在米日系企業のビジネス交流ミッションが来訪

(日本、コロンビア)

ボゴタ発

2012年02月17日

ジェトロは、在米日系企業の中南米諸国でのビジネス展開支援のため、14社が参加する日本ビジネス交流ミッションを2月1日から、まずコロンビアに派遣した。参加企業は現地の工場視察などの後、これまでの治安悪化イメージが一掃され、真摯(しんし)にビジネス状況改善に対応しているという印象を持ったようだ。

<日系エレベーターメーカーが国内でシェア1位に>
日本ビジネス交流ミッションの派遣は、2011年9月に東京のジェトロ本部を訪問したサントス大統領らが強調した両国の経済関係緊密化のメッセージに応じ、ジェトロが在米日系企業に呼び掛けた。参加したのは在米日系大手企業計14社(16人)で、内訳は産業機械4社、自動車部品1社、化学2社、建築部材1社、運輸1社、サービス業1社、金融2社、法律・会計事務所2社。

初日の2月1日に、鈴木一泉駐コロンビア大使の歓迎のあいさつの後、日本大使館の参事官から最近の政治・社会情勢について説明を受けた。引き続きジェトロが最近のマクロ経済動向を説明。さらに業務用エレベーターのメルコ・デ・コロンビア(注)の高畑年伸副社長が業務活動状況を説明した。


メルコはコロンビアを中南米諸国での製造・販売拠点と位置付けており、ボゴタ市に本社事務所、メデジン市郊外に工場、そのほかに国内地方事務所5ヵ所、技術要員拠点7ヵ所、訪問保守拠点11ヵ所を整備し、従業員数は合計754人。創業は40年以上前だが、途中で治安悪化のため中南米拠点機能を米国のマイアミに一時移転し、その後の治安改善で10年10月、再びコロンビアに拠点機能を復帰させた。

好景気を反映し、10年の営業実績は前年比22.3%増の1,290台に達した。売り上げ全体の43%が国内市場向けで、大手ショッピングモール、金融機関、ホテルなどに納品してトップシェアを占めている。海外市場向けでは、エクアドルが輸出全体の45%と最大の仕向け国となっており、次いでチリ、アルゼンチン、ドミニカ共和国、ベネズエラなど。

高畑副社長はコロンビアの強みとして、a.質の高い労働人材(高い能力・真面目さ・正確さ・丁寧さ)、b.南米第2位の人口(4,693万人)、c.政治的安定性、d.地理的利便性(パナマ、エクアドル、ベネズエラに日帰り出張可能)、e.親日的な国民感情(日本および日本製品に対して)、などを挙げ、労務問題などを含む具体的質問にも丁寧に説明した。

<コロンビア側が魅力的な投資環境をアピール>
2月2日は、貿易投資観光推進機構(PROEXPORT)や商工観光省の協力を得て、投資環境セミナーをボゴタ市内のホテルで開催した。冒頭、デュケ商工観光次官が、治安改善による社会安定、半世紀にわたる堅実なマクロ経済運営(デフォルト、ハイパーインフレ未経験)、投資家からの信頼(信用格付けの投資適格への引き上げ)、自由貿易協定(FTA)など経済の国際化推進といった面で、コロンビアは現在世界から注目されていると説明し、日本企業の活動に期待を表明した。

続いてフアン・カルロス・ゴンサレスPROEXPORT副長官が、コロンビアの投資環境の具体的魅力について説明した。政府は堅実なマクロ経済運営、さらなるビジネス環境改善への取り組みを進めているとし、部門別では、特にアグロインダストリー(バイオディーゼルなど)、インフラ整備(道路・港湾・空港)、鉱業開発(石油・石炭)、低所得層向け住宅開発、第一次産業のイノベーション、自由貿易特区(FTZ)などに向けた外資・技術導入の重要性を強調した。

日系企業からの質問に対しては、以下のような説明が行われた。

○電力供給事情は水力が主体
○英語人材の強化を図っている
○為替レートは今後もペソ高の見通し
○インフラ整備は道路網が最優先で、ほかに国際空港拡充、港湾開発、内陸石油資源輸送パイプラインなどを進める
○アニメーション産業の育成を図る
○FTZでは雇用創出を原則とし、推進対象業種は特定していない
○住宅建設については、都市再開発のように高層ビル建設で対応する予定
○産業部品の調達については、産業連盟(ANDI)や商工会議所加盟企業が多くある

<国内最大の自動車部品メーカーを訪問>
セミナーの後、自動車用ブレーキ・サスペンションなどのコロンビア最大のメーカー、チャイネメ・グループのブレーキ工場を視察した。チャイネメは、ブレーキなどの自動車部品製造、ボルボの販売代理店、建設の3部門を持つ国内有数の企業グループだ。

同グループで製造する自動車部品としては、ドラムブレーキ、板・発条バネ、ディスクブレーキ、サスペンション、タイヤホイール、などがある。国内で販売される自動車ブランド(クライスラー、フォード、ゼネラル・モーターズ、日野自動車、現代、マツダ、三菱自動車、ルノー、トヨタ)の部品としてOEM供給しているほか、近隣諸国・アジア・欧州・米州諸国など海外33ヵ国にも輸出している。

ナイブ・ネメ社長が歓迎のあいさつをした後、質問に答えて、品質管理はトヨタから学び国際協力機構(JICA)を通じた技術研修を実施している、社内の意思疎通の円滑化を図り労働組合は不要だと考えている、原材料調達では国内に鉄鋼業はあるが高炉は存在しない、などと説明した。

(注)1969年、メデジン市郊外に設立。主な事業は、業務用エレベーターの組み立て製造・販売。三菱電機が70%、三菱商事が20%、メルテックが10%を出資。

(清水文裕)

(コロンビア・日本)

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