卸売業、小売業、運輸業とも外資100%出資が可能−アジアの卸小売りと物流業への外資規制(10)−

(カンボジア)

プノンペン事務所

2014年01月28日

外国投資の規制が緩やかなカンボジアでは、卸売業、小売業、運輸業は外資100%出資による現地法人などの設立が可能だ。法令上は外資100%出資で問題はないが、国内販売やサービスなどを提供する場合、政府関係省庁などとのコネクションを持つ現地パートナーと提携する事例が多い。

<政府が外資に対し手厚い優遇制度>
カンボジアは他のアジア諸国と異なり、不動産の取得制限を除いて、外国人・外国企業に制限されている分野はなく、オープンな外資誘致政策を掲げている。従って、卸売業、小売業、運輸業も外資100%出資による現地法人や支店の設立が可能となっている。

政府は雇用確保、技術移転、輸出産業誘致などを目的に、適格投資案件(QIP:Qualified Investment Project)と呼ばれる投資優遇制度を設定している。これは主に製造業や大規模農業などを対象に、法人税の一定期間の免税措置や部材、建設資材、製造機械の輸入関税および付随する付加価値税(VAT)の免税などの投資優遇措置の恩典を供与する制度だ。卸売業、小規模小売業、運輸業は対象となっていないが、小売業については、近代的なマーケット、貿易センターの建設で、投資認可額が200万ドル以上(面積1万平方メートル以上)の大型投資案件の場合は、カンボジア開発評議会でQIPの資格を得ることができる。

運輸業の場合は、貨物および旅客輸送事業に関するライセンスが必要で、公共交通事業省から道路運輸、水上運輸に関するライセンスを得る必要がある(注)。また、通関業務を行う場合には、実務において通関士を常駐させ、関税消費税総局(税関)に登録しておく必要がある。外資100%出資の現地法人、支店を設立する際には、外資規制はないが、ライセンス申請などの措置が必要だ。

<小売りや物流サービスで広がる日系企業の進出>
日本企業については、卸売業での日本企業の進出という例はないが、小売業では日本のイオンが、2014年7月の完成を目標に現在プノンペン市内で、ショッピングモールの建設を進めている。同モールの150テナントの中で40〜50の日系の飲食、小売りなどの企業が入居する予定で、カンボジアでは外資系で初めての近代的なショッピングモールが参入することになる。

イオンのショッピングモールの完成予想模型

運輸業では、2013年7月に佐川急便ベトナムがプノンペンに支店を開設。そして11月には郵船ロジスティクス、12月には日本通運がそれぞれ駐在員事務所を現地法人化した。2011年には既に日本トランスシティが現地法人化しており、物流で現地法人化が進んでいる。また、カンボジア側の提携先の運送業者(フォワーダー)と提携する日系企業もある。大森廻漕店は現地のトーマス・インターナショナル・サービスと合弁会社を設立。プノンペン市内にあるドライポートに検品所を設置し、2012年9月から業務を始めた。荷物の搬入以降、検品からコンテナに積み込む「バン詰め」、通関手続き、船の予約から船積みまでの作業をワンストップとして提供できる体制を整えている。

以上のように、日本企業による動きも活発になってきているが、同国がオープンな外資誘致政策を行っていることから、近隣のASEAN先進諸国、中国、韓国、台湾などから多くの外資系企業が参入しており、競争が非常に激しい。参入の際には、同業他国企業の参入状況などもみながら、ビジネスモデルに応じて、場合によっては現地の有力なパートナーと提携するなどの対応も必要ではないかと思われる。

(注)道路運輸、水上運輸に関するライセンスの詳細は、ジェトロウェブサイトの公的サービスに関する情報大要を参照。

(道法清隆)

(カンボジア)

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