エルドアン政権、対リビアには慎重姿勢

(リビア、トルコ、アフリカ)

イスタンブール発

2011年02月28日

リビアの騒乱の影響が進出トルコ企業や在リビアのトルコ人にまで及んでいるため、政府はトルコ人の救出作戦を実施、リビアとの関係が深い建設セクター企業と緊急会議を開くなど、迅速な対応をとっている。また、アラビア半島諸国への運動の波及、石油価格の上昇が貿易や経常赤字にもたらす悪影響などが議論され始めた。

<建設・コントラクター部門が緊急会議>
リビアでの騒乱が拡大する中、トルコではチャーラヤン貿易担当国務相の呼び掛けで2月24日、建設・コントラクター部門の緊急会議を行った。同相は「リビアでは速やかな安定が実現すれば、トルコ企業の活動も再開し、退避したトルコ人以上のトルコ人を送り出すことになろう」と強調した。また、リビア情勢を分析している国内の銀行部門は「建設・コントラクターが冷静な反応を示していることを評価する」と述べた。

建設・工業センター(YEM)の報告によると、建設部門は2010年第3四半期に前年同期比18.4%の成長を示し、20年までの10年間の年間平均成長は7.3%と期待されている。また、建設機械部門の10年の投資は約36億ドルに達し、前年比80%の成長を遂げ、そのキャパシティは88%増と、中国に次ぐ世界2位の成長速度を実現しているという。同様に、セメント生産も今後10年間で60%増が期待されているなど、建設と関連セクターは順調に成長を遂げている。

<リビアでの受注プロジェクトは124件>
トルコの主要建設コントラクターは28社で、海外38ヵ国で活動しており、うち9社は国内での活動を行っていない。リビアでは現在18社がプロジェクトを手掛け、09年から10年にトルコ企業のENKA、ユクセル、REC、ドウシュ、ジェンギズなどがリビアで受注したプロジェクトは124件に及ぶ(2011年2月23日記事参照)

トルコ建材生産者協会によると、リビアでのトルコ企業の損失はかなりの規模に達しているという。トルコ建設業者協会も、トルコ企業のリビアでの損失を懸念している。アクフェン・ホールディングはイスタンブール証券取引所(ISE)への声明で、リビアでの2つの空港ターミナルプロジェクトから従業員を避難させていると発表した。アクフェンは関連会社のTAV建設が、トリポリ空港の新ターミナル建設契約で25%、セブハ空港の建設契約で50%のシェアを占めている。

<原油高騰に懸念>
トルコ中銀のトゥルハン副総裁は、リビア情勢を受け石油価格が1バレル当たり120ドル近くになったことについて、価格の上昇は内需増ではなく、国際市場の混乱によるものだとし、中銀の金融政策に変更を強いるものではないと述べた。一方で、シムシェク財務相は、国際石油価格が10ドル上昇すれば、トルコの経常赤字をGDP比0.6%押し上げるとし、国内の石油需要の約9割を輸入に依存しているトルコにとっては非常に重要な問題だと述べ、懸念を示している。

ISEの株価も石油価格高騰を受け10年9月以来、約5ヵ月半ぶりの安値となり、2月24日のISE100は60760ポイントとなった。また、為替市場でも1ドル=1.60リラ前後まで下落している。

<対エジプトとは状況が異なる>
2月22日に臨時政府との会談のためチュニジアを訪問したダウトオウル外相は「チュニジアの革命は他国に改革のモデルを提示することができる」とし、チュニジアのエンナーダ運動(イスラム原理派)の指導者ラシェッド・ガンヌーシ氏は「チュニジア国民は、イスラームとの融和を実現させているトルコの民主主義の経験をチュニジアの革命後のモデルと見なしている」と述べるなど、トルコに対する高い評価を示した。

トルコを訪問したルクセンブルクのアッセルボルン外相も「現在アラブ諸国で拡大している変化に対して、トルコを民主化のモデルとして進めることができる」と述べている。トルコ国内でも「エルドアン首相はアラブ世界で人気があり、政府は、安定した力強い経済と保守的で現実的な政策で成功を収めているイスラム民主主義の国として高く評価されている」といわれることが多い。

しかし、エジプトのムバラク大統領に辞任を促したエルドアン首相は、リビア情勢については、2万5,000人規模の在留トルコ人の安全を考慮して、慎重に言葉を選んでいるようだ。リビアでは既にトルコ人1人が犠牲になっていることが確認されている。同首相は、リビア全土に拡大した市民の反乱を鎮圧するためにリビア政府がとった「容赦ない鎮圧姿勢」は暴力行為をさらにあおるだけだと警告したが、カダフィ大佐の進退には触れず、欧州が検討しているカダフィ政権に対する制裁に関しても、「民衆を追い込むだけだ」と反対する姿勢をみせている。

イスタンブール商業会議所のヤルチュンタシュ会頭は「エジプトの状況はトルコ企業に損失をもたらすだけかもしれないが、リビアでの問題は人命にかかわる」と述べるなど、状況が異なることを強調している。また、中東イスラム世界の混乱が、「安定」という利害の一致で、トルコとイスラエルとの関係修復に向けた動きにもつながるとの見解も出てきている。

(中島敏博)

(トルコ・リビア・中東・北アフリカ)

ビジネス短信 4d6b098223668