卸売・小売業、物流業は外資100%で参入可能−アジアの卸小売りと物流への外資規制(15)−

(パキスタン)

カラチ事務所

2014年02月04日

サービス業に対する外資規制はなく、100%の外資の進出が可能だ。サービス業に課せられていた最低資本金も、2013年2月に撤廃された。卸売・小売業には、外資系企業の参入がみられるものの、まだ活発化していない。物流業には、国際物流業が合弁などで参入しているが、サプライチェーンを構築するには至っていない。

<卸売・小売業ではカルフールやメトロが進出>
パキスタンの対外開放は進んでおり、卸売業、小売業、物流業、いずれの分野でも外資100%での参入が可能だ。サービス業に課せられていた15万ドルの最低資本金は、2013年2月に発表された2013年投資政策(Investment Policy 2013)により廃止された。従って、現在は最低資本金に対する規制はない。

小売り分野では、フランス系カルフールのハイパースターが既に進出しており、ラホールとカラチにおいて店舗を展開中だ。ドイツ系のメトロも、会員制卸売りチェーンとして2007年からパキスタン地元財閥のハビブグループと合弁で店舗を展開し、パキスタン国内に9店舗を有する。ハビブグループは、メトロのほかにオランダを発祥とするマクロブランドの小売店も展開していたが、2012年にメトロブランドに統一した。2013年12月現在、外資系メジャー卸売・小売店の進出はこの2グループに限られている。

100%外資に開放されているにもかかわらず、外資系企業の進出が限られている理由として、(1)治安が悪いイメージが強く、ビジネスの対象として検討されていないこと、(2)コールドチェーンのみならず物流インフラが未整備で、物流業界が未成熟であること、(3)世界6位の人口を有しながらも購買力がまだ低いこと、(4)マクロ経済などのカントリーリスク、といった問題点が考えられる。このため、リスクを最小限に抑えつつ、ビジネスを展開する手段として、フランチャイズ方式の店舗展開が目立つ。パキスタンではケンタッキー・フライド・チキン、マクドナルド、ピザハットなどがかねて店舗展開をしており、2012年以降はファストフード業界のバーガーキング、ファット・バーガー、ハーディーズなどの米系ハンバーガーチェーンが新たに展開している。

<インフラが未発達な物流業>
物流面でも、外資制限はない。既にDHL、UPSなどの大手物流企業がサービスを展開している。しかし、国内の物流インフラの脆弱(ぜいじゃく)性を反映して、完全なかたちでサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)を委託、請け負っている物流企業はまだない。その中でもトラック輸送については、パキスタンがアフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)への最短補給ルートになっていることから、道路事情は安定している。しかし、サプライチェーンの構築は完成されているとは言い難く、ジャスト・イン・タイムの物流管理はほぼできていない。コールドチェーンなども未発達のままだ。鉄道省・パキスタン国鉄の鉄道による物流は、その非効率性などから輸送旅客人員数、貨物量ともに減少しており、パキスタン国鉄の改革は喫緊の課題となっている。

通関業は、数百社が免許を得て業務に従事しており、激しい競争状態にある。しかし、通関業務は業界団体の認可が必要となっており、外資系企業が通関業の免許を取得することは困難なのが実情だ。

(白石薫)

(パキスタン)

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