アルバータ州、石油などの州外への輸送を制限する新法案を提出

(カナダ)

シカゴ発、米州課

2018年04月25日

カナダ産原油の約80%を産出するアルバータ州政府は、原油、天然ガス、および石油製品(ガソリン、軽油、ジェット燃料など)の州外への移送を制限できる新法案を4月16日に州議会に提出した。

キンダー・モルガンは、アルバータ州から、隣接するブリティッシュ・コロンビア(BC)州の太平洋沿岸に原油や石油製品を運ぶ唯一のパイプラインであるトランスマウンテン・パイプライン(TMPL)の輸送能力を現在の日量30万バレルから89万バレルに拡張する計画を2013年にカナダ政府に申請し、2016年には連邦政府がこれを承認している(2018年4月16日記事参照)。しかし2017年5月のBC州議会選挙で、TMPL拡張に反対する州政府が誕生(2017年7月13日記事参照)したことで、拡張工事が凍結状態に陥っている。新法案はこれに対抗する措置。

輸送規制でBC州のガソリン価格は上昇か

環境保護を前面に出すBC州政府が多くの許認可権を発動しているためTMPL拡張計画が遅延し、この結果カナダが多くの富と雇用を失っていると、アルバータ州政府は主張している。この問題に対処しエネルギー産業を守るため、アルバータ州政府は「カナダ経済繁栄保護法(Preserving Canada’s Economic Prosperity Act外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」案を州議会に提出した。

同法案が可決、公布されれば、原油、天然ガス、石油製品を州外へ輸送する事業者は、同州エネルギー長官から求めがあれば事前許可を得ることが必要となる。州外への輸送をエネルギー長官が制限する場合の主な判断基準としては、同州で産出される原油などの販売による利益を最大化するための十分なパイプライン輸送能力が存在していること、および将来にわたり州内で必要とされる原油などの供給を確保することがある。アルバータ州がBC州への石油の輸送を制限すれば、太平洋岸地域におけるガソリン価格は上昇するものとみられる。

(ピン・チー、上村真)

(カナダ)

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