ロシアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は1.0%と前年に比べ減速した。
  • 西側との関係ではロ米首脳会談が実現したが、原油輸出を阻む制裁が強化された。
  • 対内直接投資は4年ぶりに流入超過。欧米企業が撤退する中、中韓企業が新たに進出した。
  • 日本からの輸出、直接投資が増加に転じたが、現地の日系企業は現状維持傾向が強まる。

公開日:2026年8月14日

マクロ経済

高成長から一転、厳しい1年に

2025年のロシアの実質GDP成長率は1.0%だった。2023年と2024年にそれぞれ4.1%、4.9%と2年連続で高成長を遂げたものの、2025年は原油価格の下落や高金利政策などが足かせとなり、経済は減速した。

鉱工業生産の伸びは前年を3.8ポイント下回る1.3%増だった。これまで成長を牽引してきた製造業が3.6%増となり、前年の9.1%から伸び率を大きく落とした。製造業の内訳を見ると、コンピュータ・電子・光学機器は前年比11.7%増とプラスを維持したものの、前年(26.4%増)の勢いは失われた。電気機器と自動車・トレーラーはそれぞれ3.8%減、23.1%減とマイナスに転じた。その一方で、自動車以外の輸送機器は前年の27.8%の伸びが一層加速し、2025年は32.0%増を記録した。ロシア経済発展省は航空機や鉄道、造船のほか、国防関連の調達が好調であったためと説明している。

固定資本投資は大幅に落ち込んだ。2023年の9.8%増、2024年の8.4%増から一転、2025年は2.3%減となった。分野別に見ると、鉱業向けは前年の7.4%増から0.5%減に転じた。製造業のうち、前年特に好調だったコンピュータ・電子・光学機器向け(58.3%増)は2025年に20.5%減となり落ち込みが顕著だった。これまで高成長を続けてきた建設向けも0.3%増と、前年の6.6%増から大きく低下した。

主要経済指標が総じて悪化する中、2025年の実質可処分所得は7.4%増と、前年の伸び率(8.2%)に近い水準を維持した。労働需給逼迫による賃金の上昇、高金利下での預金に対する利息収入増などが背景として挙げられる。人手不足については引き続き深刻な状況にある。歴史的低水準が続く失業率は2025年に2.2%となり、前年の2.5%からさらに低下した。

2025年のロシア経済のポジティブな面を挙げると、物価上昇の鈍化がある。2024年に前年12月比で9.5%と高水準にあったインフレ率は2025年に5.6%まで低下した。ロシア中央銀行(以下、中銀)はインフレの抑え込みを目的に2024年10月に政策金利を21%まで引き上げていた。しかし、経済界からの不満の噴出、さらに物価上昇の落ち着きなどを背景に2025年6月以降、継続的に利下げを実施している。同年12月の金融政策決定会合では政策金利が16.5%から16%に引き下げられた。

財政赤字は5兆6,256億ルーブル(約11兆円。1ルーブル=約2円)に上り、4年連続の赤字となった。財政赤字のGDP比は前年の1.7%から2.6%に拡大した。財政が厳しさを増す中、政府は相次いで税制の見直しを行っている。2025年1月から企業利潤税(法人税)の税率を20%から25%に引き上げた。さらに、個人所得税の累進課税も強化したほか、特定の条件を満たす中小企業向けの簡易税制の適用要件が厳格化された。

表1 ロシアの主要経済指標(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。財政収支のGDP比は、連邦政府ベース。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 4.1 4.9 1.0 1.3 1.0 0.8 1.0
最終消費支出 7.4 5.5 2.9 3.5 2.6 2.6 3.0
総固定資本形成 11.0 8.6 △ 0.4 7.0 0.6 △ 0.5 △ 4.2
財・サービスの輸出 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
財・サービスの輸入 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
鉱工業生産 4.3 5.1 1.3 0.1 1.5 1.2 2.3
農業生産 0.2 △ 3.3 4.9 0.6 1.4 3.8 12.0
固定資本投資 9.8 8.4 △ 2.3 6.5 △ 1.0 △ 4.3 △ 5.3
貨物輸送 △ 0.6 0.5 △ 0.7 △ 1.3 0.7 △ 1.7 △ 0.5
小売売上高 8.0 7.7 2.6 2.6 1.6 2.1 4.0
実質可処分所得 6.1 8.2 7.4 7.1 10.1 7.7 5.8
財政収支のGDP比 △ 1.9 △ 1.7 △ 2.6 △ 4.1 △ 2.9 △ 0.2 △ 3.5

