1年10ヵ月ぶりに国債入札

(アイルランド)

ロンドン発

2012年07月13日

アイルランド財務管理庁(NTMA)は7月5日、2010年9月以来1年10ヵ月ぶりとなる国債の入札を実施したと発表した。3ヵ月物国債の目標売却額5億ユーロに対し、応札は2.8倍となる14億1,500万ユーロで、平均利回りは1.8%だった。2012年10月15日に満期を迎える。EUなどへの金融支援要請以降、初めてとなる国債の発行は、厳しい財政再建策を続けるアイルランドにとって明るい兆しとなりそうだ。

<金融市場への完全復帰の第一歩>
NTMAのコリガン長官は入札後に、「海外を含め市場の高い関心と競争力のある利回りに勇気づけられたが、金融市場に完全復帰するという最終目標までの第一歩にすぎない」とコメントし、慎重な姿勢を崩さなかった。

政府は、EUなどによる支援からの脱却のため独自の資金調達を模索しており、「アイリッシュタイムズ」(電子版7月6日)は、コリガン長官が、2013年の早い段階での期間2年以上の長期国債入札実現を目指し、2012年内に3〜4回の短期国債入札を行う意向を示している、と報じた。

ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は7月6日の月例記者会見で、「アイルランドは大変な努力を重ね、国債市場に復帰できるほど順調に財政再建プログラムを進めている。2〜3ヵ月前に予想されていた復帰時期より一段早いものだった。完全な市場復帰までしばらく時間はかかるかもしれないが、アイルランド政府と国民の痛みを伴う再建に向けた努力は正当に評価されるべきだ。また、1ヵ月前に比べ欧州市場の緊張が少し和らぎつつあるという点でも、非常に大きな意義を持つ」と述べた。

アイルランド中央統計局(CSO)の国際収支統計によると、2012年第1四半期の国際収支は10億4,500万ユーロの赤字で、前年同期の赤字19億1,800万ユーロに比べ赤字幅は45.5%減少した。貿易収支に大きな変化はなかったが、サービス収支が11年第1四半期の13億6,500万ユーロの赤字から12年第1四半期は5,900万ユーロの黒字に転じた。統計上も改善がみられ、アイルランド経済に薄日が差し始めている。

(村上久)

(アイルランド)

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