リビア混迷で建設部門の懸念強まる

(北アフリカ、リビア、トルコ、アフリカ)

イスタンブール発

2011年02月23日

リビアでの反政府運動が東部のベンガジから首都トリポリにまで波及したことを受け、トルコ政府はリビア在住のトルコ人を救出するため空路、海路を通じた救援を開始した。両国は、建設案件を中心に活発な経済関係があり、建設企業など約200社、約2万5,000人がリビアで就労している。貿易も近年急拡大している。中東・北アフリカ地域全体に拡大する動揺は、石油価格上昇圧力だけでなく、少なくとも短期的にはトルコの輸出産業に大きな痛手になると予想される。

<トルコ企業が襲撃対象に>
チュニジアに始まり、エジプトへと波及した、中東・北アフリカ地域の長期政権に対する抗議デモは、近年これらの地域での経済活動を活発化させていたトルコ企業に厳しい状況をもたらしている。特にリビアでは、トルコ企業が襲撃を受けるなど、これまでにない状況となっており、政府は直ちに2機の救援機を派遣した。チャーラヤン貿易担当国務相は、東部のベンガジ、デルネでトルコ系建設企業3社が襲撃を受けたことを認め、7,000人以上が脱出を求めていると述べた。

カダフィ政権は、今回の騒動が外国による陰謀だとして、トルコ人をイスラエルの情報機関モサドのエージェントだなどと非難している。これまで友好的だった両国の関係が悪化し、このままでは現リビア政府、反政府側の双方から、攻撃を受けることになりかねない。ことの真偽はともかく、チュニジア、エジプトでの混乱からトルコの報道は、トルコ式の議会制民主主義が中東イスラム世界の新しいモデルだと喧伝(けんでん)しており、リビアをはじめとする各国は警戒感を強めていた。さらにリビアでは反政府側に統一した受け皿がみられないこともあり、抗議デモは無秩序にトルコ企業への襲撃にまで発展したようだ。

<建設業はリビアでの受注で発展>
トルコとリビアの経済関係は、貿易以上に、トルコ企業によるリビアでの建設活動が大きな意味を持つ。トルコの建設大手には、国際的に孤立していたリビアでの受注で発展した企業も多く、リョネサンス、ユクセル、STFA、テクフェン、ギュリシュなどの大手を含め200社近い企業が進出している。これらの企業は1973年以来、約300億ドル、2005〜10年の6年間で150億ドルをそれぞれ受注している。

貿易では、08年からの2年間で対リビア輸出が80.1%増と、中東・北アフリカ地域ではエジプトに次ぐ増加率となっており、新たに開発した輸出市場の1つといえる(表参照)。

両国の貿易は、06年まではリビアからの石油輸入が大きかったこともありトルコ側の入超が続いていたが、07年から石油の輸入が激減し、出超に転じた。これはトルコでバクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプラインの稼働が始まったことによる。輸出は、建設需要による鉄鋼、鉄鋼製品のシェアが大きく、プラスチック、機械類が続く。このため、建設部門の動向次第では輸出にも大きな影響が出ると懸念されている。

リビアとの貿易額の推移

(中島敏博)

(トルコ・リビア・中東・北アフリカ)

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