特許制度で両国間の連携を強化

(インドネシア、日本)

バンコク事務所

2013年05月09日

日本の特許庁(JPO)とインドネシア知的財産権総局(DGIPR)は4月14日、「特許審査ハイウェイ(PPH)」の試行開始と、特許協力条約(PCT)国際出願に対するJPOの国際調査・国際予備審査の実施機関化について合意した。6月1日から実施される予定。

<日本で特許を得るとインドネシアでも早期に特許取得>
昨今、日系企業によるASEANなどアジア各国への進出は加速しており、現地における知的財産権の適切な保護が求められている。JPOはこれまでインドネシアに対し、知財制度のインフラ整備に向けて、専門家の派遣や研修生の受け入れなどを通じ、DGIPRの審査能力向上などを助けてきた。

そのような中、JPOはDGIPRとの間で、6月1日から特許審査ハイウェイ(注1)を試行開始することに合意した。今回の合意により、日本で成立した特許権の対応出願について、インドネシアにおいては早期の特許化が可能となる。日系企業のインドネシアにおける事業展開の円滑化が期待される。

また、DGIPRが6月1日以降に受理したPCT国際出願(注2)に対する国際調査・国際予備審査を、JPOが管轄することも合意した(注3)。この合意により、DGIPRが受理したPCT国際出願について、JPOが国際調査・国際予備審査を行うことも可能となる。インドネシアのPCT国際出願に対して、JPOの先行技術調査結果を提供することは、特に日系企業が現地で生み出す研究開発成果の適切な保護につながると考えられる。

この件について、DGIPRに常駐しインドネシアの知財制度整備支援に当たっている長橋良浩国際協力機構(JICA)専門家は「DGIPR自身、迅速・的確な知財権利付与に資する施策には積極的だ。管轄する国際調査機関(ISA)やPPHへの参加はグローバルスタンダードに向けてのステップでもあり、かつインドネシアの出願人にもプラスとなることを見据えての判断と思われる」と述べている。

またJPOは、日本の特許出願人が海外で安定した権利を得ることができる環境の実現など、引き続き日系企業などのグローバルな事業活動の支援に当たるとしている。

(注1)特許権を取得することが可能と判断された出願について、出願人の申請により、別の国で簡易な手続きで早期審査を申請することができる制度。
(注2)PCTに基づく国際出願。1つのPCT出願を行うことで、PCT加盟の全ての国に同時に出願した場合と同じ効果が得られる。PCT国際出願は、PCTが定める国際調査機関(ISA)・国際予備審査機関により、先行技術調査およびその特許性に関する見解が示されるため、各国の特許庁はISA・国際予備審査機関の調査結果および見解を参照して自国の審査を行うことが可能。
(注3)出願人の希望があれば、日本の特許庁が国際調査報告・国際予備審査報告を作成・提供することができる。

(大熊靖夫/アジア知的財産担当)

(日本・インドネシア)

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