官僚主義脱却でビジネス環境改善に期待−ギリシャ選挙結果への産業界の見方−

(英国、ギリシャ)

ロンドン発

2012年05月10日

ギリシャ国民議会選挙で、財政再建を進めていた連立与党の合計議席数が過半数を割り込んだ。「フィナンシャル・タイムズ」紙(5月7日)は、「ギリシャで主流派つまずく」という見出しで、EU・IMF救済プログラムに対する有権者の姿勢の表れと、選挙結果を報じた。選挙結果とギリシャ経済の見通しについて、在アテネの英国ギリシャ商業会議所(BHCC)ドミトリス・ミタトコス広報マネジャーに5月8日、電話で聞いた。

BHCCは、英国産業連盟のギリシャ代表部を兼ねる。1945年アテネに設立。加盟企業は480社。

<再選挙の可能性が高い>
問:選挙結果について。

答:ギリシャ国民は、今まで続いた厳しい緊縮財政の影響で疲弊しきっている。IMFやEUから押し付けられた財政再建プログラムも、耐えられないところまできた。日常の生活物資に困窮するまでになり、国民は生活を守るために投票した。ただし、議会で過半数を確保するための連立交渉が不調に終わり、再選挙が実施される可能性が高いため、しばらく様子をみる必要がある。極右勢力が議席を伸ばしており、再選挙が実施された場合の動向が懸念される。

個人的には結果を前向きに受け止めている。このような大きな変化の波は30余年ぶり。これまで官僚主義がビジネスの大きな障壁になっており、長年にわたって対内投資に影を落としていた。選挙により経済政策を含めてビジネス環境が改善され、貿易と投資が活発になることを期待している。

問:次期政権に期待することは。

答:左派勢力はビジネスへの関与が少ない傾向にある。ただし、財政再建路線からの脱却を掲げており、その場合のビジネスへの影響は計り知れない。欧州諸国とのビジネスは非常に難しくなるだろう。現在の左派勢力は社会主義でも中道派。脱EU、脱ユーロを掲げる共産党との連立協議は困難なため、再選挙が実施される可能性は高い。われわれは、脱EUには反対だ。EUの枠組みの中でのギリシャの新たな経済政策に期待している。

(村上久、ピーター・カワルチク)

(ギリシャ・英国)

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