IFCが風力発電プロジェクトに融資

(パキスタン)

カラチ発

2011年11月17日

途上国の民間分野に対する投資を支援する国際金融公社(IFC)は10月27日、トルコ系のゾルルエナジー・パキスタンがシンド州で実施する風力発電事業に出資すると発表した。出資額は3,810万ドル。

<優遇措置で風力発電事業を後押し>
ゾルルはシンド州ジャンピールで56.4メガワット(MW)の風力発電を建設運営する。本プロジェクトには、世界銀行グループのIFCのほか、アジア開発銀行(ADB)、イラン、パキスタン、トルコ政府の出資によって設立されたECOトレード・アンド・デベロップメント・バンク(本部:イスタンブール)、地元のハビブ銀行などが計1億5,900万ドルの金融支援を行う。

政府が米国開発庁(USAID)の支援を受けて実施した調査によると、国内には34万6,000MWの風力発電の可能性があるという。政府は今後、全発電量の5%(9,700MW)を代替エネルギーで賄うことを計画しており、この目標達成のため、風力発電プロジェクトに取り組む企業に、以下のような優遇措置を用意している。

a.風がなく発電できない場合のリスク保証、b.発電した電力の購入、c.発電した電力の購入者が送電線を準備すること、d.送電コストに加えて17%の株主資本利益率(ROE)加えた費用を基にした電力売買単価契約の締結、e.輸入設備に対する関税免除、f.法人所得税、源泉税、売上税の免除など。

風力発電プロジェクト実施には、政府(代替エネルギー開発庁:AEDB)に同意書(LOI)の提出が必要で、LOIに基づき、政府が土地の割り当てを行う。事業希望者はLOI提出後18ヵ月以内あるいは土地の割り当て後12ヵ月以内に、事業可能性調査(FS)を終了することが求められる。AEDBによると11年10月現在、LOIを提出し風力発電事業の実施が認められている事業体は37社。外資系では、ゾルルのほかChina Sunnec Energy、Hydro China Xiebei Engineering(3プロジェクト)などが含まれている。

ジェトロに対しAEDBは、FSを終了した事業体が19社、発電免許を入手している企業が8社、政府と販売電力価格に合意あるいは交渉中の企業が10社、電力調達(販売)契約を締結している企業が4社あることを明らかにした。ゾルル同様に、AEDBからサポートレターを入手し、ほぼ事業の実行段階にある企業は3社だ。

パキスタンの風力発電事業環境の進展に伴い、事業可能性を見出した欧米、中国の企業による発電設備の売り込みも活発だ(2011年11月16日記事参照)

<代金回収問題で投資をためらう外資系>
一方で、パキスタンは循環債務といわれる電力料金の未回収問題を抱えている。電力利用者(個人、法人、政府)からの電力料金の回収が進まないため、配電会社、発電会社、石油精製会社と連鎖的にそれぞれの支払いが滞り、その金額は、政府によると11年4月で2,585億ルピー(1ルピー=約1.1円)に上る。09年の1,039億ルピーから2.5倍に増えた。

優遇措置を得て発電所を建設し、有利な単価での売電契約ができても、代金回収にかかわる懸念が外国企業の電力分野への投資をためらわせており、設備の売り込みに偏らざるを得ない環境になっている。新聞では、この問題解決のための債務の買い取りや証券化を報じているものの、政府からの具体的な方針方策は明らかになっていない。

風力発電実施予定企業が国家電力規制庁(NEPRA)と締結した販売電力料金のうち、現在公表されているのは表のとおり。

風力発電実施予定企業が締結した販売電力料金

(白石薫)

(パキスタン)

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