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。財政収支のGDP比は、連邦政府ベース。

〔出所〕連邦国家統計局、財政収支のGDP比のみ統計局および財務省資料からジェトロ作成。

貿易

原油、ガスの輸出減で貿易黒字が縮小

連邦税関局によると、2025年のロシアの貿易(通関ベース)は、輸出が前年比3.7%減の4,183億1,800万ドル、輸入は1.4%減の2,789億6,500万ドルだった。貿易黒字は2024年と比べ122億9,300万ドル減り、1,393億5,300万ドルとなった。

連邦税関局はウェブサイト上で2022年2月分以降の貿易統計の公表を停止した。2023年3月に一部統計の公表を再開したが、大分類での品目別および地域別の輸出入額のみにとどまっている。

品目別で見ると、輸出では原油や天然ガスを含む鉱物製品が前年比14.8%減となった。アレクサンドル・ノワク副首相は現地報道の中で、2025年の原油輸出量は0.8%減の2億3,800万トンと明らかにした。うち94%が中国、インド、中南米、アフリカといった「友好国」向けだった。食料品・農産品は4.1%減だった。主要産品である穀物の世界的な供給過剰による価格下落の影響を受けた。

表2 ロシアの品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
食料品・農産品(繊維を除く) 42,635 40,899 9.8 △ 4.1 37,702 43,363 15.5 15.0
鉱物製品 264,584 225,300 53.9 △ 14.8 4,477 4,153 1.5 △ 7.2
化学品・ゴム 27,626 33,588 8.0 21.6 53,470 55,489 19.9 3.8
皮革・同製品 190 210 0.1 10.5 1,021 1,182 0.4 15.8
木材・パルプ製品 10,114 10,606 2.5 4.9 3,206 3,154 1.1 △ 1.6
繊維・同製品・靴 2,300 3,430 0.8 49.1 18,104 18,304 6.6 1.1
貴石・金属および同製品 63,652 74,709 17.9 17.4 17,941 17,710 6.3 △ 1.3
機械・設備・輸送用機器、その他の物品 23,370 29,577 7.1 26.6 146,906 135,610 48.6 △ 7.7
合計 434,471 418,318 100.0 △ 3.7 282,825 278,965 100.0 △ 1.4

〔出所〕連邦税関局

地域別で見ると、欧州とアジアとの貿易額が減少し、米州との貿易額が増加した。

表3 ロシアの主要地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
欧州 68,715 57,382 13.7 △ 16.5 73,066 72,274 25.9 △ 1.1
アジア 329,411 326,016 77.9 △ 1.0 191,002 185,908 66.6 △ 2.7
アフリカ 24,267 22,691 5.4 △ 6.5 3,474 4,380 1.6 26.1
米州 11,896 12,060 2.9 1.4 14,762 16,290 5.8 10.3
オセアニア 6 6 0.0 3.6 123 110 0.0 △ 10.1
合計(その他含む) 434,471 418,318 100.0 △ 3.7 282,825 278,965 100.0 △ 1.4

〔出所〕連邦税関局

ロシアの貿易を相手国側から見ると、中国の対ロシア輸出は前年比10.2%減の1,034億5,900万ドル、輸入は4.6%減の1,239億4,200万ドルとなった。輸出では乗用車、貨物自動車、自動車部品が減少した。ロシアの自動車市場や輸送需要の縮小、並行輸入された西側ブランド車の販売増により、中国ブランド車の販売が減少した。輸入では全体の4割を占める原油が21.7%減となった。液化天然ガス(LNG)は好調で、ロシア政府系ガス最大手ガスプロム(Gazprom)によるパイプライン「シベリアの力」を通じた供給量が24.8%増の388億立方メートルとなった。

