マレーシアとのFTAが発効

(マレーシア、チリ)

サンティアゴ発

2012年05月08日

マレーシアとの自由貿易協定(FTA)が4月18日に発効した。両国の貿易規模は大きくないが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加国間のFTAとして注目される。品目ベースの自由化率はチリが98.9%、マレーシアが93.6%。関税が削減・撤廃されない除外品目は、チリで86品目、マレーシアで138品目設定された。サービス・投資分野はこのFTAには含まれておらず、TPPの交渉項目に入っている。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<10年11月の合意から1年半>
マレーシアとのFTAは、2010年11月15日の横浜でのAPEC首脳会議の際に合意し、両国で発効のための国会手続きが進んでいた。12年4月18日に官報に記載され、同日、正式に発効した。

このFTA発効により、品目数ベースでチリは98.9%、マレーシアは93.6%の関税を撤廃する(添付資料参照)。マレーシアでは、a.発効時に即時撤廃、b.発効2年目の1月1日に撤廃、の2種類がある。チリの場合はこの2つに加え、発効4年目の1月1日に撤廃の3種類がある。

チリで関税が削減・撤廃されないのは小麦、コメ、アルコール飲料、たばこ、花火、中古タイヤなど86品目。マレーシアが関税を撤廃しないのは次の3種類。

○関税を20%ずつ引き下げるが、最終的に5%の関税を維持する品目(525品目):自動車、ゴム製品、鉄鋼製品、アルミニウム製品など
○関税割当を設定する品目。割当内の関税率は無税だが、割当外の関税率は20%に維持。関税割当量は毎年5%増加させる(4品目):鶏肉
○関税を削減・撤廃しない品目(138品目):豚肉、ミルク・クリーム、キャベツ、アルコール飲料、たばこ、花火、中古タイヤなど

11年の貿易統計によると、輸出先としてマレーシアは国別で38位(2億1,600万ドル)でシェア0.27%、輸入先としては49位(7,200万ドル)でシェア0.11%。シェアはまだ低いものの、この10年で両国間の貿易は急激に伸びており、しかも常にチリ側の出超になっている(図参照)。輸出産品は、圧倒的に陰極銅(カソード)が多く、そのほか農産物、海産物が輸出され、マレーシアからは家具などの軽工業品が輸入されている(表参照)。

対マレーシア貿易動向
11年の対マレーシア輸出入主要産品(上位10品目)

<サービス・投資分野はTPP交渉で>
チリ外務省・対外関係経済総局のロドリゴ・コントレラス局長は、FTA発効をきっかけに、チリ側から牛肉、魚、生鮮果実、粉ミルク、ヨーグルト、チーズ類などの輸出増に期待し、マレーシアからは熱帯果実が入ることになろうとコメントしている。チリ政府は、エネルギー調達先多角化方針を踏まえ、液化天然ガス(LNG)、原油の新たな輸入先としてマレーシアのポテンシャルにも期待している。

マレーシアとのFTAには、発効2年以降にサービスや投資に関しての見直しが可能な条項が含まれている。ただし、当該項目については、TPPで既に交渉が始まっており、TPPでの当該項目についての交渉が、2国間FTAを補完する役割を果たすことになろう。

(竹下幸治郎)

(チリ・マレーシア)

ビジネス短信 4fa77afca1608