治安回復し、着実に復興の道を歩む−アフリカ主要国のビジネス環境と企業戦略セミナー（4）−

＜2012年の経済成長率は8.6％の予測＞
ジェトロ・アビジャン事務所の山田泰慎所長は、コートジボワールのビジネス環境と企業動向について講演した。概要は以下のとおり。

コートジボワールでは、2011年4月に就任したワッタラ大統領による、治安回復と復興に向けた取り組みが進んでいる。内政の混乱はなく、ビジネス環境は改善に向かっている。

2012年のGDP成長率は8.6％を達成し、13年、14年も6〜7％台で推移すると見込まれている。工業生産、農業生産が順調に推移しているほか、12年の民間消費支出は12.2％、政府消費支出は10％の伸びを見込む。輸出は、石油製品や農産物加工品の生産回復で5.4％増、輸入は内需拡大により中間財・消費財を中心に19.8％増と予測されている。国際金融機関による融資援助も再開され、経済再建に向け動き出した。

現政権は経済政策として、a.2020年までの新興国入り、b.大規模公共工事の推進、c.経済活性化、d.社会開発促進、を挙げる。重点分野は、農業・農産品加工、情報通信技術、鉱山開発、エネルギー、観光だ。2012〜15年の開発計画を定めた国家開発計画（PND）では、インフラ開発、エネルギー、通信、農業など幅広い分野を対象としている。投資誘致策としては、新投資法の制定を進めており、同法では窓口の一元化や手続きの迅速化（48時間以内の会社設立許可など）を目指すとしている。同法は現在閣議決定され、国会での承認待ちだ。

＜外国企業の投資が活発化＞
外国企業はこれまで内政混乱でカントリーリスクが高いとして当地への進出・投資を控えていたが、最近の治安回復を受け、活動を活発化させている。主な投資分野は、資源開発、農産品・水産品加工、電気通信、運輸、サービスなどだ。復興プロジェクトの獲得や、権益確保に向けて活発な動きがみられる。各国政府が経済・商業ミッションの派遣に力を入れており、中国からはここ数ヵ月で100人規模の視察団と、200人規模の視察団が2回に分けて当地を訪れた。フランス、英国、スペイン、インドからも経済視察団が訪れている。

日本企業では2012年8月、豊田通商が当地での販路拡大を目的に、フランスのアフリカ専門商社CFAOの株式29.8％を取得した。CFAOはフランス語圏アフリカを中心に自動車、医薬品、消費財などの流通・卸を手掛けている。2011年11月には味の素が現地法人を設立した。同社は13年初めに工場を稼働する予定だ。そのほか、三菱商事、三井海洋開発などがビジネスに参入している。

フランス企業では、ブイググループ（Bouygues）による全長1.5キロの橋の建設、ボロレグループ（Bollore）によるアビジャン港のコンテナターミナル拡張、アビジャン〜ワガドゥグ間鉄道の補修・整備のほか、トタル（Total）による油田開発、セモル（CEMOL）によるカカオ工場の生産能力増強（現在の7万トンから10万トンに）、ミシュラン（Michelin）による天然ゴム生産アフリカ最大手SIPHとの連携、アコール（Accor）によるアビジャン高級ホテル・イボワールの経営権獲得などだ。

中国は、輸出入銀行、貿易投資促進センターを設立して、中国企業の進出支援を行っている。2009年に上海で開催した「コートジボワール一次産品・工業化促進フォーラム」では、石油精製、鉱山開発、水力発電ダム建設などに関する覚書を締結するなど、関係を深めてきた。コートジボワールから中国への留学生・研修生の受け入れも行っており、ネットワーク・人脈形成を継続して行っている。中国企業は、通信、農業、鉱物資源開発などあらゆる分野に進出している。華為技術（ファーウェイ）は総延長6,000キロに及ぶ光ファイバー敷設を、化学大手中国中化集団（シノケム）は天然ゴム、パームのプランテーション（4万ヘクタール）開発を進める。中国水利水電建設集団（シノハイドロ）は、発電容量270メガワットの水力発電ダム建設を進めている。

外国企業については、a.これまでは欧米資本中心だったが、アジア系資本が参入してきた、b.内政不安による経営悪化の後、治安回復に伴い営業黒字達成への転換・事業の再拡張を図っている、c.フランス語圏アフリカ域内の経済ハブとして当地に拠点を設ける動きがある、といった特徴がある。

（高崎早和香）

（コートジボワール）