「英語での情報発信」「価格設定」が課題−ジェトロの「中東の女性市場セミナー」(2)−

(アラブ首長国連邦、サウジアラビア、トルコ)

中東アフリカ課

2012年10月01日

「中東の女性市場セミナー」のパネルディスカッションでは、ジェトロ生活文化・サービス産業部の浜野京(みやこ)部長をモデレーターに、ジェトロが招いた中東の女性バイヤーとジェトロ・リヤド事務所の村橋靖之所長をパネリストに迎えた。中東における日本の商材のプレゼンスの低さが指摘されるとともに、中東の女性消費者の経済事情や生活環境、税・貿易制度への理解、英語でのプレゼンテーションの重要性などが強調され、日本企業側の準備不足が指摘された。セミナー報告の後編。

<日本の印象は「価格が高い」>
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコからのバイヤーたちは9月10日から、アパレル分野は東京、美容分野は東京・名古屋で、日本の市場や展示会の視察、企業との商談を行い、ディスカッションに臨んだ。まず、日本の展示会や中小企業との商談の印象についてパネリストからは、「価格が高い」との声が多く上がった。これには、日本企業のプレゼンテーションの弱さから、質と価格のバランスを十分に理解してもらえていない面があるようだ。サウジアラビアのジェッダでビューティーサロン「マダウィ・アル・ワファ」の代表取締役マダウィ・アル・ハスーン氏は、日本企業に対し、化粧品などの成分・効能の英語での詳細な表示や説明を要望した。

加えて、トルコの輸入販売代理店セレン・コズメティッキのマネジャー、アルズ・カラアーチ氏は、日本企業はその商材をどの層に売り込んでいくかについて、十分なポジショニングができていないのではないかと指摘した。例えば、トルコは人口が多いが、そのうち多くが若年層であり、ようやく自分で稼ぎ始めた段階にある。また、輸入品のコンディショナーなどは関税に加え、ぜいたく品として26%の消費税(一般消費税は18%)がかかるため、商品が売れるかどうかを決定する際には「価格」が非常に重要な要素となっていると話した。

<ソーシャルメディアを活用>
欧米ブランドが圧倒的なシェア、認知度を誇る中東の化粧品やアパレル分野でのブランドの確立の仕方について、UAEでビューティーサロンを展開するシスターズ・ビューティー・ラウンジの統括マネジャー、ジェーン・ウィッティントン氏は、中東地域では「iPad」や「iPhone」が広く普及していることを「指先で世界とつながっている」と表現し、「ソーシャルメディアの活用が効果的」だと述べた。同社では要望や他社商品の評価を情報収集するため、フェイスブックを活用しているという。

なお、多くの日本企業がハードルと考えているハラール認証について、村橋所長はサウジアラビアの例を挙げ、標準化公団(SASO)や食品・医薬品庁(SFDA)の認証を取得していれば、基本的にはハラールをクリアしているとされ、周辺のアラブ、イスラム諸国への輸出も可能となると説明した。また、サウジアラビアでセレクトショップを展開するルバイヤートの取締役社長ワファ・アバール氏は、アパレル分野では豚の皮を使った製品が禁止されていること、そしてイスラエル経由では輸入できないことに注意を促した。

中東での日本の商材のプレゼンスはまだ高くない。サウジアラビア商工会議所の女性役員でもあるマダウィ氏からは、「日本製品のプレゼンス向上には、まずはビジネスミッションを送ること」との意見も挙がるなど、日本の積極的な取り組みに期待が込められた。浜野部長は、ジェトロ事業や国際展示会の活用によるビジネス創出の可能性に言及し、「英語での情報発信や価格設定の問題は他の地域でも共通する。これらの課題をクリアした上で、まだ日本企業のサクセスストーリーが少ない中東の消費市場に対しても、ぜひチャレンジしてほしい」と締めくくった。

(高松晃子)

(中東・サウジアラビア・アラブ首長国連邦・トルコ)

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