通信・流通サービス分野の出資規制に留意が必要

(ベトナム)

ハノイ事務所

2013年08月08日

ベトナムには外国人投資家の出資比率が制限される分野がある。複数のサービスを行う事業を立ち上げたいが、一部のサービスに出資規制がある場合、事業全体の出資比率にどのように影響するのかについては、「外国人投資家は出資比率に制限のある業種を複数行う場合、各事業で規定される比率の中の最低値を超えない水準で資本拠出または株式購入できる」と定められている。

<事業で異なる出資上限比率>
ベトナムは2007年1月11日のWTO加盟以降、外国人投資家に対してサービス分野への投資を段階的に開放しているものの、「WTOサービス分野約束」(ジェトロ「ベトナムの世界貿易機関加盟に関する作業部会」参照)に基づき、2013年現在も通信と流通サービス分野においては、業種によって49〜65%の資本拠出および株式購入の上限規制が維持されている。

日系企業が抱く疑問として、上限比率の異なる複数の業種を同一企業内で行う場合、その比率はどのように決定されるのかということだ。この疑問に対しては、2009年6月18日付「外国人投資家によるベトナム企業への出資および株式購入に関する規則」(Decision 88/2009/QD−TTg)がある。

これによると、外国人投資家とは、(1)外国法に基づき設立・運営される組織および当該組織の海外・ベトナム子会社、(2)ベトナムで設立・運営され、外国当事者の出資比率が49%超の組織、(3)外国当事者の出資比率が49%超の投資ファンドおよび証券投資会社、(4)海外またはベトナムに居住するベトナム国籍を持たない外国人、を指している。

また外国人投資家の保有比率に関しては、第3条4項で定められており、「外国人投資家は、複数業種(外国人投資家の出資比率が異なる事業を含む)を展開するベトナム企業に対して、各事業で規定される外国人投資家の保有比率の下限を超えない水準で、資本拠出または株式購入してもよい」とされている。

上記条項の意味をWTOサービス分野約束の「運輸サービス」の中の3サービスを例に解説すると、以下のとおりだ。

(1)海運サービス/国内運送を除く貨物運送:(2012年1月11以降)外資100%出資可能
(2)運送の全ての方式の補助サービス/倉庫サービス:外国当事者の出資比率は 51%を超えてはならない(ただし2014年1月11日以降、外資100%出資可能)
(3)鉄道サービス/貨物運送:外国当事者の出資比率は49%を超えてはならない(外資100%の開放時期は未定)

上記3サービスはいずれも外国人投資家の保有上限比率が異なっている。例えば現在(1)のみを提供する企業が、新たに(2)、(3)を行いたい場合、外国人投資家の保有比率を(1)〜(3)の中で最も低い49%以下に変更しなければならない。また初めてベトナムに進出する際も同様であり、3サービスを最初から行いたい場合、外国当事者の保有比率を49%以下にしなければ投資ライセンスの取得はできないことになる。

なお、上記(2)については2014年1月11日以降に外資規制がなくなるが、規制緩和後に例えば(1)、(2)のサービスを提供する企業を設立する場合、保有比率を考慮する必要はなく、外資100%で事業を行うことが可能になる。

<国内法による制限の有無に注意を>
WTOサービス分野約束とは別に国内法で外国人に対する出資規制を定めているケースがある。例えば運輸サービスの場合、2007年9月5日付「物流サービスの提供条件と同サービス提供者の責任に関する商法の政令」(Decree 140/2007/ND−CP)で別途定められている(ただし同政令の場合、WTOサービス分野約束の内容とほぼ同じ)。

この場合、国際的な取り決めであるWTOサービス分野約束が国内法より優先されるが、中には国内法がWTOサービス分野約束にないような規制緩和を行っているケースが存在することも考えられるため、WTOサービス分野約束以外にも国内法による規制の有無について留意しておく必要がある。

(定田充司)

(ベトナム)

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