インドの対ロシア輸出は前年比8.9%減の44億8,200万ドルだった。2024年に増加したコンピュータ関連機器が減少に転じた。輸入は10.4%減の591億6,600万ドルで、原油の減少がこれに寄与した。ロシア産原油を購入する同国に対して米国が2025年8月から2026年2月まで課した追加関税と、2025年10月に米国が発動したロシアの石油大手ロスネフチ(Rosneft)とルクオイル(LUKOIL)および関連会社に対する制裁が影響し、インド側がロシアからの調達を手控えたためだ。

EUの対ロシア輸出は前年比12.9%減の278億6,700万ユーロ、輸入は23.0%減の279億2,800万ユーロだった。輸出入ともほぼ全ての主要商品で減少した。特に、ガス状の天然ガスの輸入量が31.5%減少した。ウクライナが、同国を経由したロシア産ガスの欧州向けパイプライン輸送契約を2024年末に打ち切ったことが影響した。

米州ではブラジルの対ロシア輸出が前年比5.0%増の15億2,300万ドルとなった。冷凍牛肉、コーヒーが増加した。米国の対ロシア輸出は12.2%増の5億9,300万ドルだった。ワクチン、分析機器、医薬品が増加した。輸入は26.1%増の37億9,300万ドルだった。窒素肥料、濃縮ウランが増加した。米国は2024年8月にロシア産低濃縮ウランの輸入を原則禁止したが、代替供給がない場合、2027年末まで数量を限定して例外的に輸入を認めている。

ロシアは西側諸国による金融制裁を回避するため、貿易決済で自国の通貨ルーブルや「友好国」通貨を使う比率を高めている。中銀の統計によると、2025年の財・サービス輸出におけるルーブルまたは友好国通貨建て決済比率は85.6%と前年比4.2ポイント上昇した。ウクライナ侵攻前の2021年は15.4%だった。財・サービス輸入では6.9ポイント上昇の85.0%だった。2021年は32.4%だった。

通商政策

米国との対話再開も大きな進展なし、EUとは関係悪化が続く

ロシアがウクライナ侵攻を続ける中、西側諸国は対ロシア経済制裁を継続した。EUは2025年2月、侵攻から3年となったタイミングで第16弾の追加制裁を採択し、ロシアからの輸入禁止品目に新たに同国産アルミニウムを追加した。5月の第17弾では、EU域内港湾へのアクセスやサービス提供の禁止対象となる「影の船団」に属する船舶の指定を拡大した。これらの船舶はロシア産石油製品に対する上限価格規制の回避に利用されている。7月の第18弾ではロシア産原油に対する上限価格をそれまでの1バレル当たり60ドルから47.6ドルに引き下げ、続く10月の第19弾でロシア産LNGについて短期契約に基づく輸入を2026年4月25日から、長期契約による輸入の場合は2027年1月1日からそれぞれ禁止にすることとした。ロシアとEUの首脳間に直接対話はなく、EU域内のロシアの凍結資産の問題などもあり、両者の関係は悪化の一途をたどった。

その一方で、米国とは関係に変化が生じた。米国との直接対話は2024年までは途絶えていたが、2025年1月の第2次トランプ政権発足を契機に対話が再開した。ロシアはウクライナとの和平交渉における米国の役割を高く評価し、紛争解決への期待が膨らむ1年となった。自国通貨ルーブルが年間を通じて大きく上昇した背景の1つにこうした停戦・終戦実現への期待感があったとみられる。8月にはアラスカ州アンカレッジでウクライナ紛争の解決を目的とするロ米首脳会談が開催された。対面での両首脳の会談は2021年6月にスイスのジュネーブで行われて以来4年ぶりとなった。紛争終結に向けた具体的な合意には至らなかったものの、両首脳は交渉の結果を前向きに評価した。ただ、両者の関係は一貫して改善している状況にはない。2025年10月、米国財務省はロシアの停戦努力の欠如を理由に、ロシアの石油大手ロスネフチとルクオイルを金融制裁の対象となる特別指定国民(SDN)に指定した。

