再考迫られる日本企業のポジショニング−中韓企業躍進への対応−

(ケニア)

ナイロビ発

2010年03月26日

中国企業は、公共工事や援助案件の入札を中心に存在感を発揮してきた。最近では、トラックを中心に自動車販売も手掛ける。販売台数が伸びている二輪車でも中国製が強い。一方、韓国企業は、家電製品で圧倒的な強さをみせ、日本企業は韓国企業の後塵を拝している。巻き返しには、ブランド構築か、廉価品の投入かの選択が必要だ。ブランド構築には多額の費用を要し、廉価品市場では中国企業が背後に迫る。

<中国勢同士が競争する公共工事>
中国企業は、ケニアとの良好な関係を背景に、電気・通信、資源探査などで、これまで攻勢をかけてきた(2005年12月19日記事参照)。中国企業の勢いは衰えておらず、公共工事や援助事業を圧倒的な低価格で落札する。

中国企業は、国の援助や融資を背景に、幹線道路の改修や病院建設、送電線の延伸(2009年12月4日記事参照)のほか、スタジアム改修なども請け負う。日本の援助でも、中国水利水電建設集団(シノハイドロ)が2007年、ソンドゥ・ミリウ・サンゴロ水力発電所建設事業を約52億円で落札した事例などがある。公共工事では、ケニアの国際玄関口、ジョモ・ケニヤッタ国際空港の拡張工事も落札している。ケニアに限らず、アフリカの公共工事は、今や中国企業同士の価格競争となっている。

<自動車・二輪車でも躍進>
自動車や二輪車でも、中国企業の躍進が目立つ。中国メーカーは、アフリカを金融危機の影響が少ない市場として重視しており、ダンプカーやトラックを中心に、代理店設置の動きが進む(表参照)。

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二輪車は、政府が08/09年度(08年7月〜09年6月)に、二輪車向け(排気量250cc以下)付加価値税(VAT、16%)を廃止した後に急増した(図参照)。日本勢も、トヨタ東アフリカが以前からヤマハを販売しており、08年には、ホンダが代理店(Ryce East Africa)を選定するなどの動きがある。しかし、中国メーカーの二輪車は、圧倒的な安さを武器に消費者を引きつけている。1台当たりの価格は、日本メーカーの9万〜12万ケニア・シリング(Ksh、1Ksh=約1.2円)に対し、中国メーカーは、5万〜8万Kshだ。

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<韓国企業は、家電に圧倒的強み>
韓国企業では、携帯電話端末や液晶テレビを販売するLGエレクトロニクスとサムスン電子の存在感が際立つ。05年ごろまでには、高機能製品を投入・宣伝し、高い技術力をアピールしてブランドの浸透を図っていた(新川俊一「アジア企業と南アフリカ企業の対ケニア・ビジネス」ジェトロ・アジア経済研究所、平野克己編[2006]『企業が変えるアフリカ』第8章p173)。この戦略が功を奏し、今や家電売り場では圧倒的な存在感を示している。クリスマスやイースター前後の祝祭日のほか、インド系住民の新年(ディワリ)やイスラム教徒の断食明け祭などの消費が盛り上がる時期には、韓国企業の積極的な販促活動が目立つ。

日本企業も手をこまねいているばかりでない。液晶テレビではソニーやパナソニックが代理店や販売店を通じて反転攻勢をかける。白物家電では、サンヨーが長年サンヨー・アムコとして事務所を構え、健闘している。東芝も09年にミツミ(Mitsumi)と代理店契約を締結、パソコンを売り込む。日立は、販売店サルート(Saluet)を通じて、冷蔵庫などでシェア拡大を目指している。

<中・韓に挟まれる日本企業>
中国・韓国企業の攻勢は、アフリカでは今に始まったことではない。バブル崩壊後、日本企業が体力を失ってアフリカから撤退した一方で、中国が世界の製造拠点として台頭し、アフリカを輸出市場としてとらえ、安価な消費財を供給してきた。海外の建設工事やインフラ整備にも、技術力をつけつつ、援助を活用しながら、積極的に取り組むようになった。

日本企業は、今や高度な技術が必要とされる案件でないと太刀打ちできない。自動車では、部品供給体制を含めた維持管理コストが重視されるため、日本企業に一日の長がある。しかし、二輪車は、日本企業がほかの市場で苦戦するように、中国メーカーが先行している。

韓国企業も、日本企業が撤退した中で着々と布石を打ってきた。世界での販売が間もない液晶テレビもケニアでいち早く投入したように、展開先市場の消費力を考えると、高機能に思える機種をも豊富にそろえてブランドイメージを確立してきた。

遅まきながら、アフリカに戻りつつある日本企業は、自社のアフリカでのブランド力を再考しなければならない。アフリカでは、日本製にブランド力がある。しかし、個別の日本メーカーがLGやサムスンほど、消費者に浸透しているかは疑わしい。ケニアでは、ソニーやパナソニックに加え、長年ケニアに拠点を持つサンヨーは広く知られている。だが、これら以外の浸透していないブランドは、韓国や日本のライバル企業以上に先進的な商品を投入してブランドを構築するか、アジアの工場で機能を絞って生産した廉価品を供給して市場に訴求していくかの選択を問われる。

購買力がより小さい市場(例えば、マダガスカル)では、家電も中国企業が席巻しており、廉価品市場に挑戦するにも、背後に中国企業が忍び寄っている。

(関隆夫)

(ケニア)

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