ジョージアと中国の自由貿易協定が発効-「一帯一路」政策を背景に両国関係が強化-

(ジョージア、中国)

欧州ロシアCIS課

2018年01月15日

ジョージアと中国の間で1月1日、自由貿易協定(FTA)が発効した。今後5年間で両国の90%以上の品目の関税が撤廃される見込み。中国は「一帯一路」政策を背景にジョージアへ積極的に投資しており、今後、貿易と投資の両面で経済関係がさらに強化される。

両国の90%以上の関税を撤廃

1月1日に発効したFTAにより、両国間の関税の大部分が撤廃される。中国商務部によると、同日付でジョージア側でかかる中国製品への関税品目の96.5%が即時撤廃された。中国のジョージア向け輸出額の99.6%をカバーする。一方、中国側はジョージア製品への関税の90.9%の品目を即時撤廃し(ジョージアの対中輸出額の42.7%)、今後5年間でさらに3.0%(51.1%)を撤廃する。FTAの原文は中国商務部のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる(中国語と英語)。同FTAに係る原産地証明は、ジョージア側がジョージア税関、中国側は国家質量監督検験検疫総局に所属する各地方の出入境検験検疫局、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)およびその地方分会が発行する。

今回の合意では、ジョージアの主要産業である農業分野に影響が出ないよう、牛肉、羊肉およびその食肉加工品、ナッツ類や野菜類、酒類の一部やたばこ製品などは関税撤廃の対象外。また、中国側では小麦、コメ、綿花、羊毛、たばこ類、木材製品、紙製品の一部などが対象外とされた。

中国政府は、本FTAを「一帯一路」政策推進の重要な一歩と説明している。ジョージアのクビリカシビリ首相は2017年12月27日、FTAについて「2018年の間には合意の成果を感じられると確信している。FTA発効前からこの合意の影響は出始めている。2017年には7万本のジョージアワインを中国へ輸出した。ジョージア産農産品の輸出供給先の多様化は、リスク分散の観点から非常に重要」と述べ、同FTAの意義を強調している。

今回のFTAは2015年12月に交渉が開始され、2016年10月には内容について妥結。2017年5月13日に北京でFTA文書に署名、2018年1月1日から発効した。なお、ジョージアにとって中国は3番目の貿易相手国で、中国にとってジョージアは131番目の貿易相手国(いずれも2016年)。両国の主な貿易品目と金額は表1、2のとおり。

表1 中国の対ジョージア輸入
 表2 中国の対ジョージア輸出

ジョージア側はワイン輸出と中国からの投資に期待

今回のFTAのジョージア経済への影響については見方が分かれる。政府関連の投資ファンドであるジョージア・パートナー基金のダビド・サガネリゼ代表は「FTA合意で14億人の世界最大市場へジョージアのワイン、ミネラルウオーター、農産物を関税率ゼロで届けることができるようになる」と述べ、同国の主力産業である農産品にとっては輸出拡大への大きな好機と捉える。一方、経済学者のジア・クハシビリ氏は、ジョージアと中国の貿易はジョージア側の赤字幅が大きく(7億1,085万ドル、注)、「ジョージアと中国の経済水準は同じではなく、(経済発展段階が中国に比べて遅れている)ジョージアは中国製品に対し弱く、貿易のバランスを取る手段はない。中国製品の拡大は避けられない」とし、ジョージア国内の製造業への打撃は避けられないと指摘する。

ジョージア側はワインを中心とした自国産農産品の中国向けの輸出拡大のほか、中国企業によるジョージアへの投資拡大を期待している。「一帯一路」政策に関連し、既にジョージア西部の黒海に面したポチ港やアナクリヤ港で、中国企業が海上輸送ターミナルの拡張や隣接する自由工業区に向けた投資を行っている。新疆華陵工貿(集団)は1億7,100万ドルを投資し、首都トビリシ近郊に420ヘクタールの都市開発を行っている。前述のクハシビリ氏は、ジョージアがEUともFTAを締結していることに注目し、「(ジョージア政府は)中国企業が(製造業などの)実体経済分野に投資するように仕向け、ジョージアが東欧やロシア市場などへの輸出基地となるような戦略を取るべきだ」としている。

(注)2016年、グローバル・トレード・アトラス(中国側統計)による。

(高橋淳)

(ジョージア、中国)

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