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自動車の適正価格の設定や個人輸入を解禁−マドゥロ大統領による経済対策(3)−

(ベネズエラ)

カラカス事務所

2014年03月17日

2013年12月4日付の政令で自動車の適正販売価格と、個人所有外貨による自動車輸入制度が定められ、為替不正取締法も一部改正された。マドゥロ大統領が11月6日に発表した貯蓄振興策の一環とみられている。

<メーカーや販売代理店の利益を制限>
特別官報6117号を通じて2013年12月4日付で公布された政令625号は、(1)自動車の適正販売価格を定め、組み立てメーカーおよび販売代理店が得る利益を制限すること、(2)国営銀行に外貨口座を所有する国内に居住する個人に対し、自動車輸入ライセンスを発行すること、を定めている。対象となる自動車は、乗用車、貨物自動車、公共交通輸送車、二輪車、トラクター、耕運機、トレーラーなど多岐にわたる。

商業省と工業省ならびに価格とコストを監督する各種の関連機関が、国内の自動車組み立てメーカーから生産コストに関する情報を入手した上で、適正な工場出荷価格を決定する。2014年1月7日以降、各メーカーのウェブサイトで車種ごとの価格が発表されており、価格は13万6,000〜110万5,000ボリバル(約2万1,600〜約17万5,400ドル、1ドル=6.3ボリバル)となっている(注1)。1月8日、与党ベネズエラ統一社会主義党(PSUV)所属のアンドレス・メンデス議員は、発表された価格について「以前はこの3倍の価格で販売されていた」と、政令625号による価格抑制効果を表現した。

販売代理店が得る利益の限度額も、工場出荷価格をベースに決定される。各メーカーの価格発表に先立つ1月3日、PSUV所属のクラウディオ・ファリアス議員は国営ラジオ局RNVのインタビューに対し、「販売代理店が今後手にする利ざやは30%以内となる」と語った。これは商業省と各組み立てメーカーによる、適正な工場出荷価格決定のための会合後の発言で、メーカーおよび販売代理店は政令625号で規定されているもの以外のいかなる手数料も受け取ってはならないとされる。

<新車と中古車の「ねじれ価格」を解消>
さらに政令625号の第8条に基づき、組み立てメーカーは商業省および工業省に対し、毎週の生産・販売実績を報告しなければならず、販売代理店は国立陸上輸送院(INTT)と調整の上、商業省と工業省へ毎週の販売実績を報告する義務を負うこととなった。

ベネズエラでは自動車の生産が需要に追い付かず、新車の購入に1年以上待たなければならない場合もあるとされる。新車価格は政府の監視が強く値上げは容易ではないが、中古車価格は柔軟に価格設定ができたため、新車より高い価格で中古車が販売される「ねじれ」が生じていた。このねじれを解消するため、第9条では中古車の販売価格が工場出荷価格を超えることを禁止している。

その他、第11条では国内の自動車部品製造業者の保護を目的に、組み立てメーカーに対して、(1)1つの車種につき5年以上生産を継続すること、(2)組み立てメーカーが新車種を生産する場合は35%以上の部品を国内生産品とすること、を義務付けている。また工業省が毎年、部品の国内調達率の目標を自動車メーカーに課すこととしている。

<自動車の個人輸入が可能に>
第13条から第21条は、自動車の個人輸入に関して規定している。自動車の輸入には2007年10月31日付官報38800号によって公布された決議により、商業省が発行する自動車輸入ライセンスが必要となるが、原則的に個人にはライセンスが下りなかった。しかし政令625号により、国営銀行に外貨口座を所有する国内居住の個人には輸入ライセンスの発行が認められ、工業供給公社(SUVINCA)を通して輸入することが可能となった。ただし、この措置は期間が限定されている。第20条は輸入ライセンス申請期間を政令発効後6ヵ月以内と明記している。

なお、輸入した自動車は、輸入後36ヵ月間は転売できない。また、輸入できる自動車は新車であり、かつ製造された年もしくはその翌年の輸入に限られる。

なお、国内で市販されていない車種を輸入した場合は、国内で修理用の部品を調達することが困難なためメンテナンスに問題が起こることが予想される。

<個人に対する外貨規制を緩和>
また、同じく官報6117号で公布された政令第636号により、2010年5月17日付特別官報5975号を通じて公布された為替不正取締法が一部改正された(2010年5月19日記事参照)。改正内容は、臨時条項の第3項目として「国内に居住しており、国営銀行に外貨口座を有している、または外貨口座を開設する個人は、為替不正取締法の第5条、第9条およびその他本条項に矛盾する条項を免除される」という条文を追加することだ。

為替不正取締法の第5条は、輸出入や送金などにより1万ドル相当以上の外貨を国内、国外に流入、流出させる場合、為替を管理する機関に対して金額とその内容を報告する義務を定めている。また第9条は、貨幣、有価証券を問わず、外貨の売買、譲渡を中央銀行の独占的権限とし、違反に対する罰則を定めている。

<規制緩和の背景に外貨準備高の減少>
政令625号で自動車の個人輸入を可能にしたことと、政令636号による為替不正取締法の改正は、国内の外貨不足の深刻化を背景とした外貨の貯蓄振興策だと考えられる。これは2013年11月6日にマドゥロ大統領が発表した経済対策で実施に言及があった。

2014年1月末時点の中銀の外貨準備高は213億2,800万ドルで、2013年1月末の287億5,700万ドルから25.8%減った。ベネズエラは政府管理に基づく固定為替相場制を採用しており、輸入決済などの外貨需要に対しては中銀が保有する外貨が主に供給される。しかし、外貨準備高が著しく減少しているため輸入決済などに支障を来しており、国外から外貨を流入させて外貨準備高を増やすことが喫緊の課題となっている。このような背景から、国民が国外の口座に保有する外貨の国内口座への移転を促すことを目的に、自動車の個人輸入制度の制定、ならびに為替不正取締法の改正を行ったものとみられる。

(注)外貨の取得が政府に管理されていることや、政治経済上の不安が高まっていることなどから、非公式な為替取引が行われている。政府の定めた公定の固定為替レートは1ドル=6.3ボリバルだが、非公式のレートは1ドル=80ボリバル以上になっているとされ(2014年2月24日現在)、公定レートによってドル換算した価格は必ずしも実態を反映してはいない。

(松浦健太郎)

(ベネズエラ)

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