ペルー・パナマFTAが発効

(パナマ、ペルー)

メキシコ発

2012年05月22日

ペルーとパナマの自由貿易協定(FTA)が5月1日に発効した。ペルーとのFTA交渉には、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、パナマが参加し、コスタリカとパナマは2011年5月に、グアテマラは同年12月に協定書に署名している。エルサルバドル、ホンジュラスの2ヵ国は交渉を継続中だ。

<18年かけて関税を撤廃、除外品目は食料品が中心>
ペルーとパナマのFTA発効により、両国は18年かけて関税を段階的に撤廃する。ペルーはパナマ原産品に対して、タリフライン(関税品目)の76.9%の関税を即時撤廃、発効後5年で91.1%、10年で97.1%を撤廃する。パナマは同様に57.0%を即時撤廃、発効後5年で84.2%、10年で95.2%を撤廃する。

除外品目はペルーがタリフラインの1.8%、パナマが3.3%で、双方ともにジャガイモ、トウモロコシ、コメ、タマネギ、コーヒー、鶏肉、ソーセージ、砂糖などの食料品が中心。エチルアルコール、段ボール、ガラス容器などの工業品も含まれる。

割当品目をみると、ペルーは牛肉、豚肉ハム、コンデンスミルク、トウモロコシでんぷん、ジャガイモでんぷん、動物用飼料など。パナマは牛肉、コンデンスミルク、パスタ、ビスケット、豚肉ハム、魚粉、動物用飼料、トウモロコシでんぷん、ジャガイモでんぷんに設定している。

<コロン・フリーゾーンからの再輸出でも原産性を維持>
ペルーとパナマのFTAは、両国の原産性を維持する条件として、貨物が締結国間で直送されること、第三国で積み替え、一時蔵置される場合は貨物が第三国の税関の管理下に置かれていること、その場合は貨物に変更を加えないこと、などが条件となる。

パナマにはコロン・フリーゾーンがある。パナマ貿易産業省(MICI)によると、コロン・フリーゾーンはパナマ税関の管理下ではなくコロン・フリーゾーン管理庁の管理下にあるが、コロン・フリーゾーンに製品を在庫しても、変更を加えなければその原産性は維持される。

しかし、ペルー、コスタリカ、パナマ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスの原産品がコロン・フリーゾーンから再輸出された際、各国で特恵税率が適用されない事態を避けるため、同フリーゾーンからの再輸出証明に関する条項が協定に盛り込まれている。そのため、このFTA締結国でコロン・フリーゾーンから再輸出された貨物を輸入して特恵税率を適用する場合は、コロン・フリーゾーン管理庁が発給する再輸出証明書を添付して輸入申告する必要がある。

<ほかの締結国の原材料使用製品もパナマ原産に>
FTA締結国で生産される産品の材料にほかの締結国の原産品を使用する場合、その材料が締約国の原産材料としてみなされることを「累積」という。ペルー・パナマFTAでは、原産地規則を満たすほかの締結国(コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス)の原産材料を組み込んだ最終製品は、パナマ原産として認められる。ただHS50類から63類に分類される最終製品(紡織用繊維およびその製品)については、次の条件が設けられている。

まず、50類から63類に分類される最終製品の輸入国における特恵税率は、0%でなければならない。さらに、最終製品に組み込まれるペルー、パナマ以外の締結国の原産材料の特恵税率も、これらの締結国がペルー、パナマと締結するFTAで0%になっている必要がある。例えば、グアテマラ原産の材料を使ってパナマで最終製品を生産し、ペルーに輸出する場合、パナマ原産の最終製品に対するペルーの特恵関税が0%であること、グアテマラ原産の原材料に対するペルーの特恵関税が0%であることが累積の条件として求められる。

現時点でペルーとの協定が発効しているのはパナマだけのため、これらの条項の恩恵を受けるには残る中米諸国とペルーのFTA発効を待たねばならない。

<ペルー、パナマ間の貿易額は増加傾向>
コロン・フリーゾーンの一時輸入、再輸出を除くペルー、パナマ間の一般貿易額は、2006年以降増減を繰り返しているが、増加傾向にある(表1参照)。

表1パナマの対ペルー一般貿易額の推移

ペルーへの主な輸出品目は医薬品で、輸出総額の9割以上を占める。ペルーからの主な輸入品目はプラスチック製の瓶、フラスコ類、プロピレン重合体の板、シート、フィルム類、イワシの調製品、硫酸および発煙硫酸、医薬品類となっている。

コロン・フリーゾーンは、アジアからの一時輸入、中米・カリブ諸国、ベネズエラ、コロンビア向け再輸出が圧倒的に多い。11年のペルー向け再輸出額は、前年比23.4%増の1億9,122万ドルと大きく伸びた(表2参照)。

表2コロン・フリーゾーンの対ペルー一時輸入・再輸出額の推移

パナマは、ペルー向けの輸出機会の拡大に加えて、ペルーと中米・カリブ諸国の貿易拡大を通じたペルー企業によるコロン・フリーゾーンの利用促進、パナマへの直接投資の増加に期待を寄せている。

(西澤裕介)

(パナマ・ペルー)

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