プラス成長が期待されるも内需は依然として脆弱−2014年の経済見通し−

(イタリア)

ミラノ事務所

2014年01月09日

政府は2014年の実質GDP成長率を1.0%と予測する。他の国内調査機関なども同様にプラス成長見通しを発表しており、景気後退局面から脱して3年ぶりのプラス成長となる見通し。ただし、経済成長は引き続き外需依存の構造が続き、内需は依然として脆弱(ぜいじゃく)だ。新興国の経済状況や公的機関の債務返済の進展などに成長率が大きく左右される可能性もある。

<2014年の成長率には下振れリスクも>
政府が2013年9月に発表した見通しでは、2014年の実質GDP成長率を4月発表の1.3%から0.3ポイント下方修正し、1.0%と予測している。数値は下方修正となったものの、2014年は3年ぶりのプラス成長になる見込みだ。需要項目別にみても、個人消費が前年比0.5%増、総固定資本形成が2.0%増、輸出入はともに4.2%増になるとみている。

2011年第3四半期から2013年第3四半期まで、前期比で9期連続マイナス成長が続いているが(2013年第3四半期は速報値でマイナス0.1%)、2013年に入って以降は成長率のマイナス幅が四半期ごとに縮小。外需は輸出が堅調に推移し、内需も特に輸送機器向けの投資が上向き、総固定資本形成も増加するなど、政府は2012年末に景気後退は底を打ったとしている。

2013年上半期は、引き続き建設投資が低迷したことや、在庫変動(2013年第2四半期はマイナス0.4ポイントの寄与度)の影響などもあり、成長率を押し下げた。しかし、先行指標となる鉱工業受注指数(季節調整済み、2010年=100)は、主に海外受注に押し上げられるかたちで2013年3月以降は上昇傾向となり、9月には97.9と2013年に入ってからの最高値を記録。また、消費者信頼感指数(季節調整済み、2005年=100)は、2012年4月以降80台後半で推移していたが、2013年6月に95.9となり回復。同月以降は90台後半を維持しており、個人消費の回復にも期待がかかる状況となっている。

しかし政府は、2014年の実質GDP成長率を当初の1.3%から1.0%に下方修正した理由について、(1)国家改革プログラム(NPR)の枠組みの中で、国会審議され成立したものの、実行法などが伴っていない財政改革策の評価を盛り込んで予測した、(2)2013年通年の成長率の見通しも、4月発表時点からマイナス0.4ポイント下方修正(マイナス1.3%からマイナス1.7%に)され、当初の予測に反して、回復の遅れが2014年にも影響する、ことなどを挙げた。国家統計局(ISTAT)は、最新の2013年第3四半期の実質GDP成長率(速報値)を踏まえ、2013年は通年でマイナス1.9%成長になるとしており、実際の成長率が政府見通しをさらに下回った場合、2014年の成長率は下振れする可能性もある。

<回復状況は分野によってまだら模様>
ISTATは、政府とは別に独自の経済見通しを発表しており、2014年の実質GDP成長率を政府予測と比較して0.3ポイント低い0.7%と予測。2013年5月に発表した数値をそのまま維持する格好となった。

ISTATによると、GDPの需要項目別では、輸出が前年比3.7%増と最も高い伸びを記録すると予測し、経済成長への回復に寄与するとしている。米国や日本などの先進国の経済成長やユーロ圏主要国における内需の改善などが、特に財の輸出に好影響を与えるとしている。

現在、イタリア企業は輸出競争力を確保するため、輸出製品の価格低減に取り組んでいる。そのため、輸出企業は今後、さらなる輸出競争力を維持するため、ドルに対する一層のユーロ安や、労働コストに関わる社会保障費の抑制を意図した経済政策の導入などを期待している。

一方、輸入は内需の低迷などを背景として減少が続いている。しかし、2014年は内需の回復や、輸出増加によって原材料などを輸入する動きが活発化し、輸入も増加に転じるとしている。

GDPの約6割を占める個人消費は、消費者物価の上昇が緩やかになり、可処分所得が増加し、消費者の購買力も多少高まるとみられ、前年比で増加すると予測している。しかし、労働市場環境が依然として厳しいことや、所得収入の改善にも限界があることが重荷となり、伸び率は0.2%の微増にとどまるとしている。特に、失業率は2013年に12%を突破し、2014年も改善せず12.4%と見込まれている。

なお、消費者物価については、エネルギーや食品価格変動の影響が小さくなっている。また、長引く不況や需要の低迷がインフレを抑制する主要因となっている。2013年10月1日から、付加価値税(VAT、イタリアではIVA)の標準税率21%が22%に引き上げられ、商品販売価格への転嫁も予想されるが、長引く消費の低迷を背景に、価格転嫁にもブレーキがかかるとみられている。

総固定資本形成は、民間企業に対する公的機関の債務返済状況の改善も含め、低調だった資金貸し付けに改善の兆しがみられ、前年比2.2%の増加が見込まれている。特に機械設備や輸送機器分野の急回復が見込まれているが、建設投資は引き続き厳しく、2014年経済のプラス成長も、項目や分野によってまだら模様になる見通しだ。

最大の民間産業団体であるイタリア産業連盟の研究所も、2014年の実質GDP成長率予測をISTATと同様の0.7%と予測(2013年9月発表)しており、景気後退局面から脱するとみている。項目別では、個人消費が前年比0.1%減と回復を悲観的にみている一方、輸出(2.9%増)や総固定資本形成(1.2%増)が回復し、在庫の調整も進むとしているが、経済全体の回復のペースは遅いと指摘している。

<新興国経済と公的機関からの債務返済がポイント>
ISTATは2014年の経済見通しについて、世界経済および国内資金の流動性や政治・経済の改善状況に大きく左右されると指摘している。世界経済については、新興諸国の経済成長がより低迷した場合、イタリアは輸出が減少し、成長率自体の低下を招く可能性もある。

また、資金の流動性や政治・経済状況の改善は民間部門の投資を促すことになり、現状で前年比2.2%増と予測されている2014年の総固定資本形成の伸びが4.7%まで上昇すれば、実質GDP成長率も1%まで高まる可能性もあるとしている。

特に資金の流動性については、政府も産業連盟の研究所も、公的機関から民間への債務返済がどこまで実行されるかが2014年の成長率にとって重要な要因だと指摘する。政府は2013年4月に、2013〜2014年の2年間で約400億ユーロを公的機関から民間への負債返済に充当することを決定(2013年6月6日付法律64号で施行)。また同年8月には、2013年に72億ユーロを追加で同様の返済に充当することを決定(2013年10月2日付法律124号で施行)した。これまで懸案となっていた公的機関の債務の民間への返済が進めば、特に民間企業の投資にとっても大きくプラスになるものとみられ、経済動向を予測する上で、その動向には注意を払う必要がある。

主要経済指標

(三宅悠有)

(イタリア)

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