クロスボーダー人民元業務の細則を施行−上海自由貿易試験区の業務を自由化−

(中国)

上海事務所

2014年03月04日

中国人民銀行(中央銀行)は、中国(上海)自由貿易試験区内で実施するクロスボーダー人民元業務の規制緩和策の細則を施行した。細則は国外からの人民元資金の借り入れ業務、人民元集中化(プーリング)業務などの規則の詳細を定め、これらの業務を正式に解禁している。細則の実施により、試験区に設けられた企業の人民元資金の統一的な運用や、国外からの人民元建ての融資が可能となり、金融機関の人民元業務の幅が広がることになる。

<手続き簡素化などの詳細を規定>
中国人民銀行上海本部は2月21日、上海市金融弁公室、上海自由貿易試験区管理委員会と共同で、「中国(上海)自由貿易試験区におけるクロスボーダー人民元業務の拡大に関する通達」の実施を発表した。同上海本部は「通達」の原文を公開していないが、公式サイトで同日発表した報道記事や2月24日発表の質疑応答で「通達」の概要を説明している。

中国人民銀行は2013年12月2日、「金融による中国(上海)自由貿易試験区建設のサポートに関する意見」(以下、「金融意見」)を公布し、同試験区で金融管理制度を大幅に緩和する方針を30項目発表している(2013年12月5日記事参照)。「通達」は人民元のクロスボーダー業務の規制緩和を決定している「金融意見」の第13〜16項目の詳細を規定している。主な内容は以下のとおり。

(1)手続きの簡素化
上海地区の銀行は、「自分の顧客を理解する」「自分の業務を理解する」「審査職責を果たす」の3原則の下、区内機関および「個人」が提出する受け払い指図により、関連するクロスボーダー人民元決済を直接行うことができる。個人は試験区内の就業者、経営者、個体工商戸(注)を指し、経常項目のクロスボーダー人民元決済業務を利用することが可能となる。

(2)国外からの人民元資金の借り入れ
試験区内の銀行以外の金融機関とその他企業は国外から人民元資金を借り入れることができ、金額は金融機関の場合は拠出資本の1.5倍、その他企業の場合は拠出資本額を上限とする。国外から借り入れた人民元資金は、上海地域の銀行に同業務専用の口座をつくって入金しなければならない。同資金は、試験区内の生産経営、プロジェクト運営と国外のプロジェクト運営にしか使えない。

(3)クロスボーダーの人民元プーリング業務
試験区内の企業はグループ内のクロスボーダーの人民元プーリング業務を展開することが可能となる。グループ会社は試験区内の企業を通して、人民元資金の統一的な運用を行うことができる。これにより、資金運用の利便性と効率が向上し、資金調達コストを低減できる。

(4)クロスボーダーの人民元集中受け払い業務
試験区内の企業は、他のグループ内企業、グループ内企業と部品調達関係・緊密な貿易関係のある関連企業向けに、経常項目のクロスボーダーの人民元集中受け払い業務を展開することが可能となる。従来は貿易なら同じビジネス相手でも、ビジネスごとに受け払いしなければならなかったが、これからは同じビジネス相手なら複数回のビジネスに対する一括受け払いが可能となることで、決済の利便性が向上し、決済コストを低減できる。

(5)その他
クロスボーダー電子商取引関連のクロスボーダー人民元決済業務を促進する。中国外貨取引センターと中国黄金取引所が、試験区内で人民元建てのクロスボーダー取引を展開することを支持する。

<国内外の銀行と企業が業務を開始>
中国銀行のマカオ支店とシンガポール支店は2月21日、同上海支店と共同で、上海自貿区聯合発展に国外からの人民元資金を融資し、同業務初の事例となった。

米シティバンク、英HSBCと上海銀行は同日、それぞれスイス製薬会社ロシュ(中国)、フランスの窯業サンゴバン、香港の東方国際(集団)と、これら企業の試験区内の子会社にクロスボーダーの人民元集中受け払い業務を提供する契約を結んだ。

また、上海市政府の1月22日の発表によると、シティバンクは既にロシュ(中国)にクロスボーダーの人民元プーリング業務を提供し始めており、同業務初の例となっている。HSBCも、米大手製造業ドーバー(Dover)の試験区内の子会社に同業務を提供し始めている。

(注)個体工商戸とは、企業資産が経営者の私的所有に属し、被雇用者が8人未満の私営企業。

(文涛)

(中国)

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