西側諸国との関係が安定しない中、ロシアは引き続き中国やグローバルサウスとの関係強化を図っている。ウラジーミル・プーチン大統領は2025年8月31日から9月3日にかけて中国を訪問し、ロ中首脳会談などに出席した。ロシア側発表によると、モンゴルの首脳も交えた会談を経て、同国から中国に延びる計画のガスパイプライン「シベリアの力2」などの建設に関する法的拘束力のある覚書が締結された。同年12月にはプーチン大統領はインドを訪問し、ナレンドラ・モディ首相と会談した。両首脳は「特別で特権的な戦略的パートナーシップ」の関係を再確認し、政治や防衛、原子力などの分野における相互協力を引き続き進めることを宣言した。会談後の共同声明では、ロシアが主導する関税同盟「ユーラシア経済連合(EAEU)」とインドとの間での自由貿易協定(FTA)締結に向けた共同作業の実施について言及があった。EAEUは近年、中東・アジアへの接近が顕著である。2025年5月にはイランとの間で既存の暫定協定に代わり恒久的なFTAが発効したほか、2025年6月にアラブ首長国連邦(UAE)との経済連携協定、モンゴルとの暫定貿易協定、12月にインドネシアとの間でFTAへの署名がそれぞれ完了した。

西側諸国からの経済制裁に対するロシアの対抗措置は続いており、特定品目の輸出入禁止や制限、特定の非友好国・地域の商品を対象にした差別関税などの措置が2027年末まで延長された(2025年9月17日付大統領令第657号)。一方、「非友好国」を含む外国からの投資を呼び込もうとする動きがみられた。2025年7月1日付大統領令第436号によって証券投資を行う外国人投資家の権利保証制度が導入された。また、2025年7月31日付連邦法第285-FZ号および同第286-FZ号に基づいて、極東連邦管区に設置される国際優先的発展区域の制度が創設された。

対内・対外直接投資

西側企業の完全撤退進む中、中韓企業が投資拡大

中銀の直接投資統計(国際収支ベース、ネット、フロー)によると、2025年の対内直接投資は229億3,100万ドルで、4年ぶりの流入超過となった。2025年末の対内直接投資残高は前年末比20.5%増の3,106億5,900万ドルだった。2025年の国・地域別、業種別の統計は昨年に引き続き公表されていない。

ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2022年2月24日以降、西側諸国の企業は相次いでロシア市場からの撤退、およびロシアにおける事業・資産を整理すると表明しているが、2025年もその傾向は継続した。

スイスの重電大手ABBは2022年7月、ウクライナにおける紛争と関連する国際制裁を理由に、ロシア市場からの撤退を表明した。ロシアによるウクライナ侵攻以降、新規受注を停止し、現地顧客との既存契約上の義務を少数履行していた。2025年5月、大統領令によってロシアのコンセプト・インベスト(CONCEPT INVEST)がABB現地法人の全株式の取得を許可された。スウェーデンの衣料品大手エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は5月にロシア法人の清算を完了した。同社は2022年11月末までにロシア国内の全172店舗を閉鎖、2024年6月に法人の清算を決定していた。リトアニアメディアの「15min」(2025年12月31日)によると、同国の換気装置メーカーのコンフォベント(Komfovent)は2025年12月、首都モスクワの南東に位置する都市リャザンに有する工場をロシアのベンタルト・グループ(Ventart Group)に売却した。売却代金は凍結されているという。同社はロシアによるウクライナ侵攻以降、工場への部品供給を停止し、買い手を探していた。米国のシティグループ(Citigroup)は2026年2月、ロシア子会社を同国の投資銀行であるルネサンス・キャピタル(Renaissance Capital)に売却を完了し、完全にロシア市場から撤退したことを発表した。同社は2021年4月に個人向けビジネスからの撤退を発表し、2022年3月に他の事業からの撤退も決めた。2025年11月、大統領令によって当該取引が許可された。

2025年にロシアへの投資を発表した企業については、非友好国に分類される韓国企業が含まれた点が注目に値する。韓国の菓子メーカー、オリオン(Orion)は4月、ロシアに2,400億ウォンを投資することを発表した。中長期的なグローバル成長基盤構築の一環だ。ロシア法人の売上高が6年連続で2桁成長を続けており、主力商品チョコパイの供給が需要に追い付いていないため、現地のトベリ工場を拡張し、生産を拡大させる。中国の電気機器大手の正泰集団(CHINTグループ)は11月、ロシア初の生産拠点をモスクワ州ポドリスクに開設することを発表した。ロシア政府からの現地生産化の要請に応じたもので、初期投資額は1億ルーブルと公表されている。

2025年の対外直接投資は105億7,700万ドルだった。2025年末の対外直接投資残高は前年末比11.0%増の3,014億6,800万ドルだった。国・地域別、業種別の統計は発表されていない。

表4 ロシアの対内・対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2024年 2025年 2025年末
残高
金額 金額 伸び率
対内直接投資 △ 9,350 22,931 310,659
対外直接投資 △ 170 10,577 301,468

〔出所〕ロシア中央銀行

表5 ロシアから撤退を発表した主な企業の事例
業種 企業名 国籍 時期 金額 概要
物流 陽明海運
(Yang Ming Marine Transport)
台湾 2025年1月 2025年1月にロシア法人の清算を完了。同社は2022年2月25日、オデーサおよびノボロシースク発着便の予約を停止した。2023年8月、取締役会にてロシア法人の清算を決定した。
換気設備 コンフォベント
(Komfovent)
リトアニア 2025年12月 リトアニアメディアの15min(2025年12月31日)によると、同国の換気装置メーカーのコンフォベントは、首都モスクワの南東に位置する都市リャザンに有する工場をロシアのベンタルト・グループ(Ventart Group)に売却した。売却代金は凍結されている。
資源 グレンコア(Glencore) スイス 2025年4月 スイスの資源大手グレンコアは、100%子会社のランベロホールディング(Rambero Holding)を通じてロシアの石油会社ルスネフチ(RussNeft)の授権資本の16.33%(普通株式の31.28%)を保有していたが、2021年末に株式売却に合意していた。非友好国の投資家に対する取引制限により実行できていなかったが、2024年2月に大統領令によって当該取引が許可された。複数の報道によれば、2025年4月にドバイのOCNインターナショナル(普通株式の16.33%を取得)、ルスネフチの子会社のベーリエ・ノーチ(Belye Nochi 、普通株式の17%を取得)が新たな株主となった。OCNインターナショナルは同年7月、ルスネフチの株式を売却した。
金融 ゴールドマンサックス
(Goldman Sachs)
米国 2025年4月 ロシア子会社をアルメニアの投資ファンドであるバルチュグ・キャピタル(Balchug Capital)に売却。2025年1月に大統領令によって取引が許可された。
重電 ABB スイス 2025年5月 2022年7月、ウクライナにおける戦争と関連する国際制裁を理由にロシア市場からの撤退を表明した。2025年5月、大統領令によってロシアのコンセプト・インベスト(CONCEPT INVEST)がABB現地法人の全株式の取得を許可された。
小売り エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M) スウェーデン 2025年5月 ロシア法人の清算を完了。2022年11月末までにロシア国内の全172店舗を閉鎖していた。
金融 シティグループ
(Citigroup)
米国 2026年2月 2026年2月、ロシア子会社を同国の投資銀行であるルネサンス・キャピタル(Renaissance Capital)に売却を完了し、完全にロシア市場から撤退したことを発表。2025年11月、大統領令によって当該取引が許可された。

〔出所〕各社発表、現地政府発表および報道などから作成

表6 ロシア政府の管理下に置かれた主な企業の事例
業種 企業名 国籍 時期 金額 概要
断熱材 ロックウール
(ROCKWOOL)
デンマーク 2025年12月 2025年12月31日付の大統領令により、デンマークの断熱材メーカーであるロックウールのロシア子会社「ロックウール(ROCKWOOL)」および「ロックウール・ボルガ(ROCKWOOL-VOLGA)」の68%株式は、「ラズビーチエ・ストロイチェリニフ・アクチボフ(Construction Assets Development)」の一時的な管理下に置かれた。
アルミニウム容器 カンパック
(CANPACK)
ポーランド 2025年12月 2025年12月31日付の大統領令により、ロシア法人および包装工場の全株式が「スターリエレメント(Steel Element)」の一時的な管理下に置かれた。

〔出所〕各社発表、現地政府発表および報道などから作成

表7 ロシアへ進出・投資拡大した企業の事例
業種 企業名 国籍 時期 金額 概要
食品 オリオン
(Orion)
韓国 2025年4月 2,400億ウォン 中長期的なグローバル成長基盤構築の一環で、ロシアには2,400億ウォンを投資し、既存のトベリ工場を拡張し、年間生産量を2倍にする計画を発表した。
電気機器 正泰集団
(CHINT Group)
中国 2025年11月 1億ルーブル ロシア初となる生産拠点をモスクワ州ポドリスクに開設することを発表。初期投資額は1億ルーブル。

〔出所〕各社発表、現地政府発表および報道などから作成

対日関係

対ロシア貿易は低水準で継続、エネルギー輸入は残存

日本の財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算すると、2025年の日本の対ロシア輸出額は前年比13.5%増の24億5,900万ドル、輸入額は3.4%減の55億2,500万ドルだった。輸出は4年ぶりの増加となった。

輸出では、主要品目である乗用車は前年比3.8%増だった。台数ベースで見ると6.3%減の18万6,585台で、全てが中古乗用車だった。新車はロシアのウクライナ侵攻以降、自動車各社がロシア向け出荷を停止している。自動車の部分品は6,200万ドル(6.9%減)だった。食料品は5.6倍となった。同品目に含まれるたばこの輸出が約10倍になったことが影響した。原料別製品のうち鉄鋼が大きく増加した。鋼管の輸出がこれに寄与した。輸送用機器以外の機械類の輸出は低調が続いた。建設用・鉱山用機械は2025年に輸出がなかった。

輸入では、主要品目であるLNGが前年比8.4%減の33億4,200万ドルだった。数量ベースでは2.0%増の580万トンだった。原油および粗油は2024年には輸入がなかったが、2025年6~7月に3,500万ドル、9万5,000キロリットルが輸入された。ブルームバーグによると、サハリン2でLNGの副産物として出た原油が輸入された。

日本の財務省の国際収支統計をドル換算すると、2025年の日本の対ロシア直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比37.1%増の4億7,600万ドルだった。3年ぶりの増加となった。

業種別に見ると、非製造業全体で37.8%増の4億5,700万ドルとなった。金融・保険業が17.8%増の2億900万ドル、卸売・小売業は1.8%増の1億6,800万ドルとなった。製造業全体では16.0%増の1,800万ドルだったが、輸送機械器具は600万ドルの引き揚げとなった。

2025年末の対ロシア直接投資残高は47億8,800万ドル(前年末比15.6%増)となった。業種別では、主に非製造業が増加し、42億4,500万ドル(14.4%増)だった。卸売・小売業24億1,200万ドル(43.0%増)、金融・保険業13億900万ドル(56.8%増)が全体を押し上げた。製造業は5億4,000万ドル(26.0%増)となったが、輸送機械器具は1億3,000万ドル(4.1%減)と減少した。直接投資残高の内訳をみると、株主資本、収益の再投資、負債性資本の全てが増加した。株式資本は、現地企業の株式取得やその他の資本拠出金のほか、為替変動や評価替えの影響も含まれるとみられる。収益の再投資は、ロシア国外への送金が困難なため、ロシア現地子会社が利益を本国に送金せず、内部留保したものとみられる。親会社から現地子会社への融資などを含む負債性資本も増加した。

進出日系企業の現状維持姿勢が鮮明に

日本の主な対ロシア経済制裁を見ると、2025年1月にロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止対象を拡大し、特殊車両などのエンジンおよび部品、小型二輪自動車、工具などを追加した。また、制裁迂回を防ぐため、1月および9月に第三国の特定団体への輸出禁止措置を強化した。輸入関連では、3月にロシアに対する関税上の最恵国待遇の撤回措置を1年間延長した。9月に主要国・地域と協調してロシア産原油の上限価格を1バレル当たり60ドルから47.6ドルへ引き下げた。

二国間関係の悪化を背景に、ロシア政府は1月、同国内で人材育成やビジネス交流を担ってきた日本センターに関する日ロ両政府間の覚書の適用を終了することを決定した。日本政府は8月、日本センター事業を終了し、ロシア国内6カ所の日本センターを閉鎖することを決めた。

日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日ロシア人の数は前年比96.3%増の19万4,900人となった。訪日ロシア人観光客が急増している状況を受け、在ロシア日本大使館は2026年2月に日本査証申請センターを開設した。

ロシア進出日系企業の動きを見ると、2025年は残存企業の多くが「現状維持」や「様子見」の傾向を鮮明にしている。ジェトロが2025年9月に実施した「海外進出日系企業実態調査(ロシア編)」によると、2025年の営業利益見込みは「赤字」が4年連続最大で、回答した企業の比率は50.0%となった。背景には、「事業停止状態にあること」や「対ロ制裁や規制により製品の輸入・販売ができないこと」を挙げる企業が多い。「黒字」を見込む企業は24.0%にとどまり、2013年の調査開始以降、過去最低となった。前年と比較した2025年の営業利益見込みの変化については、「横ばい」が54.0%で最多となった。今後1~2年の事業展開については、「現状維持」が76.0%で最大となった。「縮小」と「第三国(地域)への移転・撤退」の合計は18.0%と、2024年度調査(37.9%)からほぼ半減した。現在の状況についても、「すぐに撤退する計画はないが、情勢を様子見している」とする企業が51.0%と半分以上を占めた。ロシアで事業を展開する上での課題としては、対ロシア制裁や輸出規制により製品の輸入・販売が困難なことに加え、コスト競争力があり、意思決定が早い中国企業や地場企業の存在感が高まっている点などが挙がった(ジェトロ調査レポート「2025年度海外進出日系企業実態調査(ロシア編)」参照)。

表8-1 日本の対ロシア主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
輸送用機器 1,501 1,543 62.8 2.8
自動車 1,397 1,450 59.0 3.8
乗用車 1,397 1,450 59.0 3.8
自動車の部分品 67 62 2.5 △ 6.9
二輪自動車 38 30 1.2 △ 20.6
食料品 50 280 11.4 456.7
化学製品 133 141 5.7 5.8
医薬品 70 76 3.1 8.5
原料別製品 69 88 3.6 28.9
ゴム製品 24 33 1.4 37.5
金属製品 20 18 0.7 △ 7.9
鉄鋼 0 18 0.7 31,061.0
織物用糸・繊維製品 18 17 0.7 △ 6.4
一般機械 52 78 3.2 50.4
原動機 29 56 2.3 91.4
電気機器 41 44 1.8 8.0
合計(その他含む) 2,167 2,459 100.0 13.5

〔出所〕財務省「貿易統計」から作成

表8-2 日本の対ロシア主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 3,850 3,540 64.1 △ 8.1
液化天然ガス(LNG) 3,649 3,342 60.5 △ 8.4
石炭 200 162 2.9 △ 19.0
原油および粗油 35 0.6 全増
食料品 880 974 17.6 10.6
魚介類 864 958 17.3 10.8
穀物類 8 6 0.1 △ 23.4
原料別製品 662 707 12.8 6.7
非鉄金属 584 678 12.3 16.0
木製品等(除家具) 19 18 0.3 △ 4.8
鉄鋼 55 8 0.2 △ 84.9
原料品 221 240 4.3 8.7
木材 204 221 4.0 8.3
化学製品 78 47 0.8 △ 40.3
有機化合物 55 22 0.4 △ 60.8
電気機器 9 7 0.1 △ 18.3
合計(その他含む) 5,720 5,525 100.0 △ 3.4

〔出所〕財務省「貿易統計」から作成

基礎的経済指標

〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 4.1 4.9 1.0
1人当たりGDP (米ドル) 13,990 15,094 17,972
消費者物価上昇率 (%、前年12月比) 7.4 9.5 5.6
失業率 (%) 3.2 2.5 2.2
貿易収支 (100万米ドル) 121,662 132,086 113,170
経常収支 (100万米ドル) 49,397 63,258 38,805
外貨準備高(グロス) (100万米ドル、期末値、金除く) 442,734 413,361 428,317
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 318,289 289,886 306,767
為替レート (1米ドルにつき、ルーブル、期中平均) 84.66 92.44 83.42

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ロシア連邦国家統計局
1人当たりGDP:IMF
貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高、為替レート:ロシア中央銀行