日本産食材ピックアップ「抹茶」

伝統からモダンまで幅広く活躍

日本の食事や文化を代表する「日本茶」には、さまざまな種類がありますが、その中でも「抹茶」は独自の地位を占めています。煎茶や玉露などの多くの日本茶が茶葉の形状を残しているのに対して、抹茶は微粉末に加工されているのが大きな特徴です。

通常は、抹茶をお湯に溶いて飲みます。美しい緑の色彩と、深く上品な香り、苦みの中にもまろやかな甘みを持つ濃厚な味わいを楽しむことができ、国内外に多くの愛好者がいます。飲み方の作法は、日本の伝統文化である茶道と深い関わりを持っています。一方で、料理やお菓子作りに使用するなど、使い勝手が良いのも長所です。伝統からモダンまで、あるいは東洋から西洋まで、幅広い文化に対応できるお茶だと言えるでしょう。

日本のオリジナル製法、有機抹茶も人気

抹茶の原料は、直射日光を遮って育てた茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させてつくった碾茶(てんちゃ)です。ここから葉脈や茎を取り除き、石臼で挽いて粉末状にして抹茶が製造されます。近年では、石臼で挽かずに粉砕機で加工したものも抹茶に含まれる場合があります。碾茶以外の原料を使って粉末にしたものは、抹茶ではなく「粉末茶」の定義に含まれますが、ブレンド茶などの食品に加工用抹茶として使用されています。

抹茶は、京都府、愛知県、静岡県で多く生産され、京都府宇治市と愛知県西尾市は伝統的に名産地として知られています。茶畑で丹念に育てた茶葉を丁寧に摘み、手間と時間をかけてつくりあげた抹茶は、他にはない繊細な味と香りを醸し出します。米国やEUと同等の国際基準である「有機JAS制度」で認定された有機栽培の抹茶も増えており、安心・安全でおいしい日本の抹茶は、今後さらに世界へと広がることが期待されています。

日本の社会とともに歩んできた歴史

日本では1000年以上前からお茶が飲まれていたという記録がありますが、現在の抹茶を伝えたのは、12世紀の僧侶、栄西だとされています。宋(当時の中国)から茶の種を持ち帰った栄西(1141-1215)は、『喫茶養生記』を著して抹茶の製法や飲む作法などを啓蒙し、「茶は養生の仙薬なり」と身体への効能も説きました。16世紀には千利休(1522-1591)らの茶人によって茶道が確立され、武家社会にも茶の習慣が定着します。

19世紀後半にアメリカなどとの貿易が始まると、日本茶が主要な輸出品目となり、全国で生産が拡大します。一般市民でも手軽に抹茶が楽しめるようになり、現在では日本人の暮らしにとって身近な存在です。

おいしい飲み方と茶道の文化

抹茶の飲み方に決まりはありませんが、おいしく味わえるとされるのは、昔から伝わる飲み方です。茶碗に抹茶とお湯を入れ、茶せんを使ってかくはんして泡立てるのがスタンダードな手法で、「茶を点(た)てる」と言います。茶せんで泡立てた「薄茶(うすちゃ)」に対して、少量のお湯を使った「濃茶(こいちゃ)」は、茶せんで練って提供します。それぞれコツが必要ですが、慣れれば家庭でも簡単に楽しめます。

茶道は、茶を振る舞う所作や、茶器や茶室などの空間から成る様式で、簡素さを重んじる「わび」の精神とも深く結びついています。「茶の湯」の世界は奥が深く、日本固有の文化として受け継がれています。一般の家庭でも、客人をもてなす際には日本茶が供されるケースが多く、茶道の心得を受け継いだ「おもてなし」が、日本人の精神に今も根づいています。

茶葉の成分をそのまま摂取、デトックスやリラックス効果も

日本茶には健康や美容に良いとされる成分が多く含まれており、欧米ではデトックス効果を期待して飲む人もいます。低カロリーで、砂糖やミルクなどを加えなくてもおいしく飲むことができる、ヘルシーな飲み物と言えるでしょう。

日本茶の渋みを引き出す「カテキン」は、抗酸化作用など身体にとってプラスとなるさまざまな生理作用を及ぼすことが報告されている成分です。カテキンが多く含まれた日本茶の商品の一部は、体脂肪を気にする人向けの特定保健用食品として消費者庁に認められています。うま味と甘みを引き出す「テアニン」も注目されている成分で、苦みを引き立てる「カフェイン」とともに、気持ちをリラックスさせたい人が飲むのに適しています。

そして、抹茶は茶葉を丸ごと食するため、含まれた成分をそのまま身体に摂取することができるのです。日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、100gの抹茶に含まれる食物繊維は38.5g、ビタミンE(α-トコフェロール)は28.1mg、β‐カロテン当量は29000μg。これらは水に溶けないため、茶葉を捨てるタイプのお茶では摂取できず、抹茶だから摂取できる成分です。

スイーツやカフェなどに広がる抹茶の世界

抹茶は粉末であるという特徴を生かし、料理や菓子の素材などに広く使用されています。そばに混ぜた「茶そば」や、和菓子の「茶だんご」などはポピュラーな食べ物です。ケーキやクッキーの生地に練り込んでもおいしく、チョコレートやアイスクリームに風味を加えることもできます。牛乳に抹茶を溶かした「抹茶ラテ」は、若い女性を中心に支持されており、抹茶を使った新しいスイーツが次々と開発されています。

米国で大手カフェチェーンが抹茶を使ったメニューを販売し、フランスなども抹茶カフェがオープンするなど、カフェの文化においても「matcha」は定番のメニューとして浸透しつつあります。お茶づくりにこだわった日本ならではの高い品質の抹茶は、今後もさまざまな国や地域でニーズが高まることでしょう。