トランプ米大統領、H-1Bビザ審査の厳格化と手数料制度の延長を指示

(米国)

ニューヨーク発

2026年09月24日

米国のドナルド・トランプ大統領は9月18日、専門職(H-1B)ビザ申請に対する審査の厳格化および省庁間の連携強化を指示する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと、2025年に導入された10万ドルの手数料制度の延長を指示する大統領布告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名したと発表した。同日、ファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも発表した。

H-1Bビザは、専門的知識を要する職種において、米国の雇用主が外国人を雇用できる非移民ビザだ。今回の措置は、H-1Bビザ制度の乱用に対処し、米国の国家・経済安全保障および米国人労働者を保護することを目的に実施された。詳細は次のとおり。

  • 国務長官、労働長官および国土安全保障(DHS)長官は、H1-Bビザに関する各種申請・審査の際に、ビザスポンサーとなる雇用主が過去1年間に実施した、または今後予定している、同等職種の米国人労働者の雇用に悪影響を与える解雇について考慮すること。
  • 労働長官は本大統領令発効後30日以内に、賃金労働基準局を通じて、過去に提出された労働条件申請(LCA、注1)のデータのレビューを開始し、スポンサーとなる雇用主に対して追加措置を講じる必要があるかを判断すること。
  • 2025年9月21日から導入された「H-1B申請に対する10万ドルの手数料制度」を2027年9月21日午前0時(米東部夏時間)まで延長すること(注2)。

大統領布告では、H-1B制度の乱用により、賃金水準の低い外国人労働力の活用によって国内賃金に下方圧力が生じ、米国人労働者の賃金や雇用機会を損なっていると主張している。また、高度な技能を有する米国人を大量解雇した後、より低技能・低賃金のH-1B労働者を大量採用している事例があるとしたほか、一部のH-1Bスポンサーである雇用主によるアウトソーシング型ビジネスモデル(注3)の結果、多くの職務が米国外へ移転した事例を指摘した。

H-1Bビザの年間発給枠は6万5,000件で、米国の大学院で学位を取得した者には別途2万件が割り当てられている。トランプ政権はこれまでにも移民政策の引き締めを強化しており、2025年9月からH-1Bビザの新規申請に対し、雇用主に10万ドルの支払いを課す措置を導入した。またDHSは2026年2月から、H-1Bビザの発給に際して従来の抽選方式を廃止し、賃金水準を基準とする加重選抜制度を適用している。

今回の発表によると、10万ドルの手数料制度が2025年9月に開始されて以降、700件超の申請で手数料が支払われた。これまでの措置による成果としては、最大手ITアウトソーシング企業によるH-1B登録申請件数は92%減少し、領事館でのビザ処理申請件数は約97%減少した。他方、トランプ政権は、米国の修士号以上を有するH-1Bビザ受益者の割合が2026年から2027年にかけて21ポイント上昇したとし、高学歴人材の比率が上昇したことを成果としている。

ただし、H-1Bビザ取得に手数料を課すことに対しては、マサチューセッツ州連邦地方裁判所が2026年6月に無効判決を下した(2026年6月11日記事参照)。連邦政府は現在控訴しており、今後の審理の行方次第では法的効力に不確実性が残る。また、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の経済プログラムでディレクターを務めるフィリップ・ラック氏と、元フェローのティボー・ドゥナミエル氏は、10万ドルの手数料は既存の大企業を有利にし、起業家や新興企業の成長を阻害する政府介入であるという見解に加えて、ペンシルベニア大学での研究結果を基にH-1Bが取得できなかった企業ほど、国内の採用を調整するのではなく、外国の関連会社での雇用を増やす傾向があるとの見方を示した。

(注1)Labor Condition Applicationの略。H-1B申請に先立ち雇用主が労働省賃金労働基準局(Wage and Hour Division、WHD)に提出する書類。

(注2)2025年9月19日の大統領布告によって発令された本制度は、延長が宣言されない限り、発効日から12カ月後の2026年9月21日午前0時を当初の失効日としていた。

(注3)米国では従来、一部の企業がIT受託開発や人材派遣型サービスといったアウトソーシング業務を受託し、H-1Bビザ保有者を顧客企業に配置して母国との調整役を担い、その後、最終的に海外拠点へ業務を移管するビジネスモデルを利用しているとの批判がある。大統領布告では、こうしたモデルを問題視している。

(清野華蓮)

(米国)

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