農業、環境都市づくり、医療分野でビジネス提案−モスクワで日ロフォーラム−

(日本、ロシア)

欧州ロシアCIS課

2013年05月14日

ジェトロは4月30日、農林水産省、在ロシア日本大使館と共催で、モスクワで日ロフォーラム「より広い協力の可能性を求めて」を開催した。500人余りの現地の政府・企業関係者が出席し、農業、環境都市づくり、医療分野でそれぞれの分野を代表する日本企業の経営者らが講演した。またロシア訪問中の安倍晋三首相とイーゴリ・シュワロフ第1副首相が途中参加した。

<「ロシアに進出しないのがリスク」>
日本側から日本経団連日本ロシア経済委員会の岡素之委員長(住友商事相談役)と、ロシアNIS貿易会の西岡喬会長(三菱重工相談役)、ロシア側からロシア産業家企業家連盟のアレクサンドル・ショーヒン会長、実業ロシアのアレクセイ・レピク国際活動担当共同議長、オポラ・ロシア(ロシアの中小企業団体)のセルゲイ・ボリソフ会長が開会のあいさつをした。

西岡会長は今回の安倍首相の訪ロについて「大変タイミングの良いことであり、日ロビジネスの大きな起爆剤になると思う」と述べた。ショーヒン会長はロシアのWTO加盟により、通関制度の整備・透明化が進んでいるとし、2国間の貿易関係が深まることに期待を示した。ボリソフ会長は、日本の中小企業のロシア進出について、特に金属加工分野が有望とし、「ジェトロなどの機関と協力して、進出企業を支援したい」と表明し、「ロシアに進出することがリスクではなく、進出しないことがリスクだ」とも付け加えた。

<北海道銀行はロシア極東で農業生産に参入>
農業・食品分野に関する第1セッションでは、北海道銀行の堰八(せきはち)義博頭取が講演した。同行は4月29日、モスクワでロシア極東のアムール州政府と農業分野における協力に関する覚書を締結した。アムール州農業の発展を目的に、技術交流などの協力を行う。現地農場でソバ、大豆、トウモロコシの共同生産を500ヘクタール規模で始め、2014年以降は1,000ヘクタールに拡大する。これに関連し、堰八頭取は、2013年度中に北海道の農業関連企業による出資会社を設立し、さらに現地法人の設立も検討することを明らかにした。

味の素の伊藤雅俊代表取締役社長は、ロシアでは古来、魚介類、特にイクラなどの遊離アミノ酸が多い食品を食べる習慣があり、うま味への受容性が高いことを紹介し、「ロシア料理と日本食の親和性は高い」と指摘。日本の食品会社として、ロシアの食を健康産業として拡大する方針を表明した。

このほか、和郷園、キッコーマン、全農、秋田銀行、三越伊勢丹ホールディングスの代表者が講演した。

<日本企業はロシアでの環境ビジネス実現に自信>
第2セッションでは、日本における環境都市づくりやロシアでの環境関連ビジネスに関する事例が紹介された。

野村総合研究所の此本(このもと)臣吾常務執行役員は、2012年11月に両国の官民協議の枠組みとして設置された日ロ都市環境協議の第1回作業部会が4月16日に開催されことに触れ、今後政策を提案していく意向を表明した。また、「東京とモスクワは都市の形状と規模が似ており、互いの経験を持ち寄ることにより環境整備の新しいアイデアは生まれる」と指摘した。

川崎重工業の長谷川聰代表取締役社長は、現地企業と協力して、コージェネレーション発電システムをロシア極東の天然ガスパイプラインが走る付近の町村に設置した事例を紹介。「現地で同システムを維持管理するビジネスが生まれ、雇用を創出できる」とロシア経済への貢献をアピールした。

三菱重工環境・化学エンジニアリングの木村和明代表取締役社長は、同社製品であるガスを用いたごみ焼却プラントを、バシコルトスタン共和国のごみサンプルを用いて試験焼却したところ、「(ロシアの)排ガス基準にも適合し、稼働が十分可能と確認した」とビジネス実現に自信を示した。木村社長によると、「ロシア全国でプラント30基の設置が可能」と見込んでいる。

このほか三井不動産、三菱地所が日本での環境に優しいまちづくり事例、東芝がロシアでの電力・医療分野でのビジネス事例を紹介した。

第2セッションの途中で、安倍首相、シュワロフ第1副首相がフォーラム会場に到着、あいさつした。

安倍首相は「豊かな資源を持つロシアと、高い技術・経営ノウハウを持つ日本は、相互補完関係にある」と述べ、本フォーラムを「(日ロ間の)協力可能性を広める絶好の機会」と期待を表明した。シュワロフ第1副首相は「日本企業向けにも投資環境の整備に努力していく」と応じた。

<ウラジオストクで画像診断センターを開設>
第3セッションでは、医療および同機器メーカー関係者が講演した。

主要医療機関や医療機器メーカーなど80組織が加盟し、日本の医療サービスを海外に売り込むメディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)の山田紀子理事は、ウラジオストクで画像診断センターを5月末に開設することを明らかにした。同センターには日本からMRI(核磁気共鳴画像診断)装置などを導入したという。山田理事によると、MEJは次のプロジェクトの実現のため、モスクワ、東南アジア、中東で活動しているという。

このほかオリンパス、住友重機械工業、昭和大学医学部、国立がん研究センター東病院から最新の医療機器や診断技術についての解説があった。

フォーラムの閉会に当たってジェトロの石毛博行理事長があいさつし、「今回多くの日ロ企業関係者が集まり、新しい分野のビジネスにおいて日ロ経済関係が発展をしていくと確信した。ビジネス環境づくりにジェトロも貢献していきたい」と締めくくった。

(浅元薫哉)

(ロシア・日本)

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