政府、国連安保理の対リビア制裁決議案を支持

(リビア、中東、南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2011年03月04日

政府は2月26日、政情不安でリビアの市民が多数犠牲になっていることについて深い懸念を示すとともに、国連安全保障理事会のリビア制裁決議案の支持を表明した。一方、ズマ大統領からリビアを非難する公式発言がないことを、野党は批判している。

<野党はズマ大統領への批判強める>
国連安保理決議が採択された翌日の2月27日、国際関係・協力省は、リビアに滞在していた南アフリカ国籍の30人の帰国が完了したと発表。引き続き情勢を注視するとともに、民主化移行への支援を行う準備があるとしている。

しかし、野党は、リビアに対してより強い態度で臨むべきだと主張している。最大野党の民主同盟(DA)は2月27日、ズマ大統領やヌコアナ=マシャバネ国際関係・協力相が、カダフィ大佐を名指しでは非難していないことを批判する声明を発表。ズマ大統領による駐南ア・リビア大使の国外追放を求めた。また、第3野党のインカタ自由党(IFP)は翌28日、国連安保理の決議が採択される前にも、政府はリビアをいち早く非難すべき立場にあったとの見方を示した。

また2009年4月の総選挙に先立ってズマ大統領がカダフィ大佐を訪問した際に、大統領就任のための選挙運動資金を受け取り親密な関係を築いてきたのではという臆測や、南アからリビアに武器を輸出したとの野党からの指摘が相次ぎ、大統領に対する批判が強まっている。

<サブサハラ・アフリカで政変の可能性低いとの見方も>
国内に拠点を置くシンクタンクのブレントハースト財団の所長で中東・アフリカ問題に詳しいグレッグ・ミル研究員は、今回の一連の政変に共通する特徴として、民主主義の欠如と、市民が経済的な恩恵を受けていなかった点を指摘している。さらに、「経済成長を支えるのは良い統治(ガバナンス)だけでなく、人口拡大の要素も非常に大きい」として、中東や北アフリカの著しい人口拡大が、今回の政変では脆弱(ぜいじゃく)な体制を崩壊させる市民の力になったとしている。

しかし同氏は、今回北アフリカで起きているような政変がサブサハラ・アフリカで起きる可能性は低いとみている。「反政府デモが発生する背景となったインターネットの普及、高失業率、政権側の汚職に対する不満などの条件はサブサハラ・アフリカ諸国にも共通しているものの、サブサハラ・アフリカの指導者はこれまで民族、血縁、宗教などの異なるグループ間の利害を対立させることで、『政府』対『国民』という図式が生まれるのをうまく避けてきた。従って、北アフリカと同じような政変がサブサハラ・アフリカで起きる可能性は低い」と分析する。

一方で政治評論家のモエレティ・ムベキ氏は、20年前後に国内でもチュニジア型の政変が起きる可能性があるとしている。「国内経済は中国での資源需要の高まりを背景とした資源価格高騰の恩恵を受けている。このため政府は、社会保障プログラムのための財政を確保できている」と指摘。その上で、この状況は、中国が現在の資源集約型産業の段階から脱却する20年ごろまでしか続かないとみる。20年以降は、現アフリカ民族会議(ANC)政権の支持基盤の黒人貧困層が、十分な社会保障を受けることが財政上厳しくなるため、現政権への不満が高まるとの見方を当地の「ビジネス・デイ」紙上で示している。

<中東・北アフリカ政情の経済的影響は小さい>
南ア企業は積極的にサブサハラ・アフリカ諸国に進出しているものの、文化・言語圏が異なる北アフリカに対する大規模な投資は行っていないため、ビジネスへの影響は限定的だ。貿易関係でも北アフリカ地域からの輸入は全体の0.1%、同地域への輸出は0.8%を占めるにすぎない(09年)。

中東については石油輸入を中心に、サウジアラビア、イランからの輸入が全体の9.1%を占めているが、そのほかの国の割合は1%以下となっており、経済的な影響は小さいとみられる。

(高崎早和香)

(南アフリカ共和国・リビア・中東・北アフリカ)

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