日本産食材ピックアップ本格焼酎

原料の香り豊か。伝統的製法の「本格焼酎」

焼酎は、お酒の中でもウイスキーやブランデーと同じ「蒸留酒」です。大きく分けて、伝統的製法で造る「単式蒸留焼酎」と、明治期に生み出された比較的新しい製造方法の「連続式蒸留焼酎」の2種類があります。その単式蒸留焼酎の中でも、定められた原料を利用し、特定の基準を満たしたものを「本格焼酎」と呼びます。本格焼酎の原料としては、米・麦・甘藷・そば・黒糖のほか、牛乳や抹茶、ウーロン茶、トマトなど、50種類が国により認められています。

本格焼酎のアルコール度数は45度以下で、ロックやお湯割りにすると、原料独特の風味が楽しめるのが特長です。また、本格焼酎の中でも、原料に黒麹菌を用いた米麹と水のみで全麹仕込みをした沖縄県特産のものを「泡盛」といいます。本格焼酎はカクテルにも向いています。訪日外国人の利用が多いホテルのバーで認知度を高めようと、近年ではバーテンダーによる、本格焼酎を使ったカクテルコンペティションも開かれています。

一方、連続式蒸留焼酎は、アルコール度数は36度未満で、味わいにクセがなく、酎ハイやサワーなど、ほかの飲み物で割って飲むのにも適しています。最近では、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎に加えて「混和焼酎」という種類も登場しています。これは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎をブレンドしたもので、焼酎メーカーでは商品の表示について基準を設け、混合率や使用している原材料がわかるようにしています。

日本への伝来ルートに諸説あり

焼酎は、13~14世紀ごろには、中国大陸や南海諸国で製造されていたといわれています。日本への伝来ルートには諸説あります。代表的な三つを挙げると、一つ目は、貿易拠点であった15世紀ごろの琉球(現在の沖縄県)に、シャム国(現在のタイ)からもたらされたとする「琉球経路説」。二つ目は、14~15世紀ごろ、朝鮮半島や中国大陸沿岸などに進出していた倭寇(わこう)と呼ばれる日本の海賊が海上取引品として運んだとする「南海諸国経路説」。三つ目は、15世紀に交易品として朝鮮をはじめとする国々から、壱岐、対馬(いずれも現在の長崎県)を経て入ってきたとする「朝鮮半島経路説」です。

本格焼酎は500年余りの歴史があります。沖縄や九州では古くから生活に欠かせない飲み物で、本格焼酎にまつわる数々の話も語り継がれています。昔は酒を造るのは主婦の仕事で、酒造りの責任者を「杜氏(とうじ)」というのは、主婦を意味する「刀自(とじ)」に由来するといわれています。

麴菌は3種類。種類によって風味に変化

本格焼酎の製法は大きく分けて、麴を使い、単式蒸留機で蒸留する「もろみ取(とり)焼酎」と、酒粕(かす)を使い、セイロ式蒸留機で蒸留する「粕取(かすとり)焼酎」の2種類があります。世界に数ある蒸留酒の中でも、本格焼酎の特長といえるのが、この麴と酒粕の使用です。

特に麴は、近年海外からも注目を集めている日本の伝統的発酵食材で、麴をつくる麴菌にはでんぷんをブドウ糖に変化させる働きがあります。「もろみ取焼酎」の製造工程には、米や麦に麴菌を混ぜてもろみをつくる作業があります。麴菌には「黒麴菌」、「白麴菌」、「黄麴菌」の3種類があり、どれを使うかによって本格焼酎の風味が変わります。出来上がったもろみは発酵熟成させてから、単式蒸留機で蒸留します。単式蒸留の方法も2種類あります。常圧蒸留は昔ながらの伝統的方法で、原料本来の風味が楽しめます。減圧蒸留は新しい技法で、蒸留器内の気圧を低くすることで低温での蒸留が可能となり口当たりも軽やかな焼酎に仕上がります。

本格焼酎は、熟成年月を重ねるにつれて刺激性がなくなり、よりまろやかな味わいになります。ただ、ウイスキーやブランデーといった蒸留酒と違い、本格焼酎、とりわけ芋焼酎は、新酒でも楽しめるのが特長です。これは、うまみ成分の一つである、通称「高級脂肪酸エチルエステル類」が味をまるくしてくれるためです。11月1日は「本格焼酎&泡盛の日」として制定されていますが、これは、毎年8~9月ごろに芋焼酎の仕込みが始まり、11月1日前後から新酒が飲めることに起因しています。

糖質・プリン体ゼロ。二日酔いになりにくい酒

蒸留酒である本格焼酎や泡盛は、糖質やプリン体を含みません。芋焼酎を飲むと、ほんのりとサツマイモの甘みを感じますが、この甘みはイモの香りです。原材料から、アルコールと香りの成分だけを抽出しているため、サツマイモの糖質は含まれないのです。

本格焼酎は、ほかの酒類に比べて二日酔いになりにくい傾向もあります。これは、蒸留によって、余分な成分が除かれ、肝臓がアルコールを分解しやすくなるためです。さらに焼酎成分が血管に吸収されると、血管内で固まった血栓を溶かす酵素が出され、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の予防にもつながるといわれています。さらに、南日本新聞(2020年1月25日)によれば、黒糖焼酎といも焼酎には、老化を抑えるホルモンと同じ作用をする物質が含まれていることも報じられています。ただ、そうは言ってもお酒。飲み過ぎはかえって逆効果になってしまうため、適量が大切です。

世界に認められた九州・沖縄の特産ブランド

健康志向の流れで、本格焼酎は2000年代前半にブームとなり、03年には焼酎全体の出荷量が日本酒を上回りました。全国の焼酎メーカーの売上高上位50社の本社所在地は、九州・沖縄に集中しています。鹿児島県が21社と最多で、宮崎県が5社、大分県と沖縄県がそれぞれ4社と続きます(帝国データバンク2018年)。

日本の焼酎は海外にも輸出しています。主要な輸出先は中国、アメリカ、そして台湾です(2018年財務省貿易統計)。九州・沖縄で醸造される「壱岐焼酎」「球磨焼酎」「薩摩焼酎」「琉球泡盛」は、シャンパンやスコッチのように、世界貿易機関(WTO)によって「地理的表示」の対象となり、国際的ブランドとして保護されています。日本でも特許庁が地域ブランドの育成をめざしており、「大分麦焼酎」「宮崎の本格焼酎」「奄美黒糖焼酎」「博多焼酎」などが、「地域団体商標」として認定されています。