関税同盟、一部の薄型テレビの関税を引き上げ−5月8日から施行予定−

(ベラルーシ、カザフスタン、ロシア)

欧州ロシアCIS課

2013年04月19日

ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟する関税同盟の政策執行機関であるユーラシア経済委員会の評議会は4月8日、一部の薄型テレビの輸入関税を現行の10〜15%から16%に引き上げる決定を公布した。5月8日に施行される見込み。

<関税引き上げはWTOルールには抵触せず>
ユーラシア経済委員会の評議会は加盟3ヵ国の副首相級で構成され、その下に置かれる理事会とともに、関税同盟加盟国に適用される制度の作成や決定を行う。今回の2013年3月14日付評議会決定第20号に伴う関税引き上げの対象品目は、録画機能付きの液晶またはプラズマテレビ(関税分類番号8528 72 200 1)と、録画機能なしの液晶テレビ(同8528 72 400 0)の2品目で、それぞれ現行の関税率が10%、15%のところ、5月8日からいずれも16%に引き上げられる。

対象2品目のうち、録画機能付き液晶・プラズマテレビの関税率は、ロシアのWTO加盟に伴う約束に含まれる譲許税率(関税率の上限)において、加盟時に20%(ただし、1台当たり51ユーロを下回らない)、2013年に16.7%(同42.5ユーロ)と設定されている。従って今回の引き上げ措置は、WTOルール上制限されるものではない。譲許税率表によると、2014年に13.3%(同34ユーロ)、2015年に10%(同25.5ユーロ)に引き下げられることになっている。

関税引き上げのロシア市場への影響について、家電量販店大手メディア・マルクトのアンナ・トロフィノワ広報担当によると、高級モデルのみに影響が出るが、売り上げには影響は出ないという見方を示した。別の大手量販店Mビデオでは売り上げの95%は国産テレビで占められるという(「コメルサント」紙3月20日)。しかし、現地生産を行っているLGエレクトロニクスのミハイル・プラトノフ営業部長は「関税が上がると、輸入業者が不正に通関申告をするリスクが大きくなり、不正通関が拡大すると正規業者が打撃を受けるのでは」という懸念を示した(「ベドモスチ」紙2012年11月27日)。

<ベラルーシが引き上げを働き掛け>
関税引き上げはベラルーシ政府の意向が働いたとされる。ベラルーシには、ホリゾントとビチャジというテレビの地場メーカーがあり、この2社が国内生産のほとんどを占める。ベラルーシ市場に占める国産テレビのシェアは2012年6月の52.6%をピークに急減、2012年11月には12.8%に落ち込んでいた(「Onliner.by」2012年12月14日)。ベラルーシ政府は2012年11月、薄型テレビ、電子レンジ、エアコンの関税を引き上げる提案をユーラシア経済委員会に提出していた。

2月28日にジェトロおよび在ロシア日本国大使館が、ユーラシア経済委員会との間で行った会合において、日本側から、近く開催される同委員会理事会で薄型テレビ関税の引き上げが議題にあがっていることに懸念を示した。同委員会のアンドレイ・トチン通商政策局長は「日本側の懸念を(理事会に)伝える」と回答したが、3月5日に開催された理事会では引き上げ案が承認され、あらためて審議するとされていた評議会でも最終的に承認となった。

(浅元薫哉)

(ロシア・ベラルーシ・カザフスタン)

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