海外発トレンドレポート
韓国で人気の日本産編み糸および·副材料
(韓国・ソウル発)
2022年9月26日
韓国で編み物が人気、背景に在宅時間増加や趣味の多様化など
今、韓国の若者の間で、「編み物」が人気だ。背景には、コロナ禍で外出を控え、休日を家で過ごす人が増えたことや、個人の趣味の多様化・高級化があるようだ。韓国で編み糸や副資材の製造・輸入・販売を手掛け、BtoCオンラインストアも運営するYARN-A(ヤナ)社に話を聞いた。
背景に在宅時間増加や趣味の多様化
「コロナを契機に人々が自宅で過ごす時間が増えたことから、ここ数年、若者の間で編み物の人気が高まっている」と話すのはヤナ社代表。同社のオンラインストアの購入層は主に20~30歳代、いわゆるMZ世代(主に1980年代半ばから1990年代前半に生まれた「ミレニアル(M)世代」と、1990年代後半から2000年代前半の間に生まれた「Z世代」の2世代)だ。さらに、編み物人気の理由として、「国民の全般的な所得水準の向上により、個人の趣味の多様化や高級化が進んでいる」ことも同社は指摘する。実際、MZ世代は他人との差別化を図るために趣味を始め、徐々に高価格帯の商品に手を伸ばしていく傾向があるという。彼らはインスタグラムをはじめとするSNSを通じてコミュニケーションを取り合い、趣味に関する情報を検索したり発信したりしている。
日本製の編み物グッズが人気
ヤナ社のオンラインストアの売れ筋商品は、セーターやベストを編むのに用いられ、編み物初心者向け材料であるウール・アクリル毛糸(販売価格:4米ドル前後)や、中上級者向け手編みのバッグ等に使われるチューブタイプのファブリックヤーン(同:25米ドル前後)等だという。高まる編み物人気を受け、同社は日本製品に注目する。「日本製の針や段数マーカー、目数リングなどの編み物グッズは、価格は高いものの、耐久性やデザイン性の点で愛用者が存在する。当社が運営するオンラインストアでも、これらの日本製品は売れ行きが好調だ」(ヤナ社代表)。ゆえに、今後も日本製の副資材の取り扱いを増やしたい考えだ。
ヤナ社が取り扱う輸入品のうち、高価格品は日本から、低価格品は中国やASEANから、中価格品はトルコ、オランダ、スペイン等から主に調達している。価格帯の傾向は、韓国の輸入統計からもうかがえる。例えば、合成繊維の染色編物糸(HSコード600632、「その他のメリヤス編物及びクロセ編物、浸染したもの」)の韓国における2021年の輸入額上位5か国を見ると、日本およびイタリアの輸入単価が高く、ベトナムおよび中国の輸入単価が低いのが分かる。
輸入相手国 | 輸入額(USD) | 輸入量(KG) | 1KGあたり輸入単価(USD) |
---|---|---|---|
ベトナム | 6,731,478 | 1,746,974 | 3.85 |
中国 | 4,677,580 | 934,260 | 5.01 |
日本 | 3,122,813 | 102,691 | 30.41 |
台湾 | 1,146,895 | 95,881 | 11.96 |
イタリア | 657,689 | 15,479 | 42.49 |
その他 | 319,869 | 21,332 | ― |
合計 | 16,656,324 | 2,916,617 | ― |
(出所:「Global Trade Atlas」を基にジェトロ作成)
韓国市場を目指すなら
ヤナ社代表は、現在、日本製品の取り扱いにおいてネックになっている点として、指定のディストリビューターを通じてしか購入できず価格が上がってしまう点や、直接取引においてはミニマムオーダー(最低数量)を課せられる傾向があり、在庫リスクを負うことに躊躇せざるを得ない点を挙げる。こうした点は、取引交渉において相互がどこまで譲るか守るかを見ながら話し合いが必要となろう。
なお、HS6006類の基本税率は10%だが、2022年1月に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定で関税撤廃または段階的な関税引き下げ対象となっており、日本から韓国へ輸出を目指す企業にとって有利となる。RCEPの利用方法については、ジェトロのウェブサイトや日本商工会議所のウェブサイト等を参照されたい。
参考情報
ヤナ社概要
- 所在地:
- ソウル特別市
- ウェブサイト:
- www.yarn-a.com
- 主な輸入品目:
- Yarn、編み物、副材料など
- 主な輸入国および取引額:
- 日本、中国、東南アジア、トルコ、スペイン、オランダなど、合計50万ドル程度
- 会社概要:
- 1997年創業。父の事業を引き継ぎ、2代目が経営を担う。編み糸や副材料の生産、輸入、流通事業を展開。2016年からオンラインストア「ヤナドットコム」(www.yarn-a.com)を運営。高品質・高価格のハイエンド商品を日本から、汎用品および低価格商品は中国およびASEAN、中間の価格帯商品はトルコ、オランダ、スペインなどヨーロッパから輸入している。
韓国の繊維関連国際展示会
1.プレビューインソウル2023
24回目を迎えるプレビューソウル2023は、エコ、リサイクル製品および機能性製品など繊維ファッション産業向け全商材を展示する国際見本市。
日時:2023年8月23日(水曜)~8月25日(金曜)
場所:COEX(ソウル所在)、B1ホール
規模:400社600ブース
展示品目:原糸、織物、ニット、副材料、繊維機械、衣類、アクセサリーなど
主催:韓国繊維産業連合会
2.大邱国際繊維博覧会(PID)
2022年で開催20回目。毎年3月頃に大邱EXCOで開催し、2022年は320社500ブース規模。主な展示品目は原糸、織物、ニット、副材料、環境にやさしい素材等で、22は大阪(日本)に大邱国際繊維博覧会(PID)ショールームを設置し、展示場とリアルタイムでつなぐオンライン商談を実施し、韓国企業27社と日本企業が商談を実施した。次回の開催は2023年3月予定。
- 作成
- ジェトロ・ソウル事務所
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- 本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所が委託先ECPlaza Network Inc. に作成委託し、2022年8月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびECPlaza Network Inc.は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびECPlaza Network Inc.が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。
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