米GM、月探査プログラム「アルテミス計画」に参画
(米国)
ニューヨーク発
2026年06月01日
米国自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)は5月26日、米国航空宇宙スタートアップのルナ・アウトポスト(Lunar Outpost、本社:コロラド州ゴールデン市)が開発する有人月面探査車(LTV)「ペガサス(Pegasus)」向けに、月面環境対応のバッテリー技術を提供すると発表
した。米国航空宇宙局(NASA)の月探査計画「アルテミス(Artemis)」向け車両の一部として活用される予定で、自動車メーカーによる宇宙関連事業への参画事例として注目される。
NASAの発表
によると、アルテミス計画では、2022年に新型メガロケット「SLS」と宇宙船「オリオン」の無人テスト飛行を完了し、2026年4月に4人の宇宙飛行士を乗せた月周回、地球帰還テスト飛行を成功させた。今回のペガサスは、2028年に計画されている有人月面着陸ミッションで利用される見込みだ。
ペガサスは手動・自律・遠隔操作による走行が可能な電気自動車(EV)だ。時速9マイル(14.48キロメートル)以上の速度で走行する。同車は極端な温度変化や暗闇、起伏の激しい地形などの課題を抱える月の南極地域(注1)での運用が想定されている。そのため、利用されるバッテリーは過酷な環境下でも稼働可能な技術の開発が求められる。GMの完全子会社で、今回技術提供を担うGMディフェンス(本社:首都ワシントン)のスティーブン・デュモン社長は、「地球上の厳しい走行環境向けに構築したGMの電動化技術を宇宙向けバッテリーへ適応させることは、特別な技術的挑戦だ」とコメントした。
世界経済フォーラムの報告(2024年4月)
によると、世界全体の宇宙開発事業の経済規模(注2)は2023年に6,300億ドルだったところ、2035年には1兆8,000億ドルまで拡大する見込みだ。GMは1960~1970年代のアポロ計画でも、月面探査車向けに車輪やサスペンション、操舵(そうだ)、駆動系などを供給した実績を有する。今回の取り組みでは、EV向けに培った電動化技術を、宇宙用途へ応用するかたちとなる。
日系自動車メーカーでは、トヨタ自動車もアルテミス計画を見据え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と有人月面探査車「ルナクルーザー」
を開発している。また最近では、ホンダの米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターが2025年9月に、宇宙関連民間企業の米アストロボティック(Astrobotic Technology)と共同開発契約を締結
した。燃料電池自動車(FCV)の開発を通じて培ってきた高圧水電解システムや水素発電の技術を活用し、月面での夜間の電力供給システムを実現させる見込みだ。自動車メーカーが電動化や燃料電池、自律走行などで培った技術の宇宙用途への展開が進むか、今後の動向が注目される。
(注1)月面の南極は日照下で摂氏約54度、一部クレーターではマイナス203度となることに加え、大気が極めて薄く、放射線や微小隕石(いんせき)の衝突にさらされる、人や機械の滞在には困難な地域。
(注2)宇宙空間で提供される製品やサービス、および、それらにより地上で成立する産業、経済活動の総額。
(大原典子)
(米国)
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