無印良品が中国本土に11店を増設−金融危機下の好調業種を探る−

(香港)

香港発

2009年03月23日

中華街が象徴する派手な商品が伝統的に好まれてきた中華圏でも、シンプルな無印良品の売れ行きが好調だ。無印良品香港の松崎暁社長は「香港での1〜2月の売上高は前年比2ケタの増加。2009年には中国本土で11店増やす」と話している。

<日本品質の商品を香港の見せ方で販売>
松崎社長によると、無印良品香港の1〜2月の売上高(注)は、既存店ベースでは前年同期を若干下回った。しかし、08年11月に新規開店したハーバーシティー店でテーブル、イスなどの家具が予想以上に人気を集め、新規店を加えると前年同期比2ケタ増になった。香港で特に売れているのは食品や文具で、「例えば、香港にある9店だけで、綿菓子、ユズ・キンカンの飴がそれぞれ1週間で1万個以上売れる。これは日本の344店の売り上げ合計よりも多い」という。

無印良品は、商品を現地化せず、日本で企画・開発している。香港市場では、日本の商品の品質は信頼されており、日本ブランドが確立している。同社の商品は、シンプルで使いやすい日用品で、素材・生産工程・包装すべての点で環境に配慮している。松崎社長は「中華圏でもシンプルで環境に優しい商品が受け入れられるようになった。豊かさの意味が変わってきたのではないか」と分析する。

香港の店は、世界の無印良品の中でも商品の見せ方が上手なようだ。松崎社長によると、商品の並べ方は、日本から届くマニュアルを基本としながら、香港人が現地に合うよう工夫する。例えば、無印良品の特徴である文具をアピールするため、日本式の2テーブルではなく3テーブル使って迫力のある売り場を作った。これは効果が大きく、日本本社(良品計画)の金井政明社長が、香港の店を視察したときに日本でも導入するよう指示したほどだ。クリスマスギフト・セットも、09年に香港で開催された無印良品の世界ギフト会議で、世界各国で香港式セットの導入を検討することになったという。

<中国本土の問題点は通関>
無印良品は、海外売り上げを08年2月期の約200億円から、11年2月期には倍の400億円にする計画だ。世界同時不況下でも比較的有望なアジア、特に中国本土で店舗網を拡大する。中国本土では「無印良品」「MUJI」が第三者によって商標登録されていたが、07年12月に裁判で勝って商標を取り戻すことができた。本土の不動産・ショッピングモール開発会社から「無印良品の香港の店と同じ店を作ってほしい」という依頼が数多くあるという。08年に上海1、北京3、南京1の計5店を展開した。09年には、上海に1店を既に追加しており、それに加えて10店の新設を目指す。

「中国は有望な市場だ。例えば、開店1週間のお客さま1人1回当たりの購買金額は北京2号店では365元(約4,300円。08年は1元=約12円)で、ニューヨーク店の34ドル(約3,500円。1ドル=約103円)を大きく上回っている」(松崎社長)。

中国本土の問題点は、商品の通関に時間がかかることだ。無印良品は、コストを削減するため、1つのコンテナ内に多様な商品を積み、コンテナの積載率を高めている。松崎社長によると、中国では約3,000アイテムを取り扱うが、中国各地の税関は、多くの種類の商品が詰まったコンテナの通関に慣れておらず、通関に最初は40日かかった。香港では約6,500アイテムを取り扱っているが、コンテナの通関にかかるのは1〜2日だけだという。

(注)香港では旧正月のある月に小売売上高が大きく増える。旧正月は、08年が2月、09年が1月だったため、実際の売れ行きの増減は1〜2月を合わせて前年同期と比べる必要がある。

(森田悟)

(香港)

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