州知事が「ブレインパワー」の重要性を強調−マサチューセッツ・ビジネスセミナーが東京で開催−
北米課
2013年12月18日
ジェトロ、米マサチューセッツ州、経済産業省は12月10日、「マサチューセッツ・ビジネスセミナー〜イノベーション経済への招待〜」と題するセミナーを東京都内で開催した。同州におけるビジネスチャンスやボストンのイノベーション・エコシステムなどについて関連企業や団体が発表した。同州でのビジネスに関心のある企業や関係者など170人余りが参加した。
<教育、イノベーション、インフラへの投資に注力>
同セミナーでは、ジェトロの石毛博行理事長とマサチューセッツ州のデュバル・パトリック州知事(民主党)が開会のあいさつを行った。パトリック州知事は教育、イノベーション、インフラへの投資に注力している点を強調し、イノベーションを起こす上で「頭脳(ブレインパワー)」の重要性について指摘した。同氏は「アイオワ州にとってトウモロコシ、テキサス州にとって石油が州経済に必要不可欠であるように、マサチューセッツ州にとっては教育が必要不可欠」で、教育、イノベーション、インフラへの投資は州経済発展の活力にもなる大事な戦略だ、と力説した。
<人材のグローバル化が必要不可欠>
基調講演で昭和女子大学の坂東眞理子学長は、日本の教育ではグローバル人材が十分に育成できていないことを懸念しているとして、今後日本が生き延びるためには人材のグローバル化が必要不可欠だ、と指摘した。昭和女子大学はグローバル人材の育成に力を入れており、1988年にはボストンに大学の校舎「昭和ボストン」を設立。以降25年にわたってグローバル人材の養成に努めているという。2013年春にはグローバルビジネス学部を新設し、語学に加えて米国でのビジネス手法を習得すべく、学生全員にボストンへの留学を義務付けている。坂東学長は、インターンシップを通じて学生に米国での社会経験もさせたい、と抱負を語った。
続いて基調講演を行った三菱商事の槇原稔特別顧問(元会長)は、マサチューセッツ州にはハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ボストン大学など著名な大学が多数あることに言及。日米文化教育交流会議(カルコン)の日本側議長も務めている同氏は、日米間の学生交流を促進すべく積極的に取り組んでいきたい、と述べた。成田〜ボストン間の直行便が開設されたことで、人材交流の増加に期待を寄せる。
<支援機関がイノベーションを後押し>
続いて、州内のビジネス支援機関を代表して、マサチューセッツ・テクノロジー・コラボラティブ(MTC)のパメラ・ゴールドバーグ最高経営責任者(CEO)、マサチューセッツ・ライフ・サイエンスセンター(MLSC)のジョシュア・ボーガー理事、マサチューセッツ・クリーン・エネルギーセンター(MassCEC)のアリシア・バートンCEOが、「マサチューセッツにおけるビジネス」と題したセッションを行い、それぞれの機関で実施している技術開発支援について説明した。
ゴールドバーグCEOは、州内の技術関連企業を支援しているMTCが(1)産業界・政界・学界を結び、(2)ヘルスケアシステム、高速インターネット、地域経済の各分野で先進技術によるソリューションを提供し、(3)経済の刺激を図っている、といった点を強調した。
ボーガー理事は「マサチューセッツ州ライフサイエンス・イニシアチブ法」(注)を基に、MLSCが初期段階の企業に対する資金調達の支援、研究に対する助成金プログラムなどを提供していると説明した。MLSCは学生のインターンシッププログラムも支援しており、ボーガー理事は今まで1万3,000人以上の学生に対してインターンシップをあっせんしてきたことを明らかにした。
バートンCEOは、MassCECはクリーンエネルギー産業の育成に特化した米国初の州立機関だと説明。同センターは技術イノベーション、プロジェクト開発、人材開発支援を行っているほか、研究開発のための助成金の提供やクリーンテクノロジー分野でのインターンシップ支援も実施していると述べた。
<起業家と大企業のビジネスがイノベーションを循環させる>
最後に、東京大学教授で産学連携本部イノベーション推進部長の各務茂夫氏をモデレーターに、ケンブリッジ・イノベーションセンター(CIC)創設者のティム・ロウCEO、グローブスパンキャピタル共同設立者のアンドリュー・ゴールドファーブ常務取締役、伊藤忠テクノロジーベンチャーズの安達俊久代表取締役社長が「ボストンのイノベーション・エコシステム」について、パネルディスカッションを行った。
ロウCEOはイノベーションには(1)資金、(2)アイデア、(3)才能、の3つの条件が必要になると指摘した。優れたイノベーションが起きるにはインフラも整っていなければならず、CICのようにスタートアップ企業に対してオフィススペースを提供することが重要だと付け加えた。また、日本も資金、アイデア、才能を「回収」し、「循環」させるエコシステムが必要だと強調した。
ゴールドファーブ常務取締役は、ITやモバイル技術で先を行く米国のビジネス手法を習得するため、日本の学生に対して米国留学を推奨した。安達社長は日本では起業家が大企業と取引することが困難だという問題点を挙げ、イノベーションを循環させるには、起業家が大企業とB to Bビジネスを行える環境を整えていく必要があると説いた。
(注)マサチューセッツ州ライフサイエンス・イニシアチブ法は、同州のライフサイエンス分野におけるグローバル・リーダーシップを強化するために2008年6月に成立。初期段階の企業に対する資金調達の支援、基礎研究から応用分野に及ぶ研究のための助成金、税制上の優遇措置などを提供する。
(吉田薫)
(米国)
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