医療機器輸入の環境整備が進む−日系企業も機器登録の審査に参画−

(サウジアラビア)

リヤド事務所

2013年10月16日

サウジアラビアの医療市場は拡大の一途にあるが、外国企業のビジネスの中心は医療機器の販売となっている。医療機器の国内での輸入・販売に際しては、食品医薬品庁(SFDA)に登録した指定代理人を通じて事前に登録する必要がある。近年はウェブサイトでの登録など手続きの簡素化が進み、また日系検査機関も認証審査機関に参画するなど、日本からの医療機器輸出の環境が整備されつつある。

<各種手続きがウェブサイトで可能>
サウジ国内に医療機器を輸出・販売する場合、SFDAの「医療機器暫定規制」に基づき、国外の製造業者(輸出元)はサウジ企業と代理店契約を結ぶ必要があり、加えて、同代理店を自社製品の輸入・販売をサウジ国内で請け負う「指定代理人(AR)」として、SFDAにあらかじめ登録しなくてはならない(2013年2月時点のSFDAの資料では、1,466の製造業者と381のARがSFDAに登録)。さらに、ARを通じた製品のSFDAへの事前登録も義務付けられている。

SFDAの規則やガイドラインは、SFDA Medical Devices Sectorのウェブサイトから入手することが可能で、ARが行う医療機器の製品登録の手続きも、同ウェブサイト上の「Medical Devices Sector E−services 」で行うことができる。なお、SFDAの製品認証システムはMDMA(Medical Devices Marketing Authorization)と呼ばれている。

そのMDMAでは、登録できる医療機器の条件を、a.医療機器規制国際整合化会議(GHTF)の創設メンバーである5つの先進国・地域(米国、EU、カナダ、オーストラリア、日本)のいずれかの規制に適合していなければならない、b.サウジ国内の要求規格に適合していなければならない(電源電圧、設置環境、輸送環境、アラビア語のラベル添付など)と定めている。製品の説明が不明瞭、製造業者名や住所、ブランド名やデバイス名が機器に添付されているラベルと異なるなど、何らかの問題が確認された場合には、MDMAの条件に適合していないという理由で製品の再検査が必要となる場合がある。

<現地代理店との契約が必須>
SFDAはこの製品登録の検査と許認可を行う機関として、海外の認証検査機関(CAB:Conformity Assessment Bodies)6機関と契約を締結している。6機関は、BSI(英)、SGS(スイス)、TUV SUD(ドイツ)、TUV Rheinland(ドイツ)、UL(米)に加え、日本のコスモス・コーポレイション(三重県に本社がある医療機器検査機関)となっており、全社がリヤドのSFDA内に事務所を構え、登録審査を実施している。

ARや製品登録に必要な期間と費用も、SFDAのウェブサイトで公開されている。なお同ウェブサイトに記載の「期間」は、製品の不適合による再検査が不要な場合で、再検査が必要となった場合は製品登録の期間が長期化することになる。

当地の代理店の多くが「医療機器の登録申請は、医薬品のような他のSFDA管轄の製品と比べると難しくはない」と述べている。例えば医薬品の場合、SFDAによる輸出製品を製造する工場視察が義務付けられているため、1回につき約5万ドルを費やしてSFDAの審査員を招き、施設の検査を受ける必要がある。医療機器ではこうした手続きは要求されておらず、日本企業の場合、手続きに不明な点があればコスモス・コーポレイションに日本語で問い合わせることも可能だ。

ただし、以下の点は注意すべきだ。

a.登録手続きの全てをサウジ側の指定代理人を通して行うため、登録の経験やノウハウを持ち、SFDAとのコミュニケーションを円滑に進められる現地代理店との契約が必須。
b.政府は輸入通関時に、不具合が生じた場合に人体へのリスクが高い医療機器のMDMAへの登録を確認しているが、今後は段階的に、より低リスクの機器についても確認や取り締まりを強める予定としているため、常に最新の動向を代理店経由で入手しておく必要がある。

こうした点に留意すれば、日本語での照会可能な日系検査機関が事務所を構えた状況の下、医療機器をサウジに輸出するためのハードルは他の製品と比べてそれほど高くはないといえるだろう。

(米倉大輔)

(サウジアラビア)

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