨として1年間に交換できる上限が、以前より制限された。一連の制度変更の目的の1つは、外貨準備高の減少を食い止めることだ。

<「2014年は通貨切り下げを行わない」と発表>
マドゥロ大統領は1月15日に行った年間業務報告で、ベネズエラ国内には固定為替レートで供給できるだけの十分な外貨があるとし、2014年は固定為替レートの切り下げを行わないと発表した。

ベネズエラでは政府が為替を管理し外貨を企業や個人に供給しているが、1ドル=6.3ボリバルの為替レートが適用されるのは外貨管理委員会(CADIVI)を通じた為替取引だ。直近では2013年2月8日付官報40108号を通じて公布された為替協定14号によって、2013年2月9日に1ドル=4.3ボリバルから6.3ボリバルに切り下げられている(2013年2月18日記事参照)。ほかに、固定為替レートよりドル高ボリバル安の為替レートが適用されるSICADというシステムによる取引も存在する。

<一部の分野では実質的な通貨切り下げ>
為替協定25号が1月23日に特別官報6122号を通じて公布され、今まで1ドル=6.3ボリバルの為替レートが適用されていたCADIVIによる取引分野の一部に対し、割高であるSICADの為替レートが1月24日から適用された。具体的には、同協定第1条に定められた以下の分野について、直近のSICADの競売において適用された為替レート(落札レート)がCADIVIを通じた為替取引にも適用される。

(1)海外旅行用の現金
(2)海外に住む家族への送金
(3)民間航空会社の取引に関する支払い
(4)賃貸契約、サービス契約、商標・特許・ライセンス・フランチャイズ契約、無形財輸入のための契約、インターネットリース料、情報通信分野における設備・機材・ソフトウエアのインストール・修理・維持費の支払い
(5)政府認可を受けた乗客、貨物、郵便物の国際航空輸送サービス
(6)国際投資、商標・特許・ライセンス・フランチャイズ料支払い、技術輸入・技術援助契約に関する支払い
(7)保険会社の取引に関する支払い

SICADとは、2013年3月から開始された競売に似た為替取引システムだ(2013年4月3日記事参照)。ベネズエラ中央銀行が外貨の競売総額および応札可能分野を設定し、該当する分野の法人・個人が、金融機関を通じて希望取得額、希望為替レートを申請する。ただし、申請されたレートの高い順に落札はされておらず、落札レートおよび落札者は中銀の判断により決定されている。2013年3月に第1回の入札が行われたが、その後、制度上の不備が指摘され、7月に改定している(2013年7月31日記事参照)

為替協定25号の発効後、最初に適用されたSICADの落札レートは1ドル=11.30ボリバルだった。しかし、協定が発効した1月24日以降、SICADの落札レートは入札ごとにボリバル安に動いており、2月21日には落札レートが1ドル=11.80ボリバルとなった。2月24日から次のSICADが行われるまで、このレートがCADIVIを通じた前述の分野の為替取引に適用される。これまで適用されていた1ドル=6.3ボリバルの為替レートと比べると、ボリバルの価値が46.6%減価したことを意味しており、一部の分野のみが対象であるものの、実質的には通貨切り下げが行われたことになる。

加えて、同協定第2条によって、海外でのクレジットカード払い、インターネットショッピングによる海外の業者への支払いについても、同様にSICADのレートが適用されることが定められた。

<外貨取得の要件と手続きを変更>
為替協定25号の公布と同時に、外貨取得許可を受けるための要件と手続きの変更を定めたCADIVI行政決定123号、124号、125号が公布された。これらは為替協定25号第1条に定められた各分野の外貨取得に関する要件と手続きを定めたもので、123号が「(2)海外に住む家族への送金」、124号が「(5)政府認可を受けた乗客、貨物、郵便物の国際航空輸送サービス」、125号が「(1)海外旅行用の現金」に関わるものだ。

CADIVIを管轄する国家貿易センター(CENCOEX、2014年3月14日記事参照)がCADIVIに対して過去の行政決定の修正を指示するかたちで、前述の3つの行政決定が公布された。今回修正は行われなかったが、行政決定83号が「(3)民間航空会社の取引に関する支払い」、63号が「(4)賃貸契約、サービス契約、商標・特許・ライセンス・フランチャイズ契約、無形財輸入のための契約、インターネットリース料、情報通信分野における設備・機材・ソフトウエアのインストール・修理・維持費の支払い」、56号が「(6)国際投資、商標・特許・ライセンス・フランチャイズ料支払い、技術輸入・技術援助契約に関する支払い」、82号が「(7)保険会社の取引に関する支払い」に該当する。

為替協定25号によるSICADレートの適用によって、日系企業に最も影響が大きいと思われるのは、日本本社へのロイヤルティーや配当金の送金に関わる(4)と(5)の分野だ。本来であれば、為替協定25条の公布と同時に、具体的な手続きの変更について定めた行政決定が公布されるべきだが、2月28日現在、関連する行政決定は公布されていない。

<個人が取得できる外貨の総額を一層の制限>
行政決定125号により、個人が海外旅行やインターネットショッピングでの支払いのためにCADIVIを通じて取得できる外貨の総額が引き下げられた。今までは毎年1月1日から12月31日までの1年間に、クレジットカードで3,000ドル相当、現金で500ドル相当、インターネットショッピングで400ドル相当の計3,900ドル相当まで外貨を利用することができた。

今回の決定で、クレジットカード、現金、インターネットショッピングを合わせて取得できる外貨の上限は毎年1月1日から12月31日までに3,000ドル相当に制限された。以前と同様、支払い方法別に利用できる外貨の上限が異なり、クレジットカードについては海外旅行の行き先、旅行期間によって利用上限額が定められた(表参照)。

目的地、滞在期間別クレジットカード使用可能額

現金については、目的地がコロンビア、パナマ、コスタリカ、ペルー、米国フロリダ州、カリブ海諸島〔米州ボリバル同盟(ALBA)加盟国を除く〕の場合は300ドル相当の外貨、それ以外は500ドル相当の外貨が上限となった。インターネットショッピングは300ドル相当の外貨が上限となった。

<目的は外貨の国外流出の食い止め>
一連の制度変更の大きな目的は、外貨の国外流出を抑え、外貨準備高の減少を食い止めることにある。1ドル=6.3ボリバルの固定為替レートは、実際のボリバルの通貨価値に比べて非常に高く維持されている。実体経済の問題だけでなく、政治経済の不安定さから人々が抱える不安なども要因ではあるが、非公式で違法な取引で使用されるレートは、固定為替レートと10倍以上の差が開いているとされる。政府は、非公式で違法な取引を糾弾し、2014年中は固定為替レートを変更しないと強気に出ているが、公定と非公式の為替レートの乖離は非常に大きくなっており、1ドル=6.3ボリバルのレートを今後も維持し続けることは困難な状況になってきている。

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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