エヌ・ピー・シー、競争相手買収しビジネス強化−欧州の新ビジネスモデルを探る(5)−

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2011年03月24日

太陽電池製造装置メーカーのエヌ・ピー・シー・ヨーロッパ(NPC Europe、NEG)は、世界金融・経済危機直後に競争相手のドイツ企業を買収し、欧州市場でのビジネスを広げた。今後のビジネスモデルや中長期的な目標について、NEGのぺトラ・モイラー取締役に聞いた。

<太陽電池モジュール製造装置のマーケットリーダー>
エヌ・ピー・シー(NPC)は1992年に東京都江東区で創業。初期は食品・薬品用などの真空包装機事業が中心だったが、94年に太陽電池製造用の真空ラミネーターを開発し、太陽電池市場に乗り出した。その後、太陽電池関連の製品ポートフォリオを広げ、太陽電池一貫製造ラインの販売を開始した。国際化も比較的早く、96年に米国(NPCアメリカ)、99年にドイツ・ケルン市(NEG)に拠点を置き、欧米市場の開拓に力を入れた。

現在、NPCグループは真空包装機と太陽電池製造装置の両事業を行い、太陽電池モジュール製造装置の分野で、50%超の世界シェアを占めるマーケットリーダーになっている。

<企業買収で欧州に生産拠点築く>
欧州に進出した当時、アジアに比べて本社との距離が遠く、北米より競争相手が多数いることが障害になった。「それまで欧州に生産拠点がなかったため、製品と部品を日本から配送しなければならなかった」とモイラー氏は振り返る。また、本社はアジアと北米では幅広い顧客ネットワークを持っていたが、欧州では顧客数が比較的少なかったことや、為替レート変動があることもビジネス上の難点となった。

しかし、2010年9月にドイツのマイヤー・ソーラー・ソリューションズを買収したことにより、欧州の生産拠点を確保し、これらの問題が解決に向かった。マイヤーはノルトライン・ウェストファーレン州ボホルトとザクセンアンハルト州シュドハルツに工場を持ち、真空ラミネーター分野でNEGの競争相手だったが、10年7月に破産申請した。「当時、約50社がマイヤーの買収に関心を示した。当社の素早い決断が決め手となった」とモイラー氏は語る。

マイヤーは欧州で強い販売ネットワークを持っているため、NEGの欧州での立場が強化された。マイヤーは真空ラミネーターの生産に特化してきたが、NEGは今後、製品ポートフォリオをほかの太陽電池関連製品に広げ、フルラインアップで欧州市場に供給することを狙っている。今後の展開についてモイラー氏は「買収や技術提携で欧州市場にさらに力を入れることが考えられるが、現在のところ具体的な計画はない」と話している。

<アジアで価格競争、欧州で技術競争>
特にアジア市場では、NPCグループは中国メーカーの攻勢で厳しい価格競争を迫られている。モイラー氏は「技術面では中国メーカーは競争相手にならないが、コスト面で圧倒的な力を持っている」という。一方、欧州では太陽電池分野のライバルメーカーの数は限られるが、各社とも顧客のニーズに合わせた先端技術製品を供給している。NPCはアジア市場では価格競争、欧州市場では技術競争に直面している。

「欧州諸国には高い環境意識、再生可能エネルギーへの関心や各政府の優れた支援プログラムがある。NPCグループにとって、欧州はアジアや北米よりも優先する市場だ」とモイラー氏。コスト削減のため、多くの企業は生産拠点を東欧やアジアに移転しているが、西欧、特にドイツで太陽電池モジュールの設置数が多く、NEGはドイツに生産拠点を置くことによって、市場の配送時間短縮やコスト削減の要求を満たすつもりだ。

欧州に比べ、北米市場は遅れている。政府による支援プログラムが少なく、欧州と同様ブームはまだ発生していない。モイラー氏は「北米の各政府が支援プログラムに力を入れれば、市場は膨大なポテンシャルを発揮するだろう」とみている。

欧州市場での競争も今後さらに激化すると予想される。「特にドイツ政府の支援プログラムの終了に伴い、生産コストの低減や機械の効率向上が必要不可欠だ」とモイラー氏は語っている。

(ゼバスティアン・シュミット)

(ドイツ